もしも明日、この世界が滅びるとしたら？

なんて、おかしなことを言ったのは騎士様。何かを成し遂げたいとか、悔いのないようにとか、名残を惜しむとか、考えるだけ無駄。どうせなにもかも無くなってしまうなら一時の慰めの為に振り回されるなんて馬鹿馬鹿しいと思わない？愚問だよね、他にする事も無いんだから一日中騎士様の傍に居てあげる。昨日と一緒で明日も一緒。毎日同じことの繰り返し。騎士様は永遠が好きなんだって。あと何年、生きられるかな。

可哀想なオズ。おまえの悲しみは、誰が癒してくれるのかな。もう見つけて囲ってあるんだろう？ねえ、何処の誰なのか僕に教えてよ。おまえの目の前でぐちゃぐちゃに壊してあげるんだ。きっと楽しいよ。愛してほしいと無様に追い縋ればきっと、世界の見え方も変わっていたのにね。

誕生日。たんじょうび。

僕はほんとうの僕じゃないから騎士様からおめでとうの言葉は貰わない。だけど甘いのは毎日貰ってる。今日はバケモノの頭を狩り取ってぺしゃんこに潰した、脆い骨みたいにぐずぐずに砕ける食感のやつ。昨日の一際大きな厄災みたいに真っ黄色なのを沢山。
その前は抉りたての肝臓みたいな柔らかくてどろどろしたやつを一緒に食べた。人の頭みたいに硬いのを沢山かち割って、茹だったところをぐちゃぐちゃに潰して作るやつ。

まだ言っていない事がたくさんあるから、逃げないで。逃がさないよ。だいすきな騎士様。

今日の騎士様は機嫌が良いみたい。でも僕の気分は最悪。痛いなんて言わなければ良かった。でも痛い。どうでもいい。
騎士様はキラキラしたものが好き。花も、水も、空も、キラキラ輝いて美しいのが好きなんだって。騎士様らしいね。草木の色も水面の色も、花の色も、何一つ僕の目には映らないし、そこにあるのは何時だって灰色のモザイクだけだけれど。騎士様が好きって言った絵の額縁の形だけは覚えていてあげる。
ああ、そう言えば。僕の好きなものの話、してなかったね。僕はね、不安と混沌と恐怖と虚無、絶望を混ぜ込んでぐちゃぐちゃにぶち撒けた真っ青で真っ赤なやつが好き。

きみ、要らないものを捨てる時は本当にぽいっと簡単に、何でもないもののように捨ててしまうから。軽くて薄くてペラペラで、何も持たない僕のままが丁度良い。死ぬ時は軽くしておかないと落としたものを探すのは大変だから。今更どうだって良いし興味無い。だけど騎士様の事は好き。どうしてだろうね？