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東方逃現郷
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ライぜス(創作♀)
2016/10/12(水) 16:26
「任せておいてよ、悪魔っていうのは古来から、契約とか交わした運命共同体の相手には
災いで生命力を消耗したりしないよう、結構甲斐甲斐しく身を守ったり加護を与えるものなんだよ。
今の私でも人間の『二人』くらい守れるってところを見せてあげるよ、何しろ悪魔だしね」
ここぞとばかりに再アピールを始めて羽も誇示するように広げる幻月。
その自信満々な言い回しの中で、ライゼスは驚愕したように幻月を振り返って表情を覗くも、
しかし萎縮するように肩を竦めて、視線を落とした。
「一緒に行くのはいい、アイリスが帰りたい気持ちは分かる、正直言うと私もそうしたい。
だけど、実際に私達が付いていったところで、助けたお礼に何が出来るの? 妖怪の対処とかは全部幻月任せ?」
「私はそれでもいいけどさー?」
「いやいや…えっとー…」
無性にやる気を出し始めた幻月の一言は全く先の展開に憂慮も不安も抱いていないような確固としたもので、
暗に悪魔の私が付いているから何があろうと二人も心配はいらない、大船に乗ったつもりで居て…と、
そういうニュアンスを主張するものだった。
言い換えれば虚勢である、だからこそ絶対と言い切れるような根拠はない。そう感じてしまう故に、ライゼスにとっては有らぬ不安を抱いてしまう。
「出来る事ならいくらでもあるでしょう、悪魔だって日常生活はするんだから、私でもそのお手伝いくらいはね」
「……そんなじゃ、ますます幻月に助けられる事ばっかりになりそうよ。
ただでさえ双子の妹を探さなくちゃいけないのに、いざ妖怪が現れた時に迷惑になるのは…
なんて言うのか、依存しちゃってるんじゃないかと」
「ライゼス…貴方ね、それで別々な方向に進んで、今後幻月に借りを返せるような機会は一体いつ訪れるっていうの?
借りを返すって言ってるけどそれは自分の為でもあるのよ、助けられた事をそのままにして、ただ幻月を見送るだけにも出来ないでしょ?
遠慮とか体面とか考えてたら、きっと永遠にこの人里から出られないままなんだからね!」
「そうじゃないって…、そのー…私達が付いていく上での一番ネックな部分から解決していけば良いって話!
幻月の代わりに妖怪を追っ払うまでは、一朝一夕じゃ出来ないかも知れないけれど、多少の援護をするだけの力や武器なら見付けられるんじゃないかと…
そういう意味で、まだ時期相応、って言いたいの!」
「あぁそういう」
「…コホン、そこまでにして貰っていいかな?思いのほか議論が長引きそうな予感がするからな」
大きな咳払いを一つして、三人の注目を集めた後で、慧音が話に割って入った。
人情家で積極的なアイリスと、慎重すぎるほどに先を見据えた理論派なライゼスでは、意見が真っ二つに分かれるのも仕方のない事だろう。
「傍から聞いていた限りでは、両者共に一理ある。この場の論点は、単に両者が何を重視し、何を優先しているかといったものに過ぎないが…
その答えが、『幻月と行動を共にする上で、最低限の出来うる範囲で非力さを補う』であるのに変わりないのなら、
きっとお前達は三人、助け合いながら旅を続けていける事だろう。
しかし、やはり旅をするのに余裕が無いようでは良くないな、今日のところは落ち着いて頭を冷やすといい。
その間に私が協力者に話を付けてこよう。いつ人里から出るにしろ、例え明日の午後に発つのであろうとも、それまでは待っている事だ」
ライゼスとアイリスは、それぞれが思い思いの複雑そうな表情を浮かべ、その助け舟にあやかる事を渋々承諾した。
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