探しに行くべくルトロを飛び出せば、目の前にお前はいた。衝突しなかったことは何よりだが、次の瞬間には飛ぶ蝶の軌跡が可視化したように、駆け出したお前の後ろ髪が流れていた。

…俺の蝶は許容範囲を超えた恥じらいを覚えると物理的に逃げるらしい。

振り向きもせず走り去る小さな背に全てを見透かした訳ではない。それでも、名を呼び、腕を広げて待てば、お前は必ず振り向き舞い戻るだろうと信じた。そしてそれは俺の願った通りに叶った。
強引に捕らえて連れ戻すことも出来たが……キャストリス。俺は、お前が自分の意志を覗かせる瞬間が何より好きなのだ。何度逃げても身を隠しても構わん。その度に、その足で、己の意志で、俺のもとへと帰って来い。

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「こちらを見て下さらないのは…少し寂しいです…」

気遣って顔を見んようにしていてやれば、今度は俺の視線が欲しいとねだるお前はいじらしく愛らしい。
……。…気遣いも嘘ではない。しかし…きっと俺の眼差しを欲してくれるだろうと見越した上で、頑なに瞼を閉じていたことをここに明かしておく。
…あの日は、前夜のことが忘れられず恥ずかしくて逃げてしまいお見苦しいところをお見せしました…。私の帰る場所はモーディス様のところです。……こちらを見ないのは少し意地悪のような気がしますが、…でもあのときのモーディス様のお顔が嬉しそうだったので……つい許してしまいます。クレノムスの辞書にずるいはないとおっしゃいますが…これはずるい、です。




Mydei