そういえば、この日記のタイトルだが…オレは杖を持った白猫ではないし、ましてや来訪者に対し元気になる豆をくれてやる趣味も無い。 植物の方だ。 とは言っても特別好きな訳じゃないし、せいぜいのど飴で風味を嗜む程度なのだよ。 こんな感じで花梨と言えば咄嗟に思い付くのは果実の方だが、ここでは花の方を考えてタイトルに使っている。 ……思わず語りそうになったが、よく考えたら起用した理由などバレバレなんじゃないのか…? いかん、もう黙るのだよ。 話題を変える。 ▼ケーキ を、作った。 …もう一度言う。 オレは バレンタインに 生まれて初めて ケ ー キ を 作 っ た 。 …我ながらあまりに衝撃的な出来事だったので声を大にしてしまったのだよ。 アイツを驚かせ、尚且つ喜ばせる方法を考えたら結果こうなった。 オレはこの日の為に日夜練習を重ねていた。当日は予想外に帰宅が遅れるというハプニングに見舞われ心底焦ったが、なんとか間に合った。まさかの23:59に滑り込みセーフというドラマティカルな展開だったのだよ。本気で冷や冷やした。 アイツは帰宅後に送ったオレからの返信を見ていなかったらしく、それでも寝る前に…と幸せそうな雲を送ってくれた。クリームやチョコレートと激戦を繰り広げていたオレにとって、これ以上の鼓舞は無いと感じた23時前だったな…。 しかし、返信を見ていなかったアイツが「忙しいみたいだから寝る前に~…」といった文面でメールを寄越したせいでオレの脳内は鼓舞されると同時にプチパニックに陥れられたのだよ。 何故、忙しいとわかった…? とにかくこの疑問が頭を回りまくった。この日記があっさりバレたのかと思って焦った…というか、そもそもいつか教えるつもりなのだからバレても構わないんだが…。 気付けば、迂闊に持ち上げた電動ミキサーから飛び散ったホイップクリームがオレを白くデコレーションしていた。 高尾許さん。 しまった、怒りのあまり名前が出てしまった。 まぁいい…露骨にアイツアイツと連呼するのも疲れてきたのだよ。 話は逸れたが、とにかく今回の反省点としては己の手際の悪さ…だな。次回はもう少しサクサク進めたいものだ。 だが、高尾の驚き喜ぶ姿が見られたのは本当に良かった。 ……まぁ、危うくクリームとチョコまみれの身体に悪戯されるところだったが…、それも何とか死守出来たのだよ。 どんな時でも油断ならん奴だ、あの馬鹿め。 さて、長くなってしまったな。流石に眠い。 高尾から貰った幸せな雲を見ながら寝るのだよ。 おやすみ。 |
高尾が帰って来ない。 忙しいのだろうか…、連絡をするべきか迷うな。 料理本を読むのにもそろそろ飽きたのだよ。 …いかん、眠たくなってきた。 |
色々と考えていたらこんな時間になってしまったのだよ…。 |
ウチの馬鹿尾がどうやら何か勘違いをしている。 勘違いをした上、オレからの言葉を聞くのが怖いからと電源を切った。 アイツは何処まで馬鹿なのだよ。 話ぐらい聞けないのか。 オレが別れ話を切り出すとでも思ったのか…? オレは、妙な事を危惧したアイツからのメールに、最近以前に増して重くなっていく自分の気持ちをどうすれば良いのかわからない、…と、そんな話をしたかったのだよ。 オマエが触れたいと思ってくれるのは、どんな時であろうと嬉しいのだと伝えたかったのだよ。 何故こうなる。 オレの言葉不足がアイツを不安に追いやるのはこれで何度目だ。 今は届かなくとも、すぐにわかるようオレの気持ちを送っておくか…。 |
▼四ヶ月 今日で、高尾と出会って四ヶ月だ。 アイツも言っていたが、もっと昔から出会っていた様な気がするから不思議な感じだ。 先日の件は無事解決したのだよ。 ウチの馬鹿は本当に馬鹿で困った奴だが、憎めない愛しい馬鹿だった。 お陰でうっかりこの日記の事も漏らしてしまったが、いずれ話すつもりだったし、あれだけ喜んでくれたのなら綴っていた甲斐があったというものだ。 ところで、日記をつけていると話してから高尾が此処を見つけるまでの速さが異常だったんだが…。 アイツの眼はこんな事にも使えるのだな。というか、今回の高速発見は犬の鼻の良さのそれに近い印象なのだよ。 ……しかし、読まれているのだとわかった上で言葉を残すのは何だか気恥ずかしいな。 いかん、これで日々を綴れなくなってしまっては本末転倒なのだよ。 ふむ…せっかくバラした事だし、たまにはアイツに書かせてみるのも面白いかも知れん。 何か考えてみるか。 |