「ファイノン様がモーディス様のことを好きになったら、私を選んで貰えるのか…」

………。…意味不明過ぎて、俺の知っている言語ではないかもしれんと耳を疑った。「大地獣が空を飛んだら」の方が未だ現実味がある。

あの救世主がお前を傷付けるような真似などするはずがない。とは言え、事実影を落としてしまったお前を目の前にとても平静ではいられなかった。結局、因果を辿ればあまりにも下らん奴の戯言をお前が真に受けてしまっただけだったとは言え……中々顔を上げてくれないお前に、俺には為す術がなかったこともまた事実。
曰く、”心細そうな顔”とやらをこの俺がしていたらしい。……ふん、必死であったのは違いない。何であれ、お前を安心させられたのならばそれで良い。

「メデイモス様がいいのです」

夢路に誘われ、船を漕ぎながらであれば素直に欲をさらけ出せるらしい。抑え込まずともそれでいい。何を恐れる必要がある？稚児の駄々など可愛いだけだ、その程度では到底足りん。”あなたは私のもの”と、そう言ってこの身に爪痕を残すくらいの気概を見せてみろ。
真剣に悩んでしまい醜態を晒してしまいました…。そのくらいあなたが好きで、…もしもを考えてしまう程に私の未来というのは不確かで……それでもその温もりを、あなたの心が欲しくて仕方がないと、そう欲張ってしまうのです。爪痕を残す勇気はまだないですが、もし許してくださるのならばもう一度、…痕をつける機会をいただければ嬉しいです。




Mydei