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517.【広壮なる】二つ名キャラで小説を書こうぜ 第二章【妄想】
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机の上に、人が立っていたのだ。 「おーっほっほっほっ! この私の能力を破れる人間はいないようね!」 高らかに典型的なお嬢様笑いをしているのは、見たことのない少女だ。服装まで、裾が広がる形の豪奢な黒いドレスという出で立ちである。 「あら、そこのあなた……私に対抗できるような能力を持っているのかしら?」 「ほえ? 吾輩でありますか?」 戸口でぼんやりと惨状を眺めていた鈴音子は、ドレスの少女の台詞に、意識をそちらへと戻した。 「んー、吾輩、基本的に能力使えるのは夜限定でありますからね。今はご遠慮しときます」 「あらつまらない」 不服そうに、少女は口を尖らせる。だが、その表情には、自らの能力がこの学校では最高峰であろうという優越感が見え隠れしていた。 そんな彼女に、やれやれと鈴音子は肩をすくめる。 「能力の誇示もいいですが、こんなに派手にやりすぎると、あとで先生に怒られるでありますよ。そうなっても吾輩、知ーらないっですからね。というか十中八九怒られるでしょうが」 だが、ドレスの少女は鈴音子の言葉にひるむ様子はなく、むしろ艶然と微笑む。 「あら、それは楽しみね。この学校の教師というなら、それなりの能力は持っているのでしょう? とはいえ、果たして私の能力を凌駕できるかどうかは謎なところだけれど」 「先生の能力……ですか。まあそのうち、わかると思いますよ」 それだけ告げると、鈴音子はくるりと教室に背を向けた。 そして、ドレスの少女には聞こえないように呟く。 「というか、別に先生でなくても、あの方は止められると思うんですがね……まあ、基本的に校内での能力使っての私闘は校則違反になりますから、誰も止めないんでしょうね──っと」 そこまで呟いて、鈴音子は『あの二人』の姿がないことに気づいた。近くの窓から顔を出し、屋上の方に聴覚を集中させる。……までもなく、ゴォォォ!!という突風が起きているような空気の振動と、その振動に巻き込まれて散り散りになっているかのようなスピーカーのノイズが聞こえた。 「あーあ、また性懲りもなく……あの方々も先生に怒られる仲間入りですかねー。まあ、流石にあちらは慣れているでしょうけど」 呆れ顔になる鈴音子に、側に来ていた彰子も頷く。 「あの人たち……どちらか片方でも、こっちに来てくれてたら良かった……」 「ですねー。先生が来てない今ならあのお嬢様くらい瞬殺でしょうし、どうせ私闘すんならこっちの方がまだ合法的っぽいですし」 二人揃って、はぁ、とため息をつく。 それにしても、と鈴音子は教室を振り返り、言葉を続けた。 「確かにうち、私服可の学校ではありますが、流石にあんな舞踏会でも行くようなドレスを着てきた人は、お初にお目にかかりますね……」 「……派手。邪魔。実技訓練になったら、叩き潰す」 「……彰子ちゃん、いつになく手厳しいでありますねぇ……」 苦笑する鈴音子に、彰子はむすっとした表情のままだった。どうやら自分の机に乗られたことが、余程気にくわなかったらしい。……無論、机を土足で踏み荒らされて楽しい人間などいないだろうが。 ま、と鈴音子はくるりと教室に背を向けた。 「服の嗜好など人それぞれでありますし、それで吾輩が困るわけではありませんしね。それでは吾輩、教室が空くまで就寝致しますので」 誰にともなく宣言すると、鈴音子は背負っていた大きなナップザックから、そのナップザックに入りきらず上体をはみ出させている猫型の抱き枕を引っ張り出した。そして開いていた窓のさんにそれを置き、それに自分の上半身をぼふっと倒れこませ、目を閉じた。 すぐにもすーすーという寝息をたてながら、安らかな笑顔で本当に寝始めた鈴音子に、見ていた彰子の口から再びため息が漏れた。 「……鈴音子ちゃん、呑気」 とはいえ、他にやることがあるわけでもない。 肩をすくめると、彰子は自らも暇を潰す為、鞄から本を取り出した。
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