>>木兎と海と俺
なんかのタイミングでたまたまつけてた指輪を外して木兎に預けた事があった。たぶん手洗うとかそんなタイミング。よくある「ちょっと持ってて」もうっかり2人にかかると「ちょっと」が数ヶ月単位になる事がざらにある。
前にも木兎が泊まりに来て忘れ物してったけど、今度会う時持ってくわー、なんて言ってたのをお互いに忘れて日帰り温泉とか行ってた。数ヶ月後、また泊まりに来た木兎にやっと返したけど、奴はまた別のもん忘れて帰って行った。
俺「おい、また忘れもんしてんぞ」
木兎「もうお前ん家で使う用ってことで！」

我が家が木兎の第2の家になる日も近い。いや、もうなってんのか？
閑話休題。
そんな訳で案の定、指輪を預けたことも預かったことも即座に忘れた俺たちはそのままいつものように遊んで飯食って解散した。

それから半年以上経った頃、たまたま都合がついて、普段忙しい海が一緒に飲めるってんで3人で居酒屋で飲んでたとき、木兎がどんなタイミングか知らねぇけどその指輪を出してきた。

木兎「黒尾！これ返す！」
俺「おー、忘れてたわ。サンキュ。」
海「え…！？」
木兎・俺「「えっ？」」

滅多にない海の大きな声に驚き固まる木兎と俺。不意に流れる微妙な空気。
見てはいけないものを見てしまったかのように気まずそうな海の顔。訳がわからず間抜けにも口半開きでぽかんとする俺。野生の勘で何かを察した木兎。

木兎「そういうんじゃねえから！！」
海「う、うん…。」
木兎「ちょっと外さなきゃなんねーときに預かって忘れてたやつね？！」

ここでようやく察した俺。
なるほど目の前で指輪返すとか誤解を招きかねなかった、か？いやでも木兎と俺じゃん？こいつとなんかあんならとっくの昔にどうにかなってただろうし、今までもこれからもダチ以外になるはずがないと確信を持って言える。
お互い出会った当初から遠慮も何もないわけで、なんなら居酒屋行く前に海とうちに来た木兎は着いて早々に床で寝てた。その遠慮のなさが要因と言えなくもねぇな、といま書いてて思ったけど。

>>教訓
あらぬ誤解を生みかねないから、安易に人に指輪とか預けんのやめよう……などと思っていた頃が俺にもありました。
先日また木兎に指輪を「ちょっと持ってて」して回収し忘れて帰ってきた事を思い出した俺は、いっそのこと第2の海を生み出すべく、木葉と木兎と3人で飲む機会を狙うことをここに決意した。