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12 :銀色(創作/乱入)
2017/02/11(土) 15:22

こんなとこにいたのか、とあの日の記憶を思い出しながら筆を取ってる。
随分と埃を被っていたが、表紙をひと目見ただけでお前のものだとビビッと直感出来た俺を、今日ばかりは素直に褒めるが良いさ。
いや、それともやっぱ怒るかな? 乙女の日記を勝手に盗み見た上にこうして落書きまでしようってんだから、大層育ちの良いあんたからすると憤死モノの無礼かもな。
それならそれで、文句の一つや二つや三つや四つ、怒鳴り散らせば良いと思う。

などと書いてみたは良いものの、この落書きがあんたの目に留まる事はもうないだろう。
積もった埃がその証明。乙女の秘密に土足で上がり込む俺の大犯罪は、発覚する事なく迷宮入りって寸法だ。
つまるところ、これは何処まで行けども単なる落書きに過ぎないってわけだな。

俺は今も、以前と変わらず、だ。フラフラしながら“何か”をしてる――只管に“何か”をな。
いちいちしたためればどうにかこうにか不出来な冒険譚にはなるかも知れないが、ま、最終巻の刊行が何時になるかは今もって分からない。
“何か”……SOMETHINGの内訳は本当に多岐に渡るが、いや、こいつは別に意図的にそうしてるって訳じゃなく、完全に偶然なんだが……執事の真似事なんてもんは、あれ以来やった経験がねーな。
不思議なもんだ。

あんたはどうだろうな。きっと立派にお家の看板を背負って、お上品なブラウスを目一杯に腕まくりなんかしちゃって、今日もでけえハサミで布切れをずばずばと切り裂いたりしてんだろうな。
それともあえなく廃業の憂き目にでも遭ってるか? そりゃ、ざまあないって話だ、精々指を差して笑ってやろう。
何がどうであれ、元気ならそれで良い。

俺の足は常に前を向いている。
後ろ向きに歩くつもりは毛頭ない。だから、過去は過去であり、それ以上でも以下でもない。
思い出に呼びかけたところで、返事なんか返って来やしねえ、そんなもん誰でも知ってる当然の話だ。
だが……見かけちまったら、悪戯の一つもしてやりたくなるのも男心ってもんさ。

もし、何かの間違いでこの落書きを見る事があって、このページが気に食わなきゃ俺のファーストネームを唱えな。
破くなり真っ黒に塗りつぶすなり、お前の思うがままだろうさ。
とりとめないがこの辺にしておこう。長々書いて本当に冒険譚をしたためてやっても良いが、実を言うと仕事の最中だからな。

紳士的で模範的な執事兼ボディガードより、親愛なるアリシア・セレスへ。
あの日の選択に後悔はないが、今も極々々々々々稀に、お前の笑顔を思い出す。


追伸。
今や背が伸びたお陰で、あのスーツは丈がアレだ。

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