性懲りも無く、また恋をしている。
自分勝手で残酷で、それはそれは優しいひと。
彼の居場所に、息が抜ける場所になりたくて、俺はいつからか良い子の顔を貼り付けた。
こんな俺をあの人は、愛しくて可哀想だと抱きしめる。
知ってるよ。
本当はその薬指に別の人との約束があるんだって。
もうこれ以上、好きになりたくないのに。
沢山の偶然を、運命だなんて勘違いする。
なんだよ。もう。
カッコ良くって、ズルすぎる。
絶対に面と向かってなんか言ってやらないけど、本当に本当に、くそカッコイイ。
あまい雰囲気なんか絶対にありえないけど、今日くらい、俺だってロマンチックに憧れるんだよ。
す、
喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
ふわふわのクリームにイチゴを落とす。
ああもう、甘やかされてる。
赤いカップの中のホットチョコレートが湯気を立ててる。
ぼんやり見てたら菜々子さんがマシュマロ、浮かべてくれた。
甘そう、一言漏らすと笑う。
たまには甘えてもいいんですよ。
そう言って綺麗なミント色のコートを羽織った。寒いのに楽しそう、デートかな。
両手でカップを包んで持ち上げる。
甘い、甘い誘惑。
とろり、溶ける。
じわり、ゆらり。
あまい、魔法。
甘え方なんて知らない。
だけど。
俺の周りは優しいひとばかりだって、知ってるよ。
勘弁してよ。
寒くて寒くて、凍えそう。
まだ11月でしょ、冬はこれからだっていうのに。
あの人の上着羽織って丸まる。
あ、無断じゃないからね、ちゃんと本人の許可取ってもぎ取っ…借りたから。
あったかくて安心する。ただそれだけ。
ヘッドフォンで耳を塞いで、雨音が届かないようにして目を閉じる。優しい曲と、悲しい詞。
そろそろ冬を温める方法を、探そう。
朝起きるとまだ暗いから二度寝して遅刻ギリギリ生活実施中。
まぁ空気がパリッとしてて、澄んでる感じは嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど、寒いのは得意じゃない。
マフラーぐるぐる巻きの姿に、雪だるまみたいでモテねぇぞ、親父のムカつく笑い声。別にモテなくていいし。ノロノロ靴紐結び直して玄関のドアノブ触って静電気。さいあく。
そして閃く。
……薄着のほうが、もしかしてくっつく口実になるんじゃない?
ぐるぐるマフラー外して、出発。
今日の俺のシタゴコロ。
成功したかは、また今度。羊クッションの芥川さんへ。
コールありがと。俺も読ませてもらってたから驚いた。寝転がって星空、いいッスね。俺も死なない程度に真似させてもらいます。
もうイルミネーション。
あー、もうそんな季節なんだって見上げたクリスマスツリー。
キラキラ、眩しすぎて少し苦手だったけど、それもいいんじゃないって思えるくらいにはなった。
寝れば朝が来て、何かが始まる。
恋愛中心で生きていけないのは寂しいけど当然のこと。忙しく、ひたすら走ってた。
ふと立ち止まった時に、振り返った道に落としてきた煌めきたち。なにか得るためにたくさん捨ててきたそれはもうずっと遠いところ。
足元の、欠片を一つ持って帰ろう。
ねぇ、かみさま。
いい子にするからさ。
今年の誕生日はひとつ、願ってもいいかな。
むかしむかし、もうほんとにむかし。
大好きなひとがいました。
夢中で追いかけて振り向かせて、倍に返ってきた愛に驚いて、受け入れて、それはもう幸せなはずだったんだ。
その押し寄せる愛情に溺れて、深く深く沈んで、うまく息が出来なくて、ああもうダメになるなと思ったときに引っ張り上げられた。あんなに恋したひととは別の、まるで太陽みたいなひとに。
その背中に押し付けた額から感じた体温。
ふかく、息をした。
ようやく息が、できたんだ。
構ってもらいたくて、気を引きたくて、言葉を搔き集める。
それなのに、いざ振り向かれると用意してたもの全部吹っ飛ぶから笑えない。
あーあ、いい天気。
ルール、そのいち。
俺たちの間に恋愛感情があってはいけない。
一番近くを許されてるのに、絶対的な線を引かれてる。
その背中は俺のだって笑うけど。知ってるよ、その腕は別の人のものなんだって。
月がキレイですねって言ったら察しちゃうかな。
Trick or Treat !
イタズラ、失敗。