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東方逃現郷
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「お昼まで、人里の中で自由行動ね…。と言っても、あまり遠くにも、人里の中心部にも行きたい気分じゃないのよね…」 二人と別れ、グループという単位から解き放たれた実感を感じつつ、ライゼスは一杯に背筋を伸ばした。 あの場の流れのまま、それぞれ別の方向へと解散したが、やはり放浪者の身分では行く当ても無く。有り体に言って、途方に暮れていた。 これなら幻月かアイリスか、どちらかを誘って行けば良かったかと思いつつ、結局は意欲が湧かないまま、 小岩を並べて置いたような歩道を仕切る縁石に深く腰を下ろした。 「………」 粗雑に並べて置かれた程度の縁石で歩道を隔て、本道もまだ完全に整備されていないような砂利道である。 ライゼス自身が元の世界の過去で、何をしていたかという記憶はまだ一切戻らないものの、 この幻想郷という場所の文明は、どこか懐かしさを匂わせる趣深さがあり、それでいて美しさが際立つ飾られた部分以外は素朴なものであり… しかし、現代人の身ではなんとなく退屈を感じてしまうような街並みでもあり。その感性から来る寂しさを感じていた。 「こういう田舎の子供達って、一体何して遊んでるのかしら…」 ここはまだ寺小屋から離れていない、塀で囲まれた敷地の裏側。裏庭の方を覗くと、子供達がボール遊びに夢中になっていた。 あの手のゴム製品がどこから流れてきたものかは定かでないものの、少なからず幻想郷の中でも流通しているようだった。 つまり、このような辺鄙なところにも、製造技術を持っている業者の何者かが居るらしい。そう思うと人里の外の世界に多少は興味が湧いた。 「……ん?」 ふと横を見ると、遠くの角でうずくまっていた何かが、人目を気にするようにして寺子屋の塀に空いた穴へ体を潜り込ませていた。 ついさっき、その謎の影が居た場所には、小さな地蔵様が雨風避けの囲いの中に祀られていた。 近寄って見てみると、地蔵様の正面に置かれた小皿に、食べかすのような粉だけが残っている。何かお供え物があったらしいが、それが消失している理由はすぐに思い付く。 ライゼスも後を追うようにして穴へと潜り込むと、寺子屋と倉庫の間の狭い隙間に出た。 陰に隠れて見えないが、先程の影の正体が向こうの粗大ゴミの後ろに隠れて、こちらに背を向けて屈んでいた。 寺子屋の子供達と同じくらいの小柄な背丈で、同じような生徒かと思いきや…人の身には持ち得ないはずの、ふわりとした何かの器官が小さな影の背中で揺れる。 そして、ライゼスはその存在の漂わす雰囲気に、妖力を感じ取ったのだった。 「あれって…」 つい数刻前、ライゼス達に襲い掛かったのと同じ、妖怪だ。それは間違いない。 しかし、さっきの鎌鼬とは明確に違うものを感じ取れる。あの存在には、危害を加える力が無い。 「あれなら、穏便に対処出来る…?」 あの時の鎌鼬のように、まるでハチを相手取って石を投げたのとは違う…鎌鼬と比べるならあれは昆虫のような、もっと人にとって親しめる存在のはず。 それでいて、自身の目の前でお供え物をくすねたという事実を、なんとなく看過出来なかった。ライゼス自身には、それが行動の理由のように感じた。 そして…何気なく気配を殺しつつ、ただ何をするでなく、そっと背後から近寄り、「右手で触れた」。 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……! 「な、何だ!? 寺子屋のすぐ傍じゃないか…!」 「うわぁ、妖怪だ! 妖怪が出たぞー!」
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