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andromeda.
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ゆっくりと呼吸をして、歩調を合わせた日を思い出す。走って走って息切れをして、それでもまだ走った私を見て、トオルは静かに笑った。仕方ねえなあ、そう言って笑った。歩き方なんてきっと、知らなくても良かったんだ。そんなものを知らなくても、歩ける方法があることを、私はその日初めて知った。隣を歩くトオルを眺める。そうして速度を合わせてみる。歩調を、同じにしてみる。トオルが歩けば私も歩いて、トオルが走れば私も走った。とても単純な答え。それを漸く掴んで、ちょっとだけ笑えた。 歩調が同じだったとして。その隣同士の距離は、どうだったっけ。きっと、直ぐ傍にいるようで、離れたところだった。それに気付かなかった。気付いた頃にはもう、私は走ってた。振り返った先で、トオルが笑う。ほんの少し寂しそうに、仕方ねえなあ、って。それで、それから。私はトオルを置いて、此処にいる。
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