この距離感でいいのか、と悩んでいたのはどうやら小官だけだったらしい。


食事を用意して、貴殿の身の回りの事をして、ぽつりと言われた、
｢結婚でもするか？｣
に思考がフリーズした。
小官は貴殿にとって、そこまで大切な存在になれていたのか。小官が理想の姉さん女房だと言われても更に実感がない。


ただ、もし、都合のいい存在と扱われていても構わない。
気軽に帰れる場所に、そして貴殿が帰った時におかえり、とお疲れ様を言いたい。
小官としては、それだけだ。

さて、この沈着状態は如何に解決すべきか。否、それは小官だけが思っていて、貴殿はそう思っていないのかもしれないが。


何だかんだと言っても、例え形が変質しているとしても、小官の気持ちは変わらない。
ただ、変質した部分を見せたくない。…その為に不信感を抱かせている様な気もするが。
小官と貴殿がちぐはぐなのでは無く、小官がちぐはぐなのだろう。

貴殿と久々に居られるからか、もっと声を聞いていたい、もっと温もりを感じていたい、という欲求がむくむくと湧き上がるが、それも抑えなければ。元はそんな我儘はあまり浮かばなかった。が、それで忙しかったり体調が優れていない貴殿の負担になる訳にはいかない。


｢餓鬼みたいに付き合っただの記念日だとかでキャーキャー言う気はない。一緒に居られればそれでいい｣
という言葉が最近よく頭を過ぎる。
実はカレンダーに付き合った日を記してある、と知ったら貴殿は呆れるだろうか。
もっと貴殿の声を聞きたい、触れたい、行かないで欲しい、と願っている事を知れば、貴殿は面倒臭がるのではないだろうか。


好き、とは難しいものだ。