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折原臨也
2017/05/02(火) 09:54
# 花束を捧げた話。
今年も彼に会いに行った。俺の手にナイフじゃなくて花束なんて珍しい取り合わせだよねぇ。波江さんの汚物を見るような眼が印象的だった。何その顔?花粉症なの?どうでもいいけどさぁ、花を見てそんな表情するって女としてどうかと思うよ。
と言う訳で此処からは山も無ければオチも無い話だ。折原臨也の平凡なプライベート話。退屈な時間を過ごしたい変わり者は続きをどうぞ。
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> 毎年5月2日、不思議なことに雨は降らない。
今年も例に漏れず澄んだ青空だった。その霊園は丘陵地にあって、位置によっては海を望むこと出来る。えーっと、確かあの方角は東京湾だったっけ。
いつ来ても緑と優しい風が心地好い場所だ。流石俺、今日のコートは短めで正解だった。
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彼の墓は色とりどり沢山の花に囲まれていて、不謹慎な例えをするなら宛らカーニヴァルの様だった。天使のオブジェだったり、明らかに周りから浮いてて墓らしくない墓だなと今年もそんな印象を抱く。
毎年毎年、忘れられる事なく人が訪れる。こんなに賑やかだとオチオチ寝ていられないんじゃないかな?あはは。安らかに、と願う人間の足音が煩くて眠れない。これはこれで災難なものだねぇ。
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花束を手向けて掌を合わせる。墓石に刻まれた彼の名前が、朧気で靄の掛かっていた記憶を優しくも強引に鮮明化させた。彼はもう存在しないんだった。
改まった言葉は苦手だから一言だけ残してその場を後にした。
# 今年も来たよ、じゃあまた来年。
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追悼の時間は終わった。
さぁ、今夜は池袋にでも行こうか。非日常から日常へ戻る為にも。でも何だろう、何かが足りない。あの場所に置いてきた筈なのに指先に残る違和感が拭えない。
そうだ、シズちゃんにも花束を贈ろう。生臭く濡れたスカーレットの花束を。
やっぱり俺は、
> 花束よりナイフが手に馴染む。
# 愉しみに待ってろ、化け物。