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七色花の視る先は【元:肖像画。】
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40 :伊/達/政/宗(1059bsr)
2012/05/17(木) 04:35

[懺悔]
俺には、人には言えない訳では無いが言い辛い過去がある。其れは誰しもが形は異なれど持っている物であるだろうし、だからこそ真の意味で理解出来るのは自分だけなのだろうと考えている。思い出したくない過去に種類や程度の差は在れど、不意に思い出して羞恥に転げ回る様な其れでは無いのは確かだ。だからといって、では其れを著せと言われたら戸惑ってしまう。どう扱ったら良いかが恐らく自身の中で定めきれていないのだ。過去に成りきれず完全に無視出来るモノでもない其れは、現れては俺を静かに引き戻していく。完全に戻れない事は承知の上で。此の件に関しては女々しいと言われようと残念ながら否定する術が無い。
俺には昔、愛した女がいた。
気立て良く見目麗しく、頭も賢く家事を難なくこなし、心の機微に敏感でありながら沈黙という優しさで俺を包み込んだ。正に良妻賢母である女は抱き締めれば頬を染め貫けば愛らしく鳴いた。匂い立つ肌はしっとりと良く手に馴染み、貪っても貪っても足りなかった。やや子を望んだ。俺は自身の餓鬼にお前を取られたく無いと駄々を捏ねた。女は優しく笑っていた。贈り物をした。女は驚いた後泣き、笑っていた。いつでも笑っていた。優しかった。最期まで。
俺から別れを告げた。愛が無くなった訳では決して無かった。俺は秘密を持つ事に疲れた。苦しかった。身勝手だった。女は俺の秘密を悟っていた。受け入れた。俺達は無関係に成った。為ったんだ。幾日か過ぎ、今は廃墟である彼の地に言葉が増えていた。女の言葉だった。秘められていた想いだった。恨みが、無かった。悲しみと、俺の未来を祈る言葉だった。嗚呼、俺は本当に愛されていたのだった。謝るしか無かった。上げる資格も無い悲鳴を書き殴った。拳は包まれた。女だった。俺は酷い真似をしたのに。愛されていた。愛していた。俺は女と愛し合っていた。
四つ季節が巡った。其れでも、俺は苦しかった。踏みにじった愛を大切にしていた。申し訳無かった。区切りを付けたかった。零れた言葉は掬われた。女だった。一年、俺に縛り付けられていた。其の日解けた様だった。俺の背中を押し消えていった。
其れから幾つ季節を数えたかどうも曖昧だ。なのに、押された背中の感触が未だ消えない。想いが消えない。愛し合った時間が消えないってのはこういう事かと最近解った。良い思い出に成る日は遠くでは無い気がする。漸くだ、本当に。
其れでも名前は呼ばない。
ただ幸せを、祈っている。

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