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東方逃現郷
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――さて、何がどうしてこうなったのか……。自問してみても、答えは出ない。 起きたことを振り返るのなら、「たまには館の外にでも散歩に行こうか」と妹を誘って館を出た――と思ったら、 其処は見知らぬ……でもなく、ある程度は見知った世界。 が、問題は自分の知るそれと些か異なるということと……。 傍らに、妹が居なかったという……否、此方は問題どころでなく大問題、超問題である。 実際、ちょっと見失っただけ――というには程遠いことも嫌でもわかる。 まるで身体中に重りをつけられ、鎖で絡め取られたかのごとき不快感。 ……妹が側に居ないという、心因性のそれを差し引いてなお巨大なそれに、わずかに眉を顰めながら――。 気怠さに合わせて、緩く翼を一打ちする。それだけでも、身体は重力をあっけなく振り切り、上空へと飛び上がっていき。 「……さて。空飛んだ程度で見つかる範囲に居るなら、困らないんだけど――、ん?」 呟きながら、ゆるりと周囲を見回せば……やや離れた位置にある深い藪が、何やらガサガサと蠢いた、ように感じる―― と、結論付けるよりも早くまた蠢くのが見えた。感覚からして妹ではない。 動く範囲と音からして、内訳は多分、三人。 「三人、三人か……。2対1なのか1対2なのかでだいぶ変わるなー……」 人里の外であることも合わせて推察するなら、おそらく野良妖怪に誰かが襲われている、ということ。 問題となるのが襲われている側が一人なのか、二人なのか。 襲う側が一人であるならどうにでもできるが、二人となるとちょっと骨が折れる。 妹が居れば――とも想うが、其処を愚痴っても始まらない……し。 「……ほっといたら捕食されるの時間の問題だもんね。それ判ってて見て見ぬふりは出来ないよねぇ――悪魔としては」 ……万人が首を横に振る理由で自分の行動を決定づければ、今度は力強く翼を一打ちして件の藪の方へと急行する。 一度動き出してしまえば、例え妹が側に居なくとも、幻想の悪魔と称される少女は、自分の行動を疑わなかった。 このお話は、一人の悪魔が帰るべき居場所に戻るだけの物語。
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