Entendre** - ⊂*本Ⅲ*⊃

23 :平和島静雄(DRRR!!)
2010/12/30(木)　19：29

#2010/08/11(水)　05：50

その顔引っ叩いて別れてやると俺が怒鳴った後、手前は泣いて部屋を出て行った。
二度とその面見せんな、っつーのは本気でもあった。
あいつの腑抜けた面は嫌いだ。うぜぇ、気色悪い、――…気色悪いくらい、俺に都合の良い存在だ。

手前の言葉、何割が本音だ？
その数え切れねぇ位の好きと愛してるは、どれだけが本当だ？
嫉妬に狂う手前と、浮気を咎め無ぇ手前、
俺を盗られる事を必死で嫌がる手前と、諦めたみてぇに笑う手前。

なあ、どっちが本当の手前だ？

なあ、俺は本当に、お前にとって必要か？
ああ、うざってえ、うざってえ。
失くしても平気だから、そんな風に穏やかに居られるんじゃねえのか。
俺を失う事は、本当はお前にとって、そう痛い事でも無いんじゃねえのか。

なあ、都合良すぎるだろ。

こんな喧嘩をするつもりじゃなかった。
別れるなんざ微塵も思ってなかった。
只手前を失う事が酷く怖くて、俺が何かをできるこの短い期間に、出来る限りの予防線を張っておきたかったんだ。

「それって一ヶ月過ぎた後続くのか」
なんて、人に言われてみっともなく揺らいじまってたんだ。

自信が無ぇ。一ヶ月、たったの一ヶ月、それでも、一ヶ月。
その間にお前は俺の手の中から消えちまわねえか？
怖いんだ。

なあ、頼むから俺だけを待って、待って待って、一ヶ月待って、寂しい思いをして
俺の前から消えたりするような事をしないでくれと。

手前を追っ払った部屋の空気がうざったくて、
奴の香の残るベッドを叩き壊した。
煙草も切らしちまってて、更に苛ついた。

コンビニに煙草を買いに行った深夜、公園のベンチで寝こけてる馬鹿野郎を見付けた。
阿呆だ、こいつは。

顔には涙の跡が残ってる。
吸わねぇ癖に、足元に茶色いフィルターが落っこちてる。
アークロイヤルスイート。

>大馬鹿野郎。

俺のいつもの味はアメスピのメンソールライトだ。

でも、俺の味だと教えた甘い煙草を持って、こいつは泣いて、深夜の公園で寝こけて。

馬鹿野郎、本当に馬鹿だ。

だから今俺はこうやって、この馬鹿が起きるのを、朝焼けに染まる空を見上げながら隣で待っている。
こいつはよく寝るから、中々起きねぇかもしれねえ。

でも、待ってねぇと駄目だと思うんだよ。
伝えてねぇ事が、山ほどある。
寝ないで待ってっから、
早く目ぇ醒ませ。
もう泣くな。

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