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東方逃現郷
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18 :
ライゼス(創作♀)
2016/10/03(月) 18:11
「人里かぁ…うぅ、私達の格好、こんなに浮くとは思わなかった…。
こういう現代的な服って、調達する余地が無いわよね? あっちに見える呉服屋の着物っていうのも悪くないけど」
「そうだねぇ、用意するとなると自作とか、オーダーメイドになっちゃうかな。
まぁ安心してよ、幻想郷の製法だと、布地に強靭な芯みたいなのを埋め込んでね、
妖怪に襲われたりした時でも簡単には破けないようにしてあるから。それも妖怪の素材なんだけどね」
和服に髪留めやかんざしといった装飾、あるいは幻月のような薄地のワンピース風の服というのがせいぜいといった中で、
洋服というのはどうも、場違いな感じにさせられる。
しかも改めて見てみると、山道を舞台に駆けずり回ったからか、二人の手足や背中には、
木の葉やクモの巣、泥みたいな汚れがあちこちに付いてしまっていた。
その事も含めて、物珍しそうに、それでいて心配そうに人里の行き交う人々から見られていると思うと、二人揃って大きな溜息を付いた。
「少しは落ち着いた? 里の中に入っちゃえば、もう何か襲ってきそうな感じはしないでしょ」
「えぇ…うん。思ったより外の柵や門もしっかりしてたわね、肌のピリピリした感じも取れたわ」
アイリスに袖口を引かれて振り向きつつ、ライゼスもどこかぎこちないながら、ようやく頬を緩めて微笑を浮かべた。
多少、里の人から気を遣われている感じがあるとは言え、やっぱり人の住処、住宅地の中というのは安心する。
大袈裟かも知れないが、傷を負う事を覚悟しながらも無事に人里まで辿り着いた、その生の安堵というものは殊更に大きいと感じた。
「ここに来る途中で大きな川に掛かる橋とかもあったしね」
「人里っていっても、これだけ太い水源を引いて、ちゃんと水路も整備してあるんだもの、
これなら確かに人が生きられる環境って言えるわね。身の安全だけは保障されてて本当に良かった」
「なんって言うか、せっかく命の危機から逃れて人里に着いたっていうのに、味気ないコメントだなぁ…
感想がそんなだとパサパサと乾燥してるような心地になるじゃない! …無味感想。なんちゃって」
「あっははは、上手く捻ったね、私も笑いすぎで口の中乾いてきちゃいそうだよ」
「……いやあの、ごめんなさい」
ようやく団欒の空気を作り、3人で顔を合わせて談話を始めてみると、どこか凸凹、かなりバラバラな三者三様ではあったが、
同じ体験をした仲として、近しい距離に互いを認めているのをそれぞれに許容している、そんな雰囲気が感じられた。
「それで、さっきの人、校舎の中に入っていったけど…
けーね先生って言われてたっけ? えーと…どんな人なの、幻月」
「うん、上白沢 慧音(かみしらさわ・けいね)。幻想郷の歴史を紐解き、過去を鑑みながら、
残された人間を正しい方向に導く、守護の立役者…ってところかな。
私が幻想郷に来た当初…当時は幻想郷って名前があったかどうか分からないけどね、その頃から居たよ。
長いこと、人間を守ってるんだねー…それこそ数十年くらい掛けて。彼女も妖怪なんだ、驚いた?
でも、ちゃんと共存するスタンスを主張して、人里の皆にそれを認めて貰ってる。
まぁ、他の妖怪と比べて受け入れられ易かったのは、彼女のちょっとした体質もあるだろうけど…」
「よ、妖怪なの…それでも、さっき子供達と一緒に? 一体どうなのかしら、それって…」
「体質?」
「うん、まぁ。ライゼスは、接してみればすぐ分かるよ、きっと。
ただ、信頼を得やすい体質だったからとか、人間を守るって主張してるからって訳じゃない、
決め手はけーね先生の人格が良かったからじゃないかなー。私はそう思うよ」
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