*ありがとうの気持ち/第三弾*

20 :川渕千太郎(坂道のアポロン)
2012/05/07(月)　20：02

#          深夜の花見、蜜の味。

  おいこら、無視すんな。お前ぞ、新。蜜の匂い振り撒きながら逃げようとしたって、おいば相手にそうは行かんけんな。人の楽しみば取り上げたかと思えば、一人でさっさ帰りよってから。礼も何も言い損ねたやっか。―――‥…馬鹿たれが。腹ん立つ。

  躑躅が土に落ちてからも綺麗か理由も、どん躑躅が一番長う持つとかも未だ分からん、…―――けど、お前が言いよったやつの他にも躑躅には山んごと種類の有るて言うとはよう分かったぞ。新の教えてくれた久留米躑躅と蓮華躑躅も綺麗かけど、おいは裏白瓔珞ってやつが一番気に入った。他のと違って蜜の吸い難そうな面白か形ばしとる。

  あァそいと、調べよる途中で見付けたとばってん、新の好きな歌留多によォ似たとの中に、躑躅の出て来る歌が有っとばいね。花も歌も、本に載っとるもん全部新ば思い出すもんばっかやった。―――、…何て言うとやろか。お前はほんてよう物ば知っとんな。

  アー、…何やったか。―――長うなってしまったけど、此処には礼ば言いに来たとぞ。改めてこん前はありがとうな、新。お前がせからしかったとは否定せんけど、楽しかったとも本当ばい。…はよ来てから言葉ば残すつもりやったとばってん、図書室で図鑑に載っとる躑躅と睨めっこしよったら遅なった。…おいのチテキコーキシンに免じて許せ。そがんとじゃ足りんて言うなら、裏白瓔珞の蜜の味ば確かめた後にどがん味やったか教えてやっても良かぞ。

  ん、ちィと喋り過ぎたな、―――すまん。…気ィの向いたら又顔ば見せろよ、新。鈴蘭と山吹なんちゃらが咲いとるて言いよった場所、探検に行こうで。

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