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スレ一覧
┗毒入りりんご

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1 :加_州_清_光(刀_剣_乱_舞)
2010/08/23(月) 22:54

毒に浸したリンゴなんかよりよーっぽど効く毒を知ってるよ。
教えてあげるから、こっちに来て。

#*取説*
>>19 

#*物語(悪戯書き)まとめ*
百合ばっか。
>>20

#踏み切りを渡ってまっすぐ

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280 :大_和_守_安_定(刀剣_乱舞)
2018/09/16(日) 21:21

あーあ、下の頁を無駄にしちゃった。久しぶり過ぎてだめだ。
結構前に僕には彼女、もとい…彼氏?が出来て、その子の事を僕は凄く大事に思っていて…結構ぞっこんで、その子の為に何でもしてあげたいなんて思ってた。
でも最近その子の紅くて綺麗な瞳には涙が浮かんでて疲れ切ってる。きっと限界ギリギリのところで踏ん張って頑張ってるんだろう。
……守ってあげたい。世界一可愛い、僕の相棒。

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279 :大_和_守_安_定(刀剣_乱舞)
2018/09/16(日) 20:54

のちへん。

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278 :風見幽香(東方project)
2018/01/09(火) 00:19

美しく花が綻ぶように笑う私の、私だけのアリス、私だけの愛しいアリス。
大事にするわ。長く恋焦がれた貴女がようやく私のものになったんだもの。
私だけを見て欲しい。

そうね、沢山懺悔した分だけ貴女に愛情を注ぐから…私を受け入れて頂戴?
愛しい、大事なアリス。


-----------------

アリスに無茶を働いてしまうのは本当に癖なのかしらね…アリスは全部受け入れてくれるから、本当に本当に可愛くて抱き潰しそう。
あの子の首筋が噛み跡だらけなのは私しか知らない。ずっとそれで良い。
私の大事なアリス。

私のものになってくれてありがとう。

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277 :風見幽香(東方project)
2018/01/09(火) 00:06

私は私のアリスを見付けた。

もう逃がさない、離さない、私だけの愛しいアリス。

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276 :大_倶_利_伽_羅(刀_剣_乱_舞)
2015/07/04(土) 09:41

そうか。確保する。

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275 :燭_台_切_光_忠(刀_剣_乱_舞)
2015/07/04(土) 09:40

かっこよく一枚貰いたいよね。

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274 :加_州_清_光(刀_剣_乱_舞)
2015/07/04(土) 09:38

ごはんとお味噌汁って美味いよなー…。確保。

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273 :風見幽香(東方project)
2015/07/04(土) 09:36

へぇ、あらあら、そうなの。
知らなかったわ。

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272 :大_和_守_安_定(刀_剣_乱_舞)
2015/07/04(土) 09:35

5枚もあれば用紙は事足りるかな。
最近は言葉も覚束無くて、刃生を授かったばかりの頃に戻ったみたいだ。
未熟だと思う。精神も、身体も。

沖_田くん、僕も早く君の傍に行きたいよ。
見送ってばかりはもう嫌なんだ。

------------------------

雨の音が外に響く。
ざあざあと煩くて耳を塞いだ。雨に濡れても錆び付いたりしない肉体を持て余して、このふわふわとした精神は居場所を探しているみたいだ。
お前は、もう戻ってこない。
だったらあの時に全部終わらせてしまえたら良かった。

苦しいよ、沖_田くん。

早く迎えに来て。

-------------------------

どうして彼奴は戻ってこないんだろう。
どうして僕は振るわれなくなったのだろう。
答えなんて出やしない。
ただ、そうなった。それだけだ。
彼奴はもう帰ってこない。
僕はもう振るわれない。
それだけのこと。

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19 :アリス・マーガトロイド(東方project)
2010/08/28(土) 20:16

#この本の取り扱い説明書のようなもの。

*取り扱い:最近の悩ましい話題。百合薔薇注意かも。


*乱入・交流:可。別に噛み付いたりしないわ。嬉しいもの。

*使用伽羅:東方project、刀/剣/乱/舞、その他気分次第。

*傾向:3L対応。此処では百合がメインだけど、ナリではそうでも無いってパターン。

*概要:しつこいくらいにどろどろした毒を食べる本。基本後ろ向き、懺悔、時々前向き。人間は読んだら顔をしかめるんじゃないかしら?

20 :レティ・ホワイトロック(東方project)
2010/08/28(土) 20:16

徒然なるままに綴った、お伽噺の羅列。

>>26,25,24,23,22 >>21
# 「蝕み」
幽香とアリス。

>>51,50,49,48,47 
#「欠片」
とある彼女と、彼のお話。

>>71,70
#「手紙」
メイドと門番。壊れた愛はどちらか。

>>106,105
#ピクニック
妹紅とミスティア。みすちーの恋は果たして報われるのか!?

>>109
#嫉妬、羨望、はたまた別の何か。(ちょいグロ、不健全注意)
偏愛気味二面ボスの葛藤的な何か。


>>225,224
#無題
幽香とエリー。

21 :風見幽香(東方)
2010/08/28(土) 20:18

5,

『風見幽香様  この手紙が貴女に届き、貴方の目に触れていると云うことは貴女がまだ完全に私を忘れるに至っていないのでしょう。この手紙にはそういう類の魔法を掛けました。そしてその事実は私にとって救いになります。だからどうかこの手紙を読むのを止めないで下さい。幽香、貴女が私の前から消えてしまった時、私の心を占めていたものは何か分かりますか。それは醜い嫉妬や、憎悪や、猜疑心です。貴女が私の事を最初から好いてなんていなくて、貴方の紡ぐ言葉は全て嘘だったのだと思いました。帰らない貴女を玄関で待つのは辛く、扉がいつ叩かれても良いように、扉の前で寝てしまったりもした。全て嘘だったんだ、なんて憎たらしいの、そう思わなければ私はとても生きてゆける心地がしなかったのです。永遠の生を持っている癖に、と笑われるかもしれませんが、本当に、それくらい辛かったのです。その事はどうか分かって下さい。けれど私は貴女と離れてから、分かった事があります。貴女はいつも優しかった。確かに私を愛してくれていた。玄関で貴女の帰りを待っていると、馬鹿ね、と言って困ったように笑って、髪を撫でてくれた。上海に悪戯する貴女を咎めたら、“だって、この子はずっとアリスと一緒に居るんだもの。今くらい、二人きりにしてくれたって良いじゃない”と、端正な顔をまるで子供のように赤らめて拗ねて、可愛いかった。ずっと一人で生きていた私は貴女に救われていた。けれど、貴女にとってはどうだったのでしょうか。貴女は無意識のうちに貴女に依存してしまう私が負担だったのかもしれない。その事に思い到ったとき、私は貴女に対して憎悪やその一切の感情を抱く事が、とても恥ずかしくなりました。こんな私から貴女が離れてしまうのも当然だと思いました。ごめんなさい。私は貴女を何も理解していなかった。どうして貴女を憎んでしまう者のところに、貴女が留まりたいと思うのでしょう。貴女を憎んだりした時点で、きっと、全ては決まったのだと思います。たぶん、おそらく、もう貴女は帰って来ないかもしれませんし、ずっと会えないかもしれません。けれどせめて謝罪の言葉を伝えたくて、この手紙を書いたのです。愛していました、幽香。本当は、今も扉が叩かれるのを、ゆっくりと開くのを、待っているの。けれど、それもいつか忘れられる日は来ると思います。今は辛いけれど、きっと大丈夫。だから心配しないで。それでは、貴女の幸せを祈っています。どうか幸せに。 アリス』

(手紙には、ところどころ涙の痕が、見受けられた)

アリスからの手紙を読み終えた時、涙が止まらなかった。手紙を抱き締めて、すぐに彼女に会いに行こうとした。けれど、私を忘れる努力をしているに違いない彼女の元を訪ねる勇気が、私には無かった。アリス、ごめんなさい。ごめん、ごめんね。私は貴女の事をこんなに傷付けていた。その事実からすら逃げようとして。ごめんなさい、ごめんなさい。ああ、アリス。まだ私、貴女を愛しているの。けれど伝えてはならないのだ。彼女の心を守らなければ。彼女の中の私を忘れさせなければ。

>それから幾日か経った後、私もありったけの妖力を込めて、手紙をしたためた。届くかどうか分からない。けれど、書かずにいられなかった。彼女が私を忘れていなければ彼女の元に手紙が届き、読み終えたら、彼女が私との思い出を忘れる呪い。

呪いを込めた手紙を飛ばすのは辛かった。苦しかった。けれど、彼女を苦しめるのはもう嫌だった。

封をして、窓を開けて、手紙を飛ばす刹那、呟いた。

「_してる、アリス」と。

22 :風見幽香(東方)
2010/08/28(土) 20:19

4,

私が愛していたのは結局自分自身だった。愚かな妖怪は生身の魔法使いを愛したつもりになっていたけれど、思い通りにならないと呆気なく軋み出して、壊れてしまった。私は人形に執着する醜い幼児でしかなかった。そして、自己保身の為には彼女から離れるしかなかった。彼女の傍に居ると彼女を疑うあまりに、彼女に暴言を吐きかねない。そんな理由で嫌われるのはイヤだった。とても幼稚な自己保身。そして彼女には何も伝えずに、彼女の前から消えるようにして出ていった。それから彼女を取り巻く一切と交わるのを止めた。共通の友人伝いに私の情報が彼女に行くのは堪えられず、それも遮断するためにずっとずっと遠くに行った。彼女は私を愛さない。彼女は私を愛さない。可哀想な私。そう言い聞かせていた。けれど彼女への想いは日に日に強くなった。燻り続けた。どんなに忘れようとしても、どんなに離れようとしても、彼女の姿ばかりが脳裏に浮かぶ。それは、彼女から離れる以上に堪え難かった。けれど弱い自分が彼女と向き合うのは、そう、あまりにも、畏れ多かった。あんなに、あんなに愛していたのに。

そんな折、私の元に一通の手紙が届いた。
差出人は、………アリス・マーガトロイド。

23 :風見幽香(東方)
2010/08/28(土) 20:20

3,

崩れる音は煩かった。それを示す様にして日に日に彼女の甘やかな唇から紡がれる言葉にノイズが混じり始めた。『幽香、私貴女が私との約束を守れなかったこと、全然怒ってないの。気にしていないの。ごめんね、だから幽香も気にする事無いわ。愛してる。心配しないで。』アリス、アリス。ねえ、それは本心では無いのでしょう?どうして怒らないの?私は責められて然るべきでしょう?貴女に会えない事に耐えられない私を、貴女に依存して、貴女との約束さえ破るような私を、どうして貴女は責めないの?『だって、幽香は悪くないもの。』ああ、アリス。貴女はなんて優しいの。優しくて、優しくて、私のお人形さんは私の思い通りに動いてくれなきゃ嫌なのに。貴女の優しさだけは、予想外でも、心地が良いの。『愛してるわ、幽香。』私もよ、アリス。私だけのお人形さん。私だけ、私だけのもの!

>からんからん。

しかし、やはり実体としてはそうではなかった。ノイズは一向に消えないし、酷くなるばかりだった。幼稚な私にも段々と解り始めていたのだ。彼女は私の物にはならないのだと云う事。それも、逆立ちしようと、泣き叫ぼうと、決して叶わないのだと云う事。そしてそれは、彼女が拒んでいるのではなく、私自身が心の奥で感じ取っているのだ。それとはつまり猜疑心で、彼女を取り巻く全てが信じられず、彼女の言葉は私自身の脳内で否定されるようになってしまっていた。彼女の言葉を疑って、脳内で否定して、それでもアリスの前で笑顔を取り繕う際にぽろぽろと崩れて行くのだ。転がり落ちて、錆びて、鉛になって、私は動けなくなる。

>からん、からん。

#どうしてだろう。こんなにも愛しているのに彼女を信じられないなんて、私はどうかしている。けれどアリスは魔理沙と仲良く話してた。霊夢とも。人形だって作ってあげてた。私には一度も作ってくれなかったじゃない、どうしてそんな事するのよ、どうせ貴女の言葉も嘘なんでしょう、魔理沙に会うから私に会いに来ないんでしょう。信じられない。私のお人形ならお人形らしく私にだけ笑っていれば良いのに。許さない。アリスなんて、アリスなんて、嘘つきだ。私を愛してなんか、いないんだ。アリス、私はこんなにも貴女を愛しているのにどうして貴女は愛してくれないのよ。魔理沙殺す魔理沙殺すアリス愛してる霊夢憎い全て全て憎い私のアリス私の私だけのああああああ。

>からん、からんからん。

完全に心が崩れて、私の中に貯まった鉛は毒素をばら蒔いた。もう決して修復出来なかった。私はアリスを信じられなくなっていた。愛している人を信じられずに、それでも彼女の為に愛を囁き笑う日々が続いた。私は彼女を置いて逃げた。そうせざるを得なかった。

24 :風見幽香(東方)
2010/08/28(土) 20:20

2,

唖然としながらも動き出した時計の針は止まらない。勿論過去に時間を紡ぎ直してくれることも為されない。私が恋に落ちたその日に、彼女もまた同じ気持ちで居てくれたらしい。彼女とは何度かの逢瀬を重ね、唇を重ね、身体すら重ねた。けれど手繰り寄せれば手繰り寄せる程に、糸に締め付けられて動けなくなった。彼女を知れば知る程に、私の身体にひとつずつ鉛玉が埋められていくみたいに、苦しさが増した。勿論素晴らしい事だって沢山あるのだ。アリスは私に綺麗な指先で至極優しく触れてくれるし、或る時は荒々しく彼女には些かそぐわないような形で、私を求めて来たりした。私にはそれが嬉しかった。ずっと憧れていた青い瞳の金髪の可愛い可愛いお人形さんを手に入れて有頂天になっていた。しかし、彼女は明らかに自律した一個体で、物言わぬ人形では無い。幼稚な私はそれに気付いていなかった。

>からんからん。

何かが剥がれ落ちて音を立てて少しずつ壊れて行く音がした。剥がす力は何によってもたらされているのかを、私は知る由も無かった。ただただ目の前のお人形さんに夢中になる幼児が、其処に居た。それは私であって、私では無いのだ。

>からんからん。

25 :風見幽香(東方)
2010/08/28(土) 20:22

1,

書きたい事は山程有る。まるで私を掻き立てる何かが私の細胞の隅々に行き渡って、妖怪の性を侵食しているみたいに、たくさんの事を綴らなければならないと云う使命感に襲われている。比喩が過ぎるかもしれないが、事実、そういう気持ちで書いている。誰かへの誹謗中傷等ではない、勿論自傷行為でもない。私の、あの子への歪んだ気持ちが私に行動を起こさせているのだ。あの子。…アリス・マーガトロイド。私の向日葵畑を照らす眩しい太陽であり、夜の森を優しく包む月のような存在。花が綻ぶように笑み、たまに、もの凄く憎たらしくもなる可愛さの余る人。私は、彼女に“恋”をした。魔法使いと、彼女に恋をした花畑を彷徨く妖怪が、交ざり合って一つに為る事は可能なのか、という実験を試みた。その結果私の中の衝動を掻き立てる程に、彼女は、彼女は、魅力的で。私みたいな妖怪が交わって良い存在では無かったのだと唖然とした。

26 :風見幽香(東方)
2010/08/28(土) 20:24

0,  蝕  み

私ほどに哀しい妖怪は居ないと思う。だって貴女は私を愛さない。それこそ永遠に交わらないのだ。貴女が人間なら、貴女を忘れることも出来よう。けれど貴女と私は同じくらい永くの時を過ごさなければならない。貴女は私を愛してくれますか。貴女は私を気に掛けてくれますか。くれませんか。返事を下さい。
>…ねえ、___。

永遠の命など要らない。貴女に愛されないのなら、私は貴女にこそ殺されたい。

47 :ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:36

4,

彼女にとっては、そう、ばらばらになってしまった今となっても、彼が彼女に愛してると告げた時の笑顔こそが紛れもない真実なのである。それを否定する事は誰にも出来ない。一体、真のさいわいとはなんなのだろうか。皆が手に入れ、彼のように微笑むものとはなんなのだろうか。自問自答を繰り返した結果、彼女は強くあろうと努めるようになる。前を向き、…そう、倒れたり、溺れることの無いように立ち続けるのだ。胸に空いた風穴は大きい。未だに彼女は彼に会いたいと思っているし、もし再会出来るのなら彼女は嬉しさに咽び泣くに違いない。それほど彼の存在は大きかった。けれど、十中八九それは叶わない。だって、きっと、彼は彼女を必要となんてしていないのだ。けれど何の問題も無い。会えたら、などと云う仮定は最早無意味なのである。

#わたしはたった今、私となった。理解した。わたしのさいわいを決めるのは、私なんだ。

本当の意味では彼女にも彼は必要ない。彼女は悟った。根刮ぎ己を切り裂くような痛みを持って漸く理解した。自身のさいわいを決めるのは、己でしかないのだと。しかし、彼と居る"過程"は必要なものであった。それだけは間違いない。彼女はさいわいのために生きている。自分のためでもあり、他の者のためでもある。それはまやかしのさいわいではない。真の、さいわいなのだ。


【いまの私にお話しできるのは残念ながら此処までなのです】

【強くなる奇跡を生んだのは彼女自身でした】

【ニンゲンは愚かで、けれど、時にとても強い】

【強くなる儀式は大変辛いものです】

【けれどそれを乗り越え、本当のさいわいに近付く】

【奇跡とはそういうものでは無いでしょうか】


奇跡の魔女の紡ぐ物語は、ここでおわりと相成りました。彼女自身が再び紡ぐ物語は永遠に伏せて、猫箱に入れる事としましょう。それでは、さようなら。

48 :ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:37

3,
変質を理解しながらも、彼女は彼への依存を止められない。彼の逐一の行動が気になり、彼の求める最善であろうとした。彼もそんな彼女に気付いていたのか(或いは気付いていなかったのかもしれないが)、彼女を手放す気配は無かった。それは彼女にとっての幸いに違いなかった。彼と居る時間は彼女にとって唯一の救いでもあったのかもしれない。救いであり、また、彼女自身を損なう儀式のようなものだった。しかし彼女の幸いは確かにそこに在ったので、損なわれていること等些細な問題でしかなかったのだ。

#かれをあいしてる。あいしてるあいしてる。だいすき。しあわせ。


けれど彼女の幸いはあっさりと崩れ去る。彼女を残して、彼は呆気なく消えてしまったのだ。彼女にとっての彼と、彼にとっての彼女は違っていた。必要となんかされていなかったのだ。彼女は泣いた。全てを漸く理解した。けれど損なわれた自身は、戻る事は無い。泣いて泣いて、変質した自身を傷付けようとした。しかし傷は付きすぎていた。それ以上傷付きたくないと言う防衛本能が働き、彼女には風穴が空いたまま、再び平穏が訪れた。
日々の中でみんなが彼女をおいてゆく。真の幸いを手に入れて、微笑んでいるのだ。その顔は彼が彼女に愛を告げた時の笑顔に相違無かった。

49 :ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:38

2,

彼女がずぶずぶに溺れてゆく様はとてもみすぼらしかった。息も出来ずに、窒息してゆく彼女は傍目から見ても醜かったことだろう(しかし幸いにして、その様は誰にも露見しなかった)。それでも逆らうことは出来なかった。自力で這い上がるには、最早深いところまで沈み過ぎていた。
彼女は日に日に窶れた。彼にのめり込むあまりに、彼女は様々なものを手放した。

#こんなのはわたしじゃないのに。だめだ、かれを、あいしすぎてしまった。

彼女は身を焼かれるような痛みに襲われる。悲鳴を上げようとも声を出す喉も焼き切れていた。肺には水が貯まり、思考はぐずぐずに溶けていた。

#こんなのはわたしじゃない。わたしじゃない。わたしじゃ、ない。

彼女自身はいつしかばらばらに砕けていった。分かっているのに彼からは離れられなくなっていた。彼から離れてしまうことは、彼女のすべてを根刮ぎ奪い取る事に違いなかった。

>かわいいきみ。ずっといっしょにいよう。約束するよ、ずっといっしょにいてあげる。

彼が吐く甘い言葉は麻薬のようだった。刺が交じっていても、彼女は決してヒステリックに咎めたりはしなかった。ただただ黙って頷いた。彼女は幸せだった。自身の変質を理解しながらもそれを受け入れる一瞬が、彼女には何事にも替え難いほどに嬉しかった。

#わたしじゃないわたしは、こんなにしあわせ。

#わたしは、だれなんだろう。あなたがすきなわたしは、だれ?

50 :ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:39

1,

彼女は彼と出会う。出会いは唐突な物で、彼女には予想も付かなかった。彼はそつなく彼女との逢瀬を遂げると、彼女に名乗るように促す。彼女は泣きながら名前を告げる。彼女は生まれてこのかた自分の名前を心地好く人に告げた事は無かった。それも見ず知らずの存在であった人に名前を告げることは彼女の心を酷く掻き乱した。親に与えられた異国のような名前は生まれてこのかた一度も彼女に馴染んだ事はなかったのだ。
しかし幸か不幸か、彼もまた境遇の違いすぎるニンゲンであったので、彼女の名前を聞き屈託無く笑うと彼女の髪を撫でた。風のように、優雅に。殆どの女性はうっとりしてしまうに違いない端正な顔立ちに笑顔をたたえて。
それは水面を揺らす風に違いなかった。彼女の心には波紋が次々と広がる。それは次第に大きなうねりを伴い、彼女を飲み込んでゆく。

#彼に恋をしてはいけない。

彼は小娘をたぶらかそうとしているに違いないと彼女は考えた。しかし、紡がれる愛の言葉や、どろどろに交ざり合う一時を経ると、そんなことは頭の隅に追いやられて、どうでも良くなってしまう。彼の前での嵐の中の小舟の様だった。
いけない傾向だ、と彼女は思う。しかし気付けばとっくに波に飲まれ、彼に心奪われていた。落ち出した砂のように、流れ落ちる滝のように、止めようもない事実がそこには佇んでいた。

#わたしはどうなってしまうんだろう。きっと、しあわせにはなれない。いつまで、わたしは、このひとといられるんだろう。

どうしようもないうねりの中。波に押し流され、沈んでゆく。

>かわいいなまえだ、おじょうさん。いや、これからは名前でよぼう。

飲み込まれる。

51 :ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:51

0,  欠片

>彼女と彼との接点はどう贔屓目に見ても極端に少なかった。彼女と彼の出会いは彼女の室内。彼女と彼はあまりにも違う生き方をしており、また、その出会いも歪んだ欠片が擦れ合うようなものだった。しかし彼女は次第に彼に惹かれるのである。彼は彼女に己の素性を明かし、彼女は酷く驚き怯えさえする。
そもそも彼女は出会いなど求めては居なかった。ただただ自分が満たされていればそれで良かった。それを真っ向から覆したのは、紛れも無く彼なのである。ある意味では奇跡と呼ぶべき所業を為したと言えるだろう。あるいは単なる偶然の産物かもしれない。しかし引き上げるべき欠片として、残っているのは確か。


【物語を読みましょう】

【私が語ることに意味があるのか、分からないけれど】

【やはり残しておくべき物語なのだと思うから】

【私は事の顛末を淡々と紡ぐ事にします】

>彼女と、彼の物語。

70 :紅美鈴(東方project)
2010/12/20(月) 11:49

>Re:手紙

貴女は「私の愛は重い」等と言いますが、本当は違うのです。貴女のように清らかな愛の持ち主が居るでしょうか。いいえ、存在していません。私はずっと貴女を待っていた。貴女が私の前に現れてくれる事を。
(貴女が生まれる前から。)
貴女の愛の言葉なんて、いくらでも聞きたい。その為ならばいくらでも待ち続けられるんです。貴女は覚えていないでしょうが、前にも私にそんな風にナイフを投げたんですよ。そして、私の喉からは紅茶みたいに血が吹き出した。それを眺めて笑う貴女を綺麗だと思いました。貴女の愛を一身に受けられるなら私はどうなったって、構わないのです。けれど、どう足掻いても貴女はニンゲンで、私は妖怪だった。貴女の命は私のそれと比較して、遥かに短いものでした。貴女は己の愛を蔑みましたが、それは違います。私は貴女から多くのものを得て、貴女に固執した。私の愛こそ蔑まれて然るべきなのです。私はまた貴女に逢いたかった。だから、貴女を待ちました。待って待って、その命が再び廻るのを待ちました。するとまた貴女は私の前に現れてくれました。とても嬉しかった。しかし貴女はあの吸血鬼に心酔してらっしゃる。前は、そんな事は無かったのに。
私は嫉妬しました。たいそう醜い嫉妬でした。嫉妬に突き動かされるままに、何食わぬ顔で、門番として屋敷に勤めるようになりました。貴女は元来淋しがりなニンゲンだった。それを優しく包むようにして、貴女の心に取り入るのは容易かった。あっと言う間に、貴女は私に愛を向けてくれました。貴女のナイフが首元を狙う瞬間の恍惚と言ったらありません。貴女の愛は前と何も変わっていないことに私は深く安堵しました。
愛しています。貴女が生まれる前から、死んでからも、ずっとずっと愛しています。私以外を見る事なんて許されて無いんですよ、生まれる前から決まっている自明の事なのですから。

私の愛は貴女が消えても残るのです。貴女が、現れるまで。だから安心してナイフを突き立てて下さいね。
#貴女が思うよりずっと、私の愛は重い。

71 :十六夜咲夜(東方project)
2010/12/20(月) 11:54

>手紙

私の愛を真摯に受け止めてくださる方を探しています。私の愛は重くて、重くて、やっぱりどうしようもなく重いのです。重いのが好きな方はどうぞ私に朝から晩まで愛されて下さい。私のナイフを白刃取りして下さい。ええ、それくらいの愛ですもの。
そして、この愛を持て余したら関係をすぐに切って下さい。でなければ私はナイフをあなたの喉元に突き刺してしまうでしょう。私は酷い中毒なのです。愛し方が間違っていると言われればそれまでですが。

私は自分を一番愛している。私の愛に応えてくれない人は要らない。非情なニンゲンです。

今日、その事を理解しない妖怪が犠牲になりました。お嬢様程強ければ私のナイフも避けられるでしょうに、その術を持ち合わせていないのか、はたまた己から刺さりに行ったのか。定かではありませんが私のナイフは妖怪の喉を切り裂いたのです。私は妖怪の喉から紅い紅い血が噴き出すのかと目を凝らして見張っていました。しかし妖怪の喉元からは一滴の血も滴らないのです。どういう事なのでしょうか。そしてその妖怪はあろうことか微笑んで私に言うのです。ここでは有りませんよ、と。成る程妖怪の喉元には気が張られていました。それを降り頻る雪のように冷たく眺めていると、妖怪は続けます。

#"こんな事をされてもあなたが愛しい。"

ああ、言い忘れていましたがこの妖怪は心底馬鹿なのです。私がどうしようもないニンゲンだと云う事を残酷な証明を持って示したにも関わらずこんな事を言う。理解に、苦しみます。
けれど紅い紅い血の代わりに私の頬には幾筋も涙が伝い、止まらなくなりました。それはとてもあたたかい涙で、生きているニンゲンの涙に違いありませんでした。随分昔に無くしたと思っていたのに、堰を切ったように溢れて止まらないのです。

犠牲にしてしまって、ごめんなさい。どうしようもないニンゲンを愛してくれて、ありがとう。ありがとう。

犠牲になった妖怪は、私の頭を慌てて撫でていました。このやさしい妖怪を、やさしい愛で包めたら私はどんなに幸せだろうか。そう思わずにいられませんでした。

105 :ミスティア・ローレライ(東方project)
2011/08/15(月) 13:06

#→続き


「良いって、食べなよ。せっかく美味しいんだからさ。はい、あーん」

こ、これってぇえ…!あこ、憧れの恋人同士がやる例のアレですか!今この瞬間私超リア充じゃないっすかぁぁあ!モコウさんは満面の笑みで蒲焼きを差し出して来る。ここまでされて断る鳥がいたら焼き鳥になるだろう。
私は生唾を飲み込み、心臓をどぎまぎさせながら覚悟を決めた。口を開く。

「あ、あーん…。」

蒲焼きが私の口に放り込まれそうになった、生きてて良かったありがとうみんな。そう思ったその時だった。

青い空にキラリと光る氷の羽根。みるみるうちにこちらに急接近し低空飛行。一瞬の閃光の後に、モコウさんが箸で摘まんでいた蒲焼きが目の前から消え去った。
何が怒ったのか分からず目を白黒させていると、私とモコウさんの目の前に仁王立ちした氷の妖精、またの名をまるきゅーがどどーんと居座っていた。

「あっははは!もーらいっ!美味しかったよみすちー!」

そう言ってぶいっとピースサインをしてそいつは青空に消えて行った。

「………。」

「…………。」

「……最後の一個なのに、アイツに持ってかれちゃったね」

「…はい…」

やり場の無い怒りと悲しみ。クソッ、モコウさんのあーんが!モコウさんの、モコウさんのあーんッ!がッ!まじでアイツ次に会ったらどうしてくれよう。私の歌を朝から晩まで聞かせて、夜盲症にしてくれるわ!
そんな物騒なことを考えながら拳を握りぶるぶる体を震わせた。そんな私を見兼ねたのか、モコウさんが私に恐る恐る声をかけた。


「……あのさ、みすちー」

「…はい、なんでしょうモコウさん」

「アイツに取られちゃったから、また鰻焼いてくれる?」

「…え、それって」

「また来よう、ピクニック。おにぎりと鰻食べにさ。次は私も何か作るよ」

モコウさんがあっけらかんと笑った。私はすっかり毒気を抜かれてふにゃふにゃになった。
そ、それって二回目のデートですか、モコウさん。私物凄い勢いで期待しちゃいますよ。

「次はみんなで来よう。チルノにもみすちーの美味しい鰻食わせてやろうか、横取りなんてみっともないからね。あとけーねと、永遠亭のウサギたちとかも」

……あ、あぁ、そういう事ですか。少しがっくり。でも次に会える約束を持てて私はやっぱり頬がゆるゆるになった。うんうんと頷くと飛び切りの笑顔でモコウさんが両手を握った。

「ありがとう、みすちー」

ミスティア・ローレライ、やっぱり生きてて良かったです!(二回目)
…前途は多難っぽいですけどね、トホホ。その後向日葵妖怪に一時間300円の花畑使用料を取られたのはまた別のお話。ちゃっかりしてやがるんだぜアイツ。

106 :ミスティア・ローレライ(東方project)
2011/08/15(月) 14:10

>『ピクニック』

手入れされた長い白髪におっきな髪飾り、高貴な生まれとおぼしき表情をたまーに浮かべて私の羽根を笑いながら毟る人間はこの世に一人しか居ない。フジワラノモコウさん、と言うお方。この人に私はそれはもう惚れ込んでしまっている。
種族が違うとか同性とかそんなんは関係無かった。私は妖怪で彼女は人間だけど、彼女の腕っぷしはかなり良いし妖力だって半端ないし、やっぱり生まれも高貴らしかった。そんな人がどうして今竹林でホームレスをしているんだろうか、と一昼夜掛けて考えたが、彼女にも色々あるんだろうという結論に至った。彼女の生まれも、今の生活も、彼女のものなら愛すのみだ。
何故なら私にはライバルがすごく多いから。
そのライバルカーストの中でもきっと最下層に私は居た。彼女のハートを射止めたいくせに、私はへなへなでよわっちくて、彼女を守るなんて到底無理だった。
…と言うわけで私は彼女をどう落とそうか必死に考えて、鳥頭を捻った結果、『胃袋を掴もう!私は料理で頑張る!そして頑張る!』というなんとも頭の足りないような答えを導いた。曲がりなりにも、料理だけは自信があったからだ。


「……で、こうしてピクニックに誘った訳ね。」

「…へへ、実はそうなんです」

目の前でおにぎりを頬張りながら妹紅さんが言った。私の気持ちはバレバレらしかった。ミミズが張ったような字で書かれたラブレターに文句も言わずオッケーサインを出してくれた。そしてピクニックと称して、森の綺麗な花畑を貸し切った。某向日葵妖怪と話すのは緊張したけど、理由を話すとこれまたあっさりオーケーが出たのだから驚いた。どうやら恋愛には寛大らしい。モコウさんは意外と乙女で、花畑を見たときには少女みたいな笑顔を見せてくれた。私は心の中で溢れる鼻血を拭いながら、朝早起きして焼いた八ツ目鰻の蒲焼きをモコウさんの前にそそくさと差し出した。ここまで出来ちゃう自分の行動力にびっくり。ああ、恋って素晴らしいよね。

「…あ、うまい。みすちー、これうまいよ。」

「ホ、ホントですかっ!?良かった、早起きした甲斐がありました」

モコウさんが目を輝かせて私の蒲焼きを食べる姿を見るだけで、私は天にも上る気持ちだった。やっぱり可愛いモコウさん。すごい勢いで蒲焼きが無くなりそうなのが嬉しくて、見つめているとモコウさんが私の視線に気付いたらしく、箸を止めた。

「みすちーも、食べる?」

「あ、いえ、私は…」

あなたを見てるだけで幸せなんです、本当にありがとうございました、と続けようかと思った私は生粋の夜雀でチキンガール。折角の申し出だが遠慮しようと手を振ろうとした、その時。


109 :ミスティア・ローレライ(東方project)
2011/12/02(金) 17:29

>【嫉妬、羨望、はたまた別の何か。】

ちょいグロ、不健全。回避推奨>>1


私は夜雀の身分で不死の妹紅さんを愛している。ハクタクや月の姫に比べたら私等取るに足りない存在な事は明白で、だからこの想いは私の中でそっと燻らせておくべきなのだと思った。私の寿命は永遠では無い、けれど月の姫は永遠。私は歴史なんて食べられもしない低俗妖怪。それでも良いから彼女の笑顔を見ていたかった。
…それなのに、いつからだろうか。彼女との距離が縮まった日から私は彼女の何かが欲しくなった。愛情か、はたまた別の何かか。
出会ったきっかけなんてろくに覚えちゃいない。鰻を焼いていたら買いに来てくれたんだっけ。そんなものだ。それだけの関係で、密やかな想いだった。
けれどある日、月の姫と殺し合ったのであろう彼女の遺体を発見した。私は彼女が再生に至る前に、何故か衝動的に遺体の一部を持ち帰った。大事に大事に保存した。爪が小さく綺麗で、指先は細く、肌が透き通るように白い、実に素敵な手首だった。
月の姫は何故このような素敵な造形を破壊するのかしら、やはり月の民は狂っているのか。それとも月の姫は単に彼女の歪む顔が見たいのだろうか?それとも殺される事が快感なマゾヒストなのか。此れを近くで何時も眺めているハクタクは何を考えているのか。そんな事を考えながら一晩中綺麗な少女の手首に見惚れていた。
翌日、店にやってきた妹紅さんにはやっぱりちゃんと手首があった。見事な再生力だった。
私は何故か胸が痛かった。私の手元に手首は有るのに目の前に生きた彼女が居るのは不自然で、吐き気を催した。気が狂いそうになった。けれど倒錯的で、生唾を飲んだ。妖怪の本能か、それとも。

>…殺したい。何度も殺したい。

欲望が脳裏に渦巻いた。
あの聖人ぶったハクタクも狂った月の姫も私と同じように思ったに違いない。その度に、彼女は本当に殺されてきたのだろうし、殺したのだろう。妹紅さんの何かが欲しい、出来れば生命が。けれど叶わないのだ。サディズムとマゾヒズムを行ったり来たりして、行き着く先には罪悪感のみが残るだろう。それすら無くした月の姫は狂人で、ハクタクは日々苦悩しているんじゃなかろうか。あははははははははは面白い!なんだ、み ん な 低 俗 じ ゃ あ な い か ! 馬鹿馬鹿しい!

私の視線は自然と妹紅さんに向いた。彼女は私を一瞥すると何か悟ったのか、微笑んだ。口を動かした。


>「あんた、私を殺したいの?良いよ。殺させてあげる」

そう動いた。信じられなかった私は激しい動悸に襲われた。彼女は完全に悟っていた。私の醜い性を。そしてその生命を差し出すと言った。目眩がした。
けれど私は頷きそうになるのを必死に堪えた。そんなものは望んじゃいない、私は貴女が欲しい、そう言いそうになって笑った。自嘲混じりの笑みだった。頚を振って、答えた。


>誰かと殺し合う際に遺体となった貴女を下さい。なんでも良い、貴女の一部なら。

欲望をぶつけるよりも、他人の残骸に憧れる方が実に私らしくて良い。貴女の一部を集めて、生命への倒錯感に酔う方がよっぽど健全だ。殺したい。けれど他人に殺される貴女ほど欲望を煽るものは無い。綺麗なものは無い。狂ってなんかいない。

彼女の狂ったような笑い声が心地好く耳に響いた。
いつか彼女の全てを手に入れられたら。その声すら手に入れられたら。それを想って、私も笑った。

224 :風見幽香(東方project)
2013/02/12(火) 04:22

2,


私が手紙を前にして右往左往していると、そんな様子を見かねたのか、エリーが扉を数回ノックした後不躾に部屋にずかずかと上がり込んできた。エリーは物凄い剣幕で私を睨んだ。妖怪然とした表情に私は背筋を震わせた。好戦的で良い表情だった。けれど彼女の真の敵意は私に向いていない事が分かっていたので少し残念だった。

>その手紙は誰からですか。

彼女は怒りを言葉の端々に滲ませて私に問う。旧友からだと告げたけれど、彼女は首を横に振るばかりだった。

>幽香様、幽香様にその手紙を書いた方を私は知っています。その方を憎いと思います。知っているから憎いのかもしれない。私はその方が気に入りません。幽香様に人間風情の抱くような幼稚な感情を植え付けるような奴は嫌いです。大嫌いです。ああ、今も人間のような顔をして、醜い幽香様。そんな手紙は捨ててしまって下さい。それか、もう手紙を寄越すなと彼女に告げて下さい。さもなければ私は彼女を許せないし、貴女も敬えません。幽香様は私の知っている大妖怪であれば其れで良いのに、馬鹿なお方。何時まで未練がましくいるつもりですか。本当に本当に馬鹿な幽香様。

そう一気に捲し立てた後、エリーは私の目には泣いているように映った。
彼女が酷く可哀想だった。彼女は私に似ていて、彼女も地獄に居るのかもしれないと思った。哀れで、可哀想で、愛しくなった。自己愛から来るものだったのかもしれない。私は笑って首を横に振った。大丈夫、全て貴女の思い通りになるからと言って彼女を宥めた。

暫くしてエリーが部屋から出て行くと、私は手紙の封を破って中身を確認する事にした。
全てはエリーの願いの通りになると、心で唱えながら。

225 :風見幽香(東方project)
2013/02/12(火) 04:23

1,


私の大事な向日葵畑に妖精が彷徨いていた。向日葵畑を荒らす輩は多いので、叩いて潰そうと追い掛けたら、その妖精に泣きながら手紙を渡された。どうやら私に渡すよう託けられたらしい。仕方が無いので渋々手紙を受け取ることにして、差出人欄に目を遣った。其処で私は凍り付いた。一体どんな表情をしていたのかも解らない。けれど、妖怪染みた表情では無かったに違いない。
妖精は一瞬何か言いたげだったけれど、私が怖いのか言葉を発せずにいるようだった。何故か私は妖精が気の毒になって来たので、御詫びにと向日葵を数本手折って持たせた。妖精と別れた後、私は直ぐ様自分の家に戻った。くるみやエリーも私の顔色が優れない事を察していたようだった。そもそも私の帰宅が久し振り過ぎた為か、二人ともかなり驚いた様子だった。特にエリーはいかにも気に食わないといった顔をしていた。
けれど私にはそれを気遣う余裕も無かった。だって手紙の差出人は、あの子。
下らない幻想に取り付かれてしまった私を優しく諭してくれた大事なあの子からだったのだから。

私は部屋に入るなり手紙をテーブルに置いた。両手を目の前に掲げると小刻みに震えていた。私の怯えを象徴しているようでたいそう煩わしかった。呼吸を整えようとしたけれど、苦しくなったので暫く俯いていた。
頭を過るのは彼女の事ばかりで、彼女の笑顔と其れを奪ってしまった私が思い出されては消えて、酷く切なかった。彼女はどうしているのかしら。彼女は元気に過ごしているのかしら。脳裏に過るのはそんなとりとめもないことばかりだった。

1 :加_州_清_光(刀_剣_乱_舞)
2010/08/23(月) 22:54

毒に浸したリンゴなんかよりよーっぽど効く毒を知ってるよ。
教えてあげるから、こっちに来て。

#*取説*
>>19 

#*物語(悪戯書き)まとめ*
百合ばっか。
>>20

#踏み切りを渡ってまっすぐ