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さよならのワルツ
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お前と繋いで歩くてのひらに、ときめきを感じなくなったのはいつからだっただろう、とぼんやり考えていた。 お前が語る未来に違和感を持てるようになったからかもしれない。 相も変わらず、俺とガルはつるんでいて。 飯を食いに行ったり、宛もなくドライブをしたりしながら、600年以上。あの頃は良かったな、と浸る思い出に、羨望ではなく別の何かが混じり始めたのは、俺の成長録でもあるだろう。 ずっと時計の針が止まったままだったのに、思い出の中でしか生きられなかったのに、それでも俺以外の時計はどんどん進んでいって。置いてけぼりだと、深夜に嘆いているのにも飽きただけなのかもしれない。 愛している。ただ、恋をするのを漸く止められた気がする。まだ憶測で、真実ではないかもしれないけど、な。 お前はよく遠い未来の話をする。俺は振り返って過去の話をしたがる。噛み合わない会話も、いつだって楽しかった。嬉しかった。だってお前が語る未来には、必ず俺が隣に居たからだ。 いつかひとりになった時には、俺と暮らしてくれるのだと言う。誰も知らない土地へ行って、ふたりで生きようと言う。 その言葉が、嬉しかった。それだけをよすがにして息が出来るくらいに、嬉しかった。 でもそれは同時に「今」の俺を置いて行くと言う事だ。今を蔑ろにして、未来に夢を見ているだけだ。思い描いた未来にならない事なんて、生まれた時から知っていたくせに。 いつだって欲しかった。安寧の地が、家族が、兄弟が。でも何ひとつ手に入らなかった。或いは、努力をしなかった。 未来を夢想する事は楽しかったけど、現実との差に嘆く反動も大きかった。 だからこそ、傍に居てくれるお前に依存していったんだろう。今思えば安易に予測出来る。何ひとつ与えてくれないお前は、けれど必ず傍に居てくれた。それだけで良かったんだ、ずっと、今迄。 それに違和感を持てるようになったのが良かったのか悪かったのか、今の俺にはまだ判別出来ない。分かるのは俺の世界が広がった事と、お前がしあわせで在ると言う事だけだ。俺が居なくても、なんて馬鹿を言うつもりはない。お前のしあわせの中には俺も含まれている。ただ、一番目ではないだけで。 お前の中の俺は、いつの時代で止まったままなんだろうな。お前の後ろをついて歩いて、生まれたての雛鳥だった頃だろうか。 漸く前を向ける気がする。だって俺はもう、雛鳥ではないと気付いたから。 なぁ、ガル。歩くよ、自分の足で。遠くへ飛べないと泣いていた羽根を畳んで、何かひとつでも自分で得られるように。 好きだ。今でもお前を愛している。でもこれはもう、恋じゃない。
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