「なぁ、盧／笙、直近の貯金額てなんぼほど？」て聞いたらなんや暫く空中見つめて考え込んで通帳を持って来た盧／笙。真面目か？ボケ殺しか？
いや、聞きたかったんは事実なんやけどその前に反応が欲しいやん。お前の笑っとる顔が俺はいっちゃん好きなんや…「いや、今のおもんなかった」…なんやと？！
あーほら、また話脱線しとる。センシティブな話題だからって脱線シテいいことないで。なんやその顔。その顔。
二人で暮らす家買うんどうかな思うて。一軒家よりマンションがええんやけど。一介の教師には？売れっ子芸人を住まわす家を買うんは荷が重い？そんな荷ぃは一旦こっちに置いといて。
まぁ、ぶっちゃけた話！家を買うんは俺一人でなんとかなるんやけど、やっぱり俺達の愛の巣っちゅうこと考えると二人で買わなあかんやろ？お前そういうのめっちゃ気にするタイプやん。来世まで根に持つタイプや。ってこって内見行こな。
なぁ、盧／笙！忍者屋敷とかワクワクせん？ウォークインクローゼットとか床下収納とかめっちゃあるとこ！いや、そんなとこ入らへんって。俺は閉じ込められシチュエーションならウォークインクローゼットより普通のクローゼットのほうがエロいと思う。今夏やから涼しくなったらにしよ！！暑いから！！ほんまに！！死ぬ！！二階級特進や！芸人の二階級上ってなんや！？大物司会者か！？
この前引っ越したばっかり？細かいこと気にしたらあかん！

盧／笙がなんや急に「パン食いたい」とか言い出すから俺は言うたんや。「パンはパンでも食べられないパンはさーさら！！！」て。そしたら部屋ん中が一瞬にしてアラスカシベリア八甲田山や。「なんや今の」いや俺が知りたい。反射的に口から出とったんや。いやでもこれ結構おもろいんちゃうか？盧／笙やって「もう一回言うてみぃ」って要求してきたぐらいやし。持ちネタにしたろか。
っちゅーか、お前ごはん党やろ。食パンの買い置きあらへんやん。そんなに言うんやったら明日の朝ご飯はパンにしたろと思うたんやけど。まぁ、帰りに買ってもええか。
これどうでも良い話なんやけどな、パンの真ん中いてこまして玉子落としてトーストすると玉子に火ぃ入る前にトーストの方が真っ黒焦げになるやんか。あれ、どないしたらええんやろな。目玉焼き乗っけるんとはちゃうやん。俺ナマの方が好きやわー。でも白身は火ぃ通ってな食えへん。
あとパンにタレめっちゃ絡めたキンピラ乗っけて溶けるチーズ乗っけてトースターでトンするとめっちゃ美味い。
ほんで明日の朝盧／笙のパンに何乗っけたろかな。なんやおもろいネタあるやろか。いや！あかんわ！ネタぐらい自分で考えんと！人気お笑い芸人の名が廃る！おもろいもん食わせたるから首洗って…いや、手ぇ洗って待っとれ！

俺が「誕生日、何が欲しい？」って聞いた時あいつがなんて言うたかわかるか。「自分の為の手の込んだ料理が食いたい」って。いっつも手ぇかけて作らせてもらっとるんやけど！？
まぁ、お互い欲しいもんは自分で買えるぐらいの自立した大人やし、そういう気持ち的なもんが大事になってくるんはわかる。わかるで。俺も誕生日に欲しいもん聞かれたら真っ先に思い浮かんだん、「お前がつくったお前んちの合鍵」やったしなぁ…。いや、その話はええんや。
ほんならめっちゃ手の込んだ京懐石でも作るか！言うたら、「そういうんやない」って。お前なんや、京の味覚に興味欠くってかー？！和食やあかんのか！わーショック！！盧／笙のやつ、人の頭もげそうな勢いで叩きよってなんや。何様のつもりや！俺の旦那様やわ！言うて。
ほんでまぁ、あいつの好きなもん所狭しと並べて好きなだけ食べてもらったんやけど、なんやこのところ疲れとるんやろな。寝た。二人して。速攻で。恋人同士やのに。
世の中は世知辛いもんで、彼氏の誕生日の次の日やからって休みにはならへんのや。せやけど今日の仕事はもう終わったでー！今から行くでさ／さ／ら！！なんや冬みたいな寒さに戻ってしもたし、眉間に皺寄せて寒い眠れん言うとるんちゃうかなー。着く頃には。ほんで潜り込んだろ。

ショートショート！名前。
「もしょー！」って呼んで笑い転げる俺を何がそんなにおもろいんか、箸が転げてもおもろい年ごろなんか、なんもおもろない、って顔で見る盧／笙。
いや「つつじ（も）りろ（しょ）う」やから渾名。よく考えるとこの名前の付け方ってあれやな、どっかのアニメ映画で見たな。
俺、お前の名前の響き好きやわ。何度も呼びたなる。全自動名前呼び機になってまう。俺がもしこのままアンドロイドになってしもたら、壊れかけた時にはお前の名前を繰り返し呼ぶんやろな…。ならんでも呼んどる？せやな！呼んドロイドやわ！
ショートショート！ライオンの檻。
あいつが昨日の夜、好き放題噛みよった所為で今身体バッキバキなんやけども。後で鏡見たら遠山の桜吹雪みたいになっとって。なんや…俺がヤクザもんやったんか…。
これなぁ、しっかり長袖、首まで隠れるシャツやから今んとこ何とかやってけてるんやけど…いや脱ぎ仕事にＮＧ出とるからもうすでに支障あるわ。あかん。
ほんでもってこれから薄着の季節になったらどないしよ。っつーピロートークをな。そしたら盧／笙のやつ、我慢するって言いよるんよ。我慢出来るんやったら…今やれ…！？俺はなんで毎度毎度こんなボロッボロになるまで噛まれとるんや…！？我慢せい！！ちゅうか既になんや癖になってしもて、俺薄着の季節に噛まれんようになったら満足出来ひんかもしれん。ほんで欲求不満になった俺は噛みを求めて動物園のライオンの檻にダイブしてしまうんや！！なんちゅう悲劇！！オ／オ／サ／カ三大悲劇のいっちょあがりやで！！こら映画化決定やな！『盧／笙に噛まれただけなのに』

「ところで、オ／オ／サ／カで一番安くて不味いイタメシ屋って何処？」なんて訊かれたんやわ。同期に。
俺は答えた。「そら俺が臨時で開いたイタメシ屋やな。場所は俺んちもしくはお前んち」あいつ、なにがおもろいんか知らんけど笑いながら帰ってった。不味い店を俺に訊くな。印象悪ぅなるやんけ！
っちゅう話を盧／笙にしたら「イタメシて死語やろ」とか冷静に突っ込まれてん。確かに最近聞かんな。俺はイタリア料理よりイタメシのほうが好きや。なんぼか日本の料理っぽいとこあるやん。知らんけど。
気楽に満腹になれる豪快なメシ。そういうん、粉もんに通じるとこがあるようなないような？気がせぇへんか？盧／笙もちょっと納得したような顔しとった。俺の勘違いやなかったら。
身振り手振りで喋りながら食べとった所為でしっかり刺した筈のフォークからトマトソースたっぷりのペンネが落ちてしもてんけど、それをすかさず盧／笙が皿でキャッチした。ナイスキャッチー！お前野球も向いてるんちゃうか。今度野球するか！い"や急"にどうしてん。同点になって動転ー！言うて。
しょうもな、おもんな、って顔した盧／笙が畳みかけるように「嘘吐いたやろ」「不味ないやんけ」とか言うてきよったからイタメシ屋サ／サ／ラは閉店いたしますー。シェフが照れてしもたんですわ。ほなまたのお越しをー。