薄曇りに、時折の雨。不機嫌に歪んだ顔のうねった髪を、諧謔まじり、ぐしゃぐしゃと掻き乱してやるのがここ最近の気に入りだ。

オレンジデー？察しの通り初めて耳にした。だが愛し合う者たちの日とくれば、これを逃してやる手はあるまい。

ああ…またみっつも用意してくれたのか。お前はどれだけ俺を喜ばせれば気が済むんだ？

わかった、わかったよ。俺は確かに愛されている。そしてお前を最も愛しているのもこの俺だ。

そっと小箱を開け。

――良い香りのコロンだな。嫌味がなく、初心者の俺にもつけやすい。…色取月の頃。何処からともなく匂ってくる甘い香気。出処を探すと、愛くるしい橙の花が少し遠くで群れている。ありがたく使わせてもらうよ。
ところで、お前の香水なら既に染み付いてしまったと思うが。どうだい？

ジューシーカラーの袋を覗き。

――下着…昨夜に続いてとんでもないものを…。確かに今日では薄橙が正式だな。表現は時代とともに移ろいゆく。今話しているこれだって、いつの誰が話し始めて世に定着した言葉だか。
お、Amaz○nだ。ベージュオークルが届いたぞ。

差し出されたそれを受け取り。

――これは楽しめる。オレンジの酸味に混じる蜂蜜と花の香り…滑らかな口当たりもいい。お前に出逢わなければ、生涯酒の美味さを知らなかった。
酒に限ったことではない。俺に世界の鮮やかさを教えてくれた。手を引くつもりが、今では逆に連れ回されている。お前といるとまるで毎日が記念日だ。

俺からは、

自家製オレンジピールで作ったオランジェットと、

Roses are

You are so sweet and red.
You set my heart on fire. That's what it's all about, darling.
You know it's love.
Never ends.

<h3 class="box9_header">タイトル</h3><div class="box9"><div class="inner">文字</div></div>



ささやかながら、日記用の魔法を簡単にしたものを贈ろう。

これからも一緒に想い出を増やしてくれ。全ての頁を使い切ったら「お疲れさま」と笑い合って、またその先を共にして欲しい。
なあ、つるぎのように美しいひと。ときに可愛らしく、俺の全てで守ってやりたくなるひと。お前といると何がなくとも幸せだよ。



愛してる。これからもずっと。誓って。