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┗1396.禎祥と警鐘【保存】(65-69/73)

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69 :灰_谷_蘭(東_京_卍_リ_ベ_ン_ジ_ャ_ー_ズ)
2022/05/26(木) 22:39




ほとんど行くことのなかった学校で、同級生が互いを友人や親友と呼び様々な話をしている中、オレは誰かを特別だと感じたことはただ一人をのぞいて全く無かった。嬉しかったことや楽しかったこと、嫌だったことや呆れて笑うようなくだらないこと。そういった話を出来る相手を親友と呼ぶのなら、オレがそんな存在だと思える人間は他人の中にはいなかった。何でも話せるのは竜胆だけだったから。そして話題が恋愛に変わり始める年齢になっても、女に話しかけられるよりも学年が違う竜胆が帰りに「兄貴、今日まっすぐ帰んの?どこか寄る?」と教室に来ることが嬉しかった。その時に竜胆に視線を向けている女も当然いたが、その意味をしっかり理解した上でオレは無視した。だってオレの隣は竜胆で、竜胆の隣はオレだろ。見惚れちまうのは分かるけど、オレの可愛い弟をオマエなんかにやらねえよ。……とにかく、そんな風に一緒に過ごせることが嬉しくて幸せだという感情が恋なら、それを抱くのも竜胆に対してだけだった。
もう気付いてたと思うけど、ずっとそんな懐かしいことを思い出しながらガキみたいに誕生日を楽しみにしてたんだぜ。本当は祝われたら「ありがとな」って格好付けて返して年上らしく振る舞おうと思ってたのに、そういうのが全部吹き飛んでだらしねえ顔してたくらい。
竜胆、可愛いメッセージカードもありがとな。何年経ってもデレデレしてるし兄らしさや年上らしさなんて無いオレだけど、これからもよろしく。竜胆の誕生日ももちろんオレが一番に祝うから、それまで待っててくれよ。


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68 :灰_谷_蘭(東_京_卍_リ_ベ_ン_ジ_ャ_ー_ズ)
2022/04/11(月) 17:20




興味の無いことはすぐに忘れるし、そもそも覚える必要性も感じない。あと、本当に大切なもの以外は手元に残さない。つまりオレが覚えていることや持っているものは竜胆に関することだけ。前に「オレが言ったことよく覚えてるよな、兄貴」と言われたことがあるが、まず竜胆に関係することしか覚えてないから別に記憶力が良い訳じゃない。むしろ竜胆の方が記憶力が良い上に頭も良い。オレはどうでもいい奴に「そういえば……」と話を振られて適当に相槌を打つことも日常茶飯事だ。まあ、後々役に立ちそうなことはいざという時に使える情報として一応頭の片隅に置いておくけど。
でもオレがガキの頃に竜胆が描いてくれた可愛い絵は今も大事にしているものの一つで、兄弟として、そして恋人として過ごす中で教えてくれたことや向けてくれた言葉はしっかりと覚えている。好きな色や好きな食べ物、好きなタイプ、ノリでやってみた絵しりとりの絵への感想。オレの下手な絵を二人で笑ったあとに大将からの呼び出しがかかって行った時、思い出し笑いしないように堪えるのが大変だったよなあ。あとはもらった手紙も全部大事にしているし、それから日記ももちろん穴があくほど読んでいる。マジで何回読んでも飽きねえの。この流れだから白状するけど、今日も日記を最初から読み返した。
だから竜胆は、ホワイトデーにもらったプレゼントと包装紙をまだ大事に取ってるって聞いたくらいじゃ驚かねえだろ。あのお菓子は駄目にしないようにちゃんと保存方法も色々調べたんだよ。気付いてたか?容器を移し替えてこっそり冷凍庫に入れてること。ってことで今日の夜、一緒に食おうぜ。あんなに美味いものを全部オレ一人で食べるのはもったいねえし、大好きなものは共有したいからさ。


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67 :灰_谷_蘭(東_京_卍_リ_ベ_ン_ジ_ャ_ー_ズ)
2022/03/14(月) 20:11




朝からまともに顔面に食らった。
そんな書き方をするとオレが喧嘩で殴られたと思う奴が大半だろうけど、今日は3月14日。つまり顔面で受け止めたのは可愛い弟からのホワイトデーのプレゼント。まだ眠い中でオレを呼ぶ声が聞こえて、おはよ、と言おうとした瞬間のことだった。竜胆が狙った的を外すはずがなく、綺麗な包みがオレの顔に……ってこと。
続いて飛んできたのは、手作りだからな、という言葉。竜胆からなら何をもらっても嬉しいのに、手作りなんて透明の箱に並べて入れてしっかり保管しておきたいくらいじゃん。そう思ってしばらく眺めてたけど、せっかく作ってくれたならやっぱり食べたい、とも思ったんだよな。ってことで結局我慢出来ずにその場で少しだけ食ったらマジで美味かった。今まで食ったものの中で一番好き。世の中に高級な食べ物は腐るほどあるけど、竜胆のプレゼントに勝るものはない。そう断言出来る。普段料理なんかしねえのにオレのために一生懸命作ってくれたんだろうなと思うとすぐにでも抱き締めたくなって、お返しは何にしようかって考えてた。ホワイトデーのお返しって何だよソレ、って笑われそうだけど。
今回だけじゃなくて、オレは常に竜胆から沢山のものをもらっている。それこそ、そのホワイトデーのお返しを贈るだけじゃ足りないくらい。起きた時とか寝る前みたいな、ふとした瞬間に「竜胆といられて幸せだな」って感じる。そういう感覚や感情だって、竜胆を好きになるまで知らなかった。オレにとって竜胆は本当に大事な存在で、目に入れても痛くないくらい可愛いんだよ。こんなこと面と向かって言ったら頭でも打ったと思われるかもしれないし、口には出さねえけど……いや、嘘。顔合わせる度に言ってる。何なら「おはよ」や「おやすみ」と同じくらいの頻度で言ってるんじゃね?多分聞き慣れてるよな、オレからの「可愛い」とか「好き」って言葉は。
あ、……浮かれてたせいで最後になったけど改めて。プレゼント凄え嬉しかった、ありがとな。オレからのお返しはのんびり期待しててくれよ、竜胆。


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66 :灰_谷_蘭(東_京_卍_リ_ベ_ン_ジ_ャ_ー_ズ)
2022/02/22(火) 14:00




バレンタインのチョコは直接渡そうと思っていた。前もってどんなチョコがあるのか調べて、見渡す限り女しかいない上に心なしか甘い匂いがする売り場に行き、竜胆に似合いそうなものを選んでラッピングしてもらったのだから顔を見て渡すのが当然だ。確かにそう思っていた。当日は竜胆を起こして、そして小箱を差し出そう、と。でも実際はオレの手は気付けばその小箱をそっと枕元に置いていて、体を揺すってもまだ眠そうに目を閉じている竜胆に対して口から出たのは「竜胆、先に行ってるからな」という言葉。恋人にプレゼントを渡すことが気恥ずかしい、そんな感情がまだ残っていたことには自分でも驚いた。
こんなに長い時間を一緒に過ごしているのに、話す度に「オレは竜胆のことが好きだ」と改めて感じている。それはこれからも変わらず、竜胆の名前を呼ぶだけで、それから竜胆に名前を呼ばれるだけで擽ったいような嬉しさを感じるのだろう。だからオレはこの先もずっと竜胆を、たった一人の弟を恋人としても大切にし続けたい。竜胆を幸せにするのはオレで、オレを幸せにしてくれるのは竜胆だけなんだよ。他には何もいらねえ。気持ち良さそうな寝顔を眺めている内にそんな感情がこみ上げて、自分に気恥ずかしくなってリビングに行った。
テレビをつけてぼんやりとそれを眺めながら、はたして枕元のチョコを見てどんな反応をするのかと想像するオレの前に現れたのは、麦チョコを手にした竜胆。けどそこに照れはなく、漂うのはまるで獲物を狙うハンターのものだ。
「兄貴、これは2週間遅れの節分だからな」
……竜胆が節分の豆まきをしたいならいいけどかなり唐突だし、今時の節分って麦チョコ使うのかよ。そんなもん投げたらあちこちベタベタになるから親泣かせじゃね?まあオレ達に親がどうこうとかそういうのはねえけど。そもそも竜胆が豆代わりの麦チョコを構えてるってことはオレが鬼ってことだよな……あ、もしかして表情にこそ出してねえけど、実はこれがバレンタインのチョコでオレに渡すのが恥ずかしいから豆まきって形にしようとしてるとか?寝起きで働かない頭で考えている無言のオレをどう捉えたのか、竜胆は至って真面目な顔をしている。これマジなやつじゃん。ちょっとしたイベントとして応戦するべきか、純粋なバレンタインチョコだと思って受け取るべきか。
とりあえず、どちらにするか決めるのはテレビを消したあとだ。人気の俳優かモデルか知らないが、そこから響くわざとらしい笑い声はオレにとって邪魔なものでしかない。小さな麦チョコ(袋ごとかもしれないが)の前に飛んでくるはずの、竜胆からの大事な「ハッピーバレンタイン」をくだらない雑音にかき消される訳にはいかねえからな。


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65 :灰_谷_蘭(東_京_卍_リ_ベ_ン_ジ_ャ_ー_ズ)
2022/01/05(水) 19:30




ソファで後ろから抱き締めている時に弟の名を呼び、呼んだだけ、と言って呆れさせようとしたことが数回ある。誤解されそうだから先に言うけど、別に呆れられたいって訳じゃねえ。単に他人には見せない素の表情を見たいっていう願望。しかし、呼んだだけ、と打ち明ける度に「本当に何もねえの?もしかして腹減ってるとか?」と返されて揃ってカレーを食ったし、またある時は「眠いんだろ」とベッドに押し込まれて並んで眠った。また人間というのは不思議なもので、そう聞かれると「あ、そういや腹減ってるかも」、「確かにちょっと眠いよなあ」などという気がしてくるのだから恐ろしい。オレはこのままだと「何だよ兄貴、オレに奢りたくなった?」と聞かれたら首を縦に振るかもしれない。
そう真面目に考えつつ、今朝オレはベッドの中で寝起きの竜胆の名を呼んでから、一拍おいて「呼んだだけ」と続けた。けれど続けたはずのその言葉に竜胆の声がきっちりと重なって聞こえた時、そしてその後「今のはマジで呼んだだけだよな」と断言されて負けたと理解した。竜胆はオレのことをすっかり把握しているのだ。だが、敗北を素直に認めるのかというとそれはまた別の話。だからオレは「って言うと思っただろ?本当は今日の晩飯は何がいいか聞こうと思ってたんだけど」と付け足した。そんなオレに竜胆はほんの一瞬面食らい、それから全てを見透かしたように「ラーメンがいい。兄貴は?」と笑った。その竜胆の表情が他では絶対に見せないような無邪気なもので、そしてそれはオレが呼んだ時にだけ見られるのだとよく知っている。だからオレは、これからも飽きずに大事な恋人の名前を口にする。
竜胆、今年も溺愛するからよろしくな。あ、あと今日はラーメン食ってダラダラしながら一緒にテレビ見ようぜ。二人でだらけるのって絶対楽しいじゃん。


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