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東方逃現郷
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19 :
幻月(東方旧作)
2016/10/05(水) 00:47
「……ああ、でも怒らせないほうが良い手合ではあるかも?
聞いた話だけど、体罰の頭突きはかなり強烈だって――」
「――何をしているんだ? わたしに何か用事があったんじゃないのか?」
促されたものの、やはり人里の様子が物珍しいのか、落ち着いたら改めて周囲の視線が気になったのか。
つい、軽い立ち話に興じてしまったため、再び先程の女性――上白沢慧音が怪訝そうな顔を覗かせ、三人は慌てて建物の中へと移動する。
考えてみれば、子供と遊ぶ予定をキャンセルさせているのに自分たちはのんきにお喋り、など怒られても仕方がない。
直前、幻月が言いかけていた言葉も、足を早めるのには十分な効果を発揮し、半ば雪崩込むように寺子屋の中へと場を移す。
応接、というほど立派ではないにせよ、相応に客間の体裁を整えた一室に通され、
とりあえず、と各々の前に湯気を立てる湯呑みが配られる。
自分のそれを一口含んでから――、改めて、僅かに警戒心を滲ませた硬い声音で慧音が口を開く。
「それで、わたしに何の用があって……、と聞くのは野暮かも知れんな。
そちらはともかく――後の二人は、外来の人間だろう?
なら、用向きは判らないでもないが――。まず、お前が何者かを聞かせて欲しいな」
「よくご存知――というか、服装見たら一目瞭然だよね。
で、質問に答える前に一応――、こっちがアイリス、で、こっちはライゼス。見た限り、ふたりとも外来人だと想う。
で、わたしは幻月。見ての通りの悪魔だよ」
「…そうなのか?」
「そうだってば」
――幻月の名乗りに。最初は頷きながら話を聞いていた慧音の動きが、ギシリと固まり、アイリスとライゼスはこっそりと顔を伏せる。
見ての通りも何も、どう見ても真逆にしか見えないその容姿からして、何を察しろというのかいう沈黙が落ちることしばし。
慧音がノロノロと再度口を開く。……余談だが、その視線からは既に警戒の色はほぼ消えていたようである。
「……で、その悪魔がなぜ外来人を連れてわたしのもとを訪ねてきたのかな?」
「ん、まぁちょっと――来た早々に妖怪とトラブル起こして襲われてるところに出くわしてね。慌てて助けに入ったのが、きっかけ。
で、あのまま放っといたらふたりとも此処に着く前に死んじゃいそうだから、此処まで連れてきたんだけど……、まぁボディガード?」
「――何らかの対価の要求は?」
「「いやまったく」」
「なん…だと…」
同時に、異口同音に答え、これまた同時に首を横に振る二人を見、続いて改めて幻月を見、沈黙する慧音。
幻月がなにかおかしなことを言っただろうか、と首を傾げたところで、慧音が改めて沈痛に口火を切った。
「……スマンが幻月、わたしは君のような悪魔を知らん――というか、悪魔という種族に全く当てはまらない。
わたしの知る歴史の限り、そんな悪魔は存在しないんだが――悪魔とはそういうものと思うか?」
「いやそう言われても、これでもれっきとした悪魔だし」
真顔で断じる慧音に、困ったように反論する幻月。――されど、その両隣で軽音に賛同するように頷く二人に、彼女はまだ気付かない。
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