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東方逃現郷
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「待って下さい! 私が…私が証言します! 証拠も挙げます! それの他に、この子…妖狐は少なくとも隠れて暮らしているうちはもう暴走したりする事は考えにくい、 妖狐にあれだけの事をする危険性はもう無い、という事も証明出来ます!」 ライゼスが合流し、アイリスの前で両手を広げ、仁王立ちになって身を盾にした。 「なっ…! じょ、嬢ちゃん!? お前さんよ…さっき、あれだけ…。嬢ちゃんまで何を言い出すんだ?」 男が一番分かりやすく狼狽えるものの、その後ろの観衆も、衝撃を与えられて騒然としている。 ライゼスの隣で、慧音も最後の一節を口にしてしまうのは止めて、そのままあんぐりと口を塞げずにいる。 アイリスは、その声に顔を上げ、疲れたような表情に笑みを浮かばせた。彼女だけは、まだライゼスに希望を持っていてくれたようだ。 「ラ、ライゼス…無茶をするなと言ったろう、いいからお前は休んでいなさい、今口を挟まれると…」 「いいえ。私自身が証拠だと言った通りよ」 「えっ…?」 心配そうに肩に触れられた慧音の手に自身の手を添えて、振り返りつつライゼスが言った。 その目は、今まで状況が飲み込めず、右も左も分からずにまごついていた時の表情ではない。 何かあるはずの根拠を、慧音もまた気付き、認めるに至った。 「お前…。あれだけやられたのに、傷は無いのか?」 「えぇ、そうです。あれは幻術でした、妖狐の化けた怪物の姿も、触手による攻撃も、その全て。 妖力を伴っていたから、慧音先生も得体の知れない怪物へ妖狐が化けていた事も分かってたのでしょうけれど… 幻術でも痛いものは痛かったけれど、あんな暴走状態になってまで、妖狐は人間に危害を与えないように気を付けていたし… この子にとってはそれが精一杯で、直接的に人間を殺してしまうだけの力は無いのよ!」 「そ、そうか…! なぁ、妖狐よ、お前もそうなんだな…!? お前の口から教えてくれ…」 「……っ、だ、だって、ぼく…にんげんのめいわくになったら、いっぱいおしおきされちゃうから…。 なかよくしたいけど、それがダメなら、せめてめいわくに…ならないように、いつも…グスッ…」 慧音に話を振られ、喉奥から振り絞るようにして捻り出した声で、妖狐が口を開いた。 その偽りの無い言葉を聞いて、慧音はその境遇を憐れむように悲しそうに眉を寄せて見詰めながらも、 また人間と妖怪の共存を信じたこの子の気持ちを嬉しく思うように、その表情に笑顔を浮かべた。 野次馬の中にも、ライゼスが直訴した通りに五体満足で無事な様子を見て、 そして妖狐の言葉によって事態の真相を知り、動揺が広がっているようだった。 それは、妖狐の味方として慧音達に賛成を向けるような流れであり。 男は当初はライゼスに対して、率直に言って困惑しているような眼差しを向けていたものの、 急な空気の変化に置いて行かれたようにして、不愉快そうに歯軋りをする。
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