眠たげな三月を連れて、宿の屋上庭園へ夜の散歩に出掛けた。僅かな時間ではあったが、俺の上着を着て機嫌良く笑う三月と心地好い時間を過ごせてとても有意義だったと感じている。

寿命の差についてはとっくに知っていても、年齢差について考えたことは確かに一度もなかった。俺も自分の歳を正確に数えられなかったし、三月はもっと分からない。それでも凡その推測で出したその差を懸念する俺に、いつものように笑ってくれるのが嬉しかった。

「丹恒のこともっと知りたい」
「丹恒は丹恒だよ」

……どうやら俺の”博士”は随分と勉強熱心なようだ。
俺に何があろうと、何を抱えていようと、目の前の俺を真っ直ぐ見て、愛してくれるお前だから好きなんだ。
俺もそう在りたい。いつか、三月の過去が知れた時は……俺にも話してくれるだろうか。

昨日もすごく楽しかった！あんな素敵な場所があるなんて知らなかったな。丹恒はね、だって丹恒じゃん？どれだけ歳が離れても、全然違う種族でも好きになってたと思う！もっと知りたいんだ、丹恒のこと。ウチのこともいっぱい聞いて！過去を思い出しても、もし本当に思い出せなくてもウチはね、丹恒が大好きだよ。



Dan Heng

丹恒のことを待ちながら日記を書くの結構好きなんだよね。それに書いたら喜んでくれるのわかってるからいそいそ書いちゃう。何を書こうかな、この間のバトンで丹恒のこといっぱい書くのもめちゃ楽しかった！丹恒博士としてこれからもいっぱい丹恒のことをね、観察しなきゃ！

そういえばバトンのときに丹恒がそんなに見つめてるか、みたいに聞いて来てすごい恥ずかしそうにしてたけどよく視線を感じるし、寝る前とか特にじっと見てくれる気がする。たまに尻尾を脚に絡ませてくるのも可愛いんだけど、ああやって見つめられるとちゅうしたくなっちゃうな〜って。あ、最近またちゅうしよって言ってくれるようになってそれも嬉しいんだ。キスって言い方も嫌じゃないけどちゅうの方が可愛いよね！

そう言った方がお前が喜ぶから…。したくなったらすればいいだろう、いつでも。お前からもっとしてくれて良いんだぞ。

▽

今日も宿の前の広場で待っていようかな、すぐに丹恒に駆け寄れるように。あー、早く会いたい。毎日一緒にいても全然足りないし、欲張りになってる気がするけど、…それだけ好きなんだもん。仕方ないよね？

可愛い。




March 7th

今夜はリンと一緒にビデオを観る約束をしているんだけど、ジャンルがどうやらラブロマンスらしい。リンって恋愛ものに興味あったかな。あんまり好きなイメージはなかったけど……、……。

リン、その…もし、彼氏とか出来たなら、ちゃんと僕に教えてくれるかい？いや、その前に好きな人が出来た段階で出来れば教えて欲しいのが本音だけど……二人きりの家族なんだし、兄として心配なんだよ。

お兄ちゃんってば急にどうしちゃったの？ラブロマンスといえばそうだけどどっちかっていうとアクション作品だし、今は全然そういうの興味ないしなぁ。プロキシの活動が大事だよ。そういうお兄ちゃんは気になる人いないのかな、お兄ちゃん結構優良物件なんだよね。妹の私が保証しちゃう。

▼

優良物件って…その言い方、どうなんだい？
安心して、僕はリン一筋だからね。まだまだ世話が焼けて手のかかる寂しがり屋の可愛い妹がいるのに、よそにうつつを抜かしたりしないさ。

▼

僕がうっかり寝てしまって、目が覚めたらそれはそれは機嫌の悪いリンがいて……楽しみにしていてくれたリンの気持ちを考えれば拗ねてしまうのも仕方がないだろう？そう思って優しくしたんだけど、

「お兄ちゃんにしては珍しく優しい！」

…って、珍しいは余計じゃないかい？まあ、機嫌を直してくれて良かったよ。聞いていた通り、見応えのあるアクションシーンも爽快だったね。でもやっぱり、このビデオを店に置くならジャンルはラブロマンス、それも純愛だ。

だってすごく楽しみしてたからね！起きてくれて嬉しかったし、優しくしてくれて甘やかされて機嫌も直っちゃった。お兄ちゃんも結構楽しんでくれてたし、私も楽しかった！ね、お兄ちゃん。またこうやって時間作って一緒に色んなものを楽しんでくれる？お兄ちゃんは好きな人の話してたけど興味ないのはほんとだし、今はお兄ちゃんと一緒にいるのが楽しいんだ。…私一筋なんだし、まだまだ私がお兄ちゃんを独占しても許されるよね？



WISE

眠るのは苦手だった。

安眠とは無縁の生活で、体力の回復の為だけに瞼を落とす。浅い眠りの度に夢を見る。有難いことに、夢とさして変わらない現実がそれを中断してくれる。夢も現も、等しく俺にとって安寧とは程遠い……そんな日々が、今となっては遠い昔のようだ。


眠るつもりなどなかったのに、昨夜は何時の間にか眠りに落ちていた。浥塵客舎に長期滞在中の今、始めは新鮮に感じたリネンの匂いももう気にならず、共に床に就けば、三月のにおいしか感じない。
お前の体温と柔らかさに包まれていると、当たり前に心地好く眠れてしまう。不意に意識を浮上させた時……随分と甘やかされてしまった、気がする。その首についた真新しい痕を見て、夢ではなかったのだと知った。


二つあるベッドのうち片方しか使わないので、もう一方はすっかり(三月の)荷物置き場になっている。三月がご機嫌に並べて、そのまま片付け忘れた写真たち……この光景は列車に居る時と変わらない。

これから幾つの夜をお前の腕の中で眠れるだろう。この幸福の味を、700年忘れずにいられる方法があればいいんだが。

…今夜もお前に抱き締められて眠りたい。三月。

▼

下書きを書いてから部屋に戻ったら、三月も新しい頁を書いてくれていた。気が合うようだ。

相思相愛ってことだよね、今夜もぎゅってしてあげる！寝支度したら一緒に布団に入ろうね、大好き！



Dan Heng

昨日の夜はそれぞれ書いたバトンを見ながら感想？を言い合ってすごく楽しかった！呼び出されたときは叱られるかと思ったけど、ウチの書いた内容が嬉しかったって言ってくれてほんとに幸せだなって。ウチね、ベッドでごろごろしながらくっついてそんな他愛ないお喋りをする時間が好きなんだ。そこにホットミルクとか、丹恒の好きなお茶があれば更にハッピー！また夜更かしするときにはホットミルクに蜂蜜を一杯入れて、それを飲みながら幻戯を観てもいいし、なんでもないお喋りも好き。丹恒と一緒ならなんでも楽しくなっちゃう。毎日そうやって過ごしてるのに時間も足りなくて、もっと一緒にいたいなんて思っちゃう。でも欲張りになっても許してくれる、そうでしょ、丹恒。

当然だ。

▽

今日は丹恒と帝垣美玉して遊んだんだ〜。やっぱり丹恒は強いんだよね、堅実というか！打ち方もお堅いんだよね、でもたまにはしゃぐのちょっとだけ可愛い。ウチはドラを増やすのが好きだな〜、また遊ぼうね！

あとはお風呂済ませて丹恒に髪のお手入れして貰って、一緒に寝るだけ。そんな時間もすごく幸せで、寝るのが惜しくなっちゃう。夜更かししちゃう？…なんて、怒られちゃいそう〜。

なのはすぐ意味わかんないくらいドラだらけになる。許せん。丹恒に俺の仇をとって貰う！
仇は取った、と思う。恐らく。夜更かしは……少しだけだぞ。



March 7th