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東方逃現郷
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「そ、そうかも知れないが、それで終わりにしていい話じゃないだろうよ! いくら全てが幻術だったんだろうとも、あの得体の知れない怪物に変化した姿は見ただろう! あんなの、痛みが幻だろうとじゃれついて来るだけでタダじゃ済まねぇよ! その点に比べたらなぁ、妖狐の動機が知れたところで、同情を引けるようなもんじゃねぇ…そんな事は、………いや」 「そんな事は…どうでもいいと?」 「……そうは言ってねぇ! 言い掛かりなら良してくれ!」 やはり、この男、強かだ。なかなか感情論を破綻させるようなボロを出さない。 何故なら、周囲の味方の賛同を得られない事には、その場の勢いで妖狐を処分する流れまで持っていけないからだ。 ライゼスが弁護をして、妖狐に酌量の余地があり、場の空気が妖狐への同情へと傾いた為、ここで周囲を引かせてしまうような冷酷なイメージのある事は言えないのだろう。 さっきは許されても、今は絶対にダメなのだ。しかし、それがこの男の本音だ。ライゼスはそう感じた。 「確かにこの子の本質は、人間を食らう妖怪かも知れません。けど、今ここでこの子が反省を示している事が、 決してこの子の処遇と関係の無い事では無い……皆さんがこの子の事を、『私達にとってはどうでもいい事』とは思わないのでしたら、どうぞ聞いて下さい! 元々、暴走の原因を引き起こしたのも、私が後ろから右手で触れたからで…私が原因なんです!」 こんな軽はずみな事で、周囲を味方に付けられるはずがない…とライゼスは心の中で自嘲した。 それでも、ライゼス自身もまた反省を感じて、決して道を間違えていないと自分で言える行動を取りたいと思い、 そして、妖狐に代わって自分自身が罰を受ける事、それを本心から望んだために、 俯き加減に両手をギュッと固く握って力を籠め、恐怖を押し殺すようにして大声で自白をした。 「私の右手が一体どうして暴走を引き起こしたのかは、正直、分かりません! しかし、私に原因があります。きっと私が触れなければ、この子がみだりに妖力を暴走させてしまうような事はきっと起こらない。 私が触れさえしなけかったなら…こんな事、起こらなかったはずで…! ごめんなさい!」 そのまま最後まで言い切ると、ライゼスはその場に屈んで、地面が砂利であっても構わずに膝を付いて、 両手を前に三角に付いて、そのまま勢いを付けて観衆へと頭を向ける。 ……完全なる平伏を示す、土下座だった。 こういう行動に順じたいと素直に思う気持ちはあっても、結局はこういう事を計算の上でしている、 ライゼス自身は自分のそんなところにますます強い嫌悪を感じて、そして滑稽だと思った。 誠実さとは全くもってかけ離れた心情であっても、せめて、せめて今の言葉だけは、この場の皆に伝える事は出来るだろうか。
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