今日は二人でゆっくりと眠る日。おやすみなさい、ジークフリートさん。また明日。
未だに旅行から帰ってきてないんだけど、本当に帰るの嫌になるくらいに楽しくてさ。とりあえずランちゃんとパーさんにお土産と、あとパーさんのお兄さんにも買って帰ろうかな。
ジークフリートさんは水着の女の人にモテまくりです。
予備分!
定期船に乗って、まずは滞在する部屋に向かう。スーツケースを押して歩くジークフリートさんと手を繋いで歩いていても、誰も俺たちに注目しない。国を離れたら俺たちを知ってる人なんて一気に少なくなるんだな、って思って繋いだ手に少し力を込めて握ってみる。今回の旅行ではずっと繋いでいたい、なんて可愛いこと言ってて、キュンとした。
荷物を部屋に置いて、船内に併設されているカフェテリアに行ってモーニングを食べる。俺はフレンチトーストとコーヒー、ジークフリートさんはトーストとコーヒーで、俺のフレンチトーストを一口あげたりお返しに貰ったりして軽食のそれをぺろりと軽く食べたんだけど、手の甲にキスするその仕草が本当に騎士様、って感じで一気に照れちまった。俺も騎士だけど!なんか、こう、違うって言うかさ。すごく格好良かった。食べ終わったら人が増えてくる前に部屋に戻る。いくら誰の目も気にしないとは言え公共の場をずっと陣取ってる訳には行かないからな。
部屋に戻ってソファで寛いでたんだけど、人目がないとジークフリートさんがずっとキスしてくれるし抱き締められるしで色んな誘惑を振り切るのが大変だったぜ……。それから少しして、漸く船がアウギュステの空域へと到着したみたいで、部屋の窓からはきらきらと輝く青い海が見えていた。
今回は、変な海産物が暴れたりサメが空を飛んだりしない、よな?
ジークフリートさんが帰ってきてから二人で荷造りしたんだけど、足りないものは現地で買い足せば良いか、って思ったら本当に簡素なものになっちまった。水着と着替えと、あと一応救急セットと、って詰めてたらスーツケースひとつで終わっちまった。買ってきた水着とかシャツとか見せたりしてわいわいしてたら夜も深けてきた。荷造りも終わって二人で一緒に寝て、次の日に備えようってことでキスして寝た。
遠くの方の空が真っ暗で、嵐が来るらしい。慌てて起きて支度して、ジークフリートさんも起こして、火元の確認とか窓に鍵かけたか、って確認してる間に準備した荷物を持ってもらって、財布と家の鍵を入れた鞄……ジークフリートさん鞄持ってないの?旅先で良いのあったら買ってプレゼントしよっと。鍵を閉めて、それから急いで定期便の出ている港へ。
人でごった返してて、みんな嵐が来る前に出発しようって考えで俺たちと一緒だな、なんて笑いながら発着場のロビーで順番待ちをしている間、フェードラッヘから出稼ぎに行く人、旅行に行く人、地元に戻る人、様々な理由でここにいるんだな、って思ったんだ。
街の中だけじゃ見ることの出来ない景色だよな、って改めて感じたんだけど、顔見知りの人達にヴェインちゃんなんて話し掛けられちまって、ジークフリートさんが隣に居るからちょっと照れちまった。親しみを込めて呼んでくれてるって分かるから、なんか擽ったい気持ちになるけどちゃん、かぁ。ランちゃんもこんな気持ちなのかな。呼ぶのやめないけど。
俺達の番が来て、チケットを渡して船内で過ごすための船室の鍵を受け取ってからアウギュステ行きの定期便に乗り込む。これから俺とジークフリートさんは、仕事も依頼も何の関係もない、本当にただの観光旅行としてアウギュステに行く。
ただのジークフリートさんと、ヴェインとして。
楽しみ過ぎて足元が疎かになって、乗り込む時にタラップに足引っ掛けてちょっと転んだのは秘密な。