日記一覧
267.勝手にアイス食うな。
 ┗52

52 :月島蛍
2020/04/16 16:30



〆 一番ということ


以前、山口が言った。「ツッキーは誰にも期待してないよね」って。その言葉だけ聞くと嫌味にも聞こえるけれど、山口は「だから俺、ツッキーと居ると安心できるんだ」と言った。物好きだねって思いながらも、山口が優しく笑って言ったから、嬉しかった。

僕は、勝手に期待されるのが嫌いだった。だから人にも期待しないようにしてる。『一番』という言葉も嫌いだった。一番という言葉を使うと、二番と三番と順位をつけられるような気がして、それが嫌いだった。部活や勉強で使うなら別に構わないけど、それが人の中の評価で使われる時がすごく嫌だった。誰かの一番をとったら、次も一番をとるだろうと言う勝手な期待ももれなくくっ付いてくる。

「誰が、何の評価で付けるんだろうね?何様って感じ。勝手に一番にされても困るんだけど」
「今日言われたこと気にしてるの?あの子、ツッキーのこと大好きってこと言いたかっただけだと思うけど」
「…だからそれが嫌なんだよ山口。一番は努力しないととれないと思わせる魔法の言葉だ。何も努力してないのに一番で、次の評価も一番なわけないじゃないか。努力しろって思わせるあたりがホント嫌な言葉」
「好きって言われて嫌な気はしないしね。ふふ、少しは嬉しかったんでしょツッキー?」
「黙れ山口」

一番好きと言われて、嬉しくないわけがない。でも順番を付けられるようでやっぱり嫌で、僕は結局好きと言ってくれた子に対して何の努力もせず、次の評価がされる前にその子とは終わってしまった。

そんな僕の概念を、いつも日向は唐突にぶち破ってくる。

「月島くんに俺の一番をやろう!コウエイに思うんだな!!」とそんな感じの言葉で偉そうに言ってきたことがあって、心に何も響かなかった僕は「ハイハイ、どーも」と適当に返した。それが不服そうな日向は、「一番やるって言ってんだから、もうちょっと喜べよ」と頬を膨らませた。

「じゃあ二番目は?」
「二番目?」
「そう。僕は誰より上なの?」

意地悪を言った。二番目の奴なんているわけがない。一番だから二番と三番もあるなんて嘘だ。ないのに一番を使うのは、好きという言葉をより大きく表現したいがための言葉なのだから。分かっているのに、やっぱりその言葉は嫌いだった。

「二番目は、肉!!」
「……うん?」
「三番目は、んー…アイス!!」
「えっ、ちょ…」
「四番目は寝ること!!五番目は…うーん?」

日向はランキングを元気に教え出したけれど、僕の頭は予想外の返答についていけず、最後は吹き出してしまった。
なにそのランキング、って聞くと、おれのラブランキングって日向はドヤ顔で言った。

「月島が、いちばん!」
「……」
「…えっ!もしかしてうれしくない??」
「………ハァ、自意識過剰すぎ」

これまで言われてきた中でそれこそ一番嬉しかった。
「一番」って嫌いだった言葉も悪くないなって思えた瞬間だった。

「じゃあ僕のラブ(笑)ランキングは、君に一番をあげよう」
「じゃあってなんだよ!じゃあって!!」


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