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┗毒入りりんご(41-50/280)
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50 :
ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:39
1,
彼女は彼と出会う。出会いは唐突な物で、彼女には予想も付かなかった。彼はそつなく彼女との逢瀬を遂げると、彼女に名乗るように促す。彼女は泣きながら名前を告げる。彼女は生まれてこのかた自分の名前を心地好く人に告げた事は無かった。それも見ず知らずの存在であった人に名前を告げることは彼女の心を酷く掻き乱した。親に与えられた異国のような名前は生まれてこのかた一度も彼女に馴染んだ事はなかったのだ。
しかし幸か不幸か、彼もまた境遇の違いすぎるニンゲンであったので、彼女の名前を聞き屈託無く笑うと彼女の髪を撫でた。風のように、優雅に。殆どの女性はうっとりしてしまうに違いない端正な顔立ちに笑顔をたたえて。
それは水面を揺らす風に違いなかった。彼女の心には波紋が次々と広がる。それは次第に大きなうねりを伴い、彼女を飲み込んでゆく。
#彼に恋をしてはいけない。
彼は小娘をたぶらかそうとしているに違いないと彼女は考えた。しかし、紡がれる愛の言葉や、どろどろに交ざり合う一時を経ると、そんなことは頭の隅に追いやられて、どうでも良くなってしまう。彼の前での嵐の中の小舟の様だった。
いけない傾向だ、と彼女は思う。しかし気付けばとっくに波に飲まれ、彼に心奪われていた。落ち出した砂のように、流れ落ちる滝のように、止めようもない事実がそこには佇んでいた。
#わたしはどうなってしまうんだろう。きっと、しあわせにはなれない。いつまで、わたしは、このひとといられるんだろう。
どうしようもないうねりの中。波に押し流され、沈んでゆく。
>かわいいなまえだ、おじょうさん。いや、これからは名前でよぼう。
飲み込まれる。
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49 :
ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:38
2,
彼女がずぶずぶに溺れてゆく様はとてもみすぼらしかった。息も出来ずに、窒息してゆく彼女は傍目から見ても醜かったことだろう(しかし幸いにして、その様は誰にも露見しなかった)。それでも逆らうことは出来なかった。自力で這い上がるには、最早深いところまで沈み過ぎていた。
彼女は日に日に窶れた。彼にのめり込むあまりに、彼女は様々なものを手放した。
#こんなのはわたしじゃないのに。だめだ、かれを、あいしすぎてしまった。
彼女は身を焼かれるような痛みに襲われる。悲鳴を上げようとも声を出す喉も焼き切れていた。肺には水が貯まり、思考はぐずぐずに溶けていた。
#こんなのはわたしじゃない。わたしじゃない。わたしじゃ、ない。
彼女自身はいつしかばらばらに砕けていった。分かっているのに彼からは離れられなくなっていた。彼から離れてしまうことは、彼女のすべてを根刮ぎ奪い取る事に違いなかった。
>かわいいきみ。ずっといっしょにいよう。約束するよ、ずっといっしょにいてあげる。
彼が吐く甘い言葉は麻薬のようだった。刺が交じっていても、彼女は決してヒステリックに咎めたりはしなかった。ただただ黙って頷いた。彼女は幸せだった。自身の変質を理解しながらもそれを受け入れる一瞬が、彼女には何事にも替え難いほどに嬉しかった。
#わたしじゃないわたしは、こんなにしあわせ。
#わたしは、だれなんだろう。あなたがすきなわたしは、だれ?
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48 :
ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:37
3,
変質を理解しながらも、彼女は彼への依存を止められない。彼の逐一の行動が気になり、彼の求める最善であろうとした。彼もそんな彼女に気付いていたのか(或いは気付いていなかったのかもしれないが)、彼女を手放す気配は無かった。それは彼女にとっての幸いに違いなかった。彼と居る時間は彼女にとって唯一の救いでもあったのかもしれない。救いであり、また、彼女自身を損なう儀式のようなものだった。しかし彼女の幸いは確かにそこに在ったので、損なわれていること等些細な問題でしかなかったのだ。
#かれをあいしてる。あいしてるあいしてる。だいすき。しあわせ。
けれど彼女の幸いはあっさりと崩れ去る。彼女を残して、彼は呆気なく消えてしまったのだ。彼女にとっての彼と、彼にとっての彼女は違っていた。必要となんかされていなかったのだ。彼女は泣いた。全てを漸く理解した。けれど損なわれた自身は、戻る事は無い。泣いて泣いて、変質した自身を傷付けようとした。しかし傷は付きすぎていた。それ以上傷付きたくないと言う防衛本能が働き、彼女には風穴が空いたまま、再び平穏が訪れた。
日々の中でみんなが彼女をおいてゆく。真の幸いを手に入れて、微笑んでいるのだ。その顔は彼が彼女に愛を告げた時の笑顔に相違無かった。
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47 :
ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:36
4,
彼女にとっては、そう、ばらばらになってしまった今となっても、彼が彼女に愛してると告げた時の笑顔こそが紛れもない真実なのである。それを否定する事は誰にも出来ない。一体、真のさいわいとはなんなのだろうか。皆が手に入れ、彼のように微笑むものとはなんなのだろうか。自問自答を繰り返した結果、彼女は強くあろうと努めるようになる。前を向き、…そう、倒れたり、溺れることの無いように立ち続けるのだ。胸に空いた風穴は大きい。未だに彼女は彼に会いたいと思っているし、もし再会出来るのなら彼女は嬉しさに咽び泣くに違いない。それほど彼の存在は大きかった。けれど、十中八九それは叶わない。だって、きっと、彼は彼女を必要となんてしていないのだ。けれど何の問題も無い。会えたら、などと云う仮定は最早無意味なのである。
#わたしはたった今、私となった。理解した。わたしのさいわいを決めるのは、私なんだ。
本当の意味では彼女にも彼は必要ない。彼女は悟った。根刮ぎ己を切り裂くような痛みを持って漸く理解した。自身のさいわいを決めるのは、己でしかないのだと。しかし、彼と居る"過程"は必要なものであった。それだけは間違いない。彼女はさいわいのために生きている。自分のためでもあり、他の者のためでもある。それはまやかしのさいわいではない。真の、さいわいなのだ。
【いまの私にお話しできるのは残念ながら此処までなのです】
【強くなる奇跡を生んだのは彼女自身でした】
【ニンゲンは愚かで、けれど、時にとても強い】
【強くなる儀式は大変辛いものです】
【けれどそれを乗り越え、本当のさいわいに近付く】
【奇跡とはそういうものでは無いでしょうか】
奇跡の魔女の紡ぐ物語は、ここでおわりと相成りました。彼女自身が再び紡ぐ物語は永遠に伏せて、猫箱に入れる事としましょう。それでは、さようなら。
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46 :
ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/19(火) 17:30
彼女と彼の物語の欠片たちは歪に輝いている。未だに彼女の胸を貫くそれは、抜け落ちる事を知らない。彼女の胸を、深く抉り貫いたまま、輝いている。
彼女は痛みに泣いている。自ら痛みを選び、それに傷付き、涙している。悲しいニンゲンは、それでも同じことを繰り返すのだ。
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45 :
ベルンカステル(うみねこ)
2010/10/13(水) 23:16
何処かで誰かが泣いている。そのざわめきを、貴方は悟ったのだろうか。
嫌いにならないで、と、泣いている。泣いている。もうずっと、泣いているのよ。哀しいかな、愚かなニンゲンよ。…いや、家具と言った方が正しいか?
考える事を止めるのは、時に胸を貫く痛みを伴う。
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44 :
メディスン・メランコリー(東方project)
2010/10/12(火) 00:45
誰かお話しよー!って事で待機上げ。…誰も来なくても、泣かないもん。
待ち途中で眠気にばたんきゅー。ご愁傷さまです!笑えないね。
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43 :
アリス・マーガトロイド(東方project)
2010/10/05(火) 20:56
>あくまで代わりだったものが、本物に成り代わる瞬間。
気持ちは代替可能なのかもしれない。流されやすい私の戯れ言。あなたには、届かないんでしょうけれど。
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42 :
メディスン・メランコリー(東方project)
2010/10/03(日) 12:37
毎回のCCを求められる事程苦痛なことって無いわ。あくまで私の場合。自発的にやる分には良い、求められるのがいやってだけ。いや友達とかに言われるのも構わないのよ。そういう訳じゃない人に言われるのがイヤ。
>どう思う、スーさん。え?我慢しろ?…そいつぁすまなんだ。
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41 :
アリス・マーガトロイド(東方project)
2010/10/01(金) 23:58
私の恋はどうやら重いらしい。重くて重くて相手が耐えられないパターンに陥るようだ。でも私が冷めると寄ってきたり媚を売り出すのは、重いのが忘れられないから?
#それってとっても不条理だわ。
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