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21.glyph.
 ┗19

19 :獅/子/神/敬/一/(J/B)
2024/08/10(土) 22:30

今一番欲しかったもの

>安静にしているように
と言われたから最初の一週間くらいはほとんど運動らしい運動をせずに過ごした。そうするとチリチリ走っていた痛みも灼熱感も落ち着いたので、その後は構わずに普段通りのトレーニングやらランニングやらをしていた。足の突っ張ったような痛みや違和感はぼちぼちだったが日に日に良くなって、たまに酷く痛んだがそれも薬を飲んだら良くなった。時間が経つほどにほとんど何も感じないほどにはなっていたが、時折思い出したように痛むことがある……というようなことを問診で話したら深く溜息を吐かれた。曰く、安静という言葉の意味を知らないのか、このマヌケは……とのこと。
いや、実際そんなずっと安静を貫けねぇだろ。仕事もある、賭場にも呼ばれる、友人たちが押し寄せる。身体は数日トレーニングをサボったらなまるし、そもそもじっとしているのも怠い。大体骨が折れたとかじゃねぇんだからそんなに安静にしてなきゃなんねぇのか?言い返すと重ねて溜息をつかれたが、気にもとめなかった。痛み止めと栄養剤を追加して、疲れたら無理をしないように、いつもより意識して休憩を入れるように、体調の変化を感じたら報告するように、そんなことを重ねて言われた。どこか痛々しいものを見るような目だったと、今になって思い出している。

昨日の夜は散々抱き合って、抱き潰すまではないも無理をさせてはいて、だから朝になったらあれこれ世話を焼いてやりたかったし、週末でも構わず仕事に出る相手を病院まで送り届けてやりたかった。けれど朝早く相手が起きたのにも気づかなかった。いや、腕の中から消えたのには気づいたが、恐ろしいほど身体が重くてどうにもできなかった。どれくらいそうしていたか、家を出る前に身支度を整え終えた先生が体温計を脇に差し込んできたが指一本動かせずにいた。数字としては微熱だったが、そうはいっても平熱が高いので微熱というのも微妙なくらい。けれど身体が動かなくて、背中側に座っている先生を振り返ることもできなかった。
>そのままゆっくり休んでいろ
>タクシーを呼んだので心配いらない
>飲み物を枕元においておくから、水分だけ取りなさい
そうして柔らかく頭を撫でてから部屋を出た先生を、見送るのもままならなかった。

次に起きたときにはもう昼に近かった。いつもならとっくに活動してる時間だというのに怠くて仕方なくて、しばらくそのままでいた。遮光カーテンを掛けた部屋は薄暗くて時間が分からなかった。なんとか枕元の端末をとって時間を見て、そしてメッセージの通知がないので放りだした。言いつけを守ろうとペットボトル入のスポーツドリンクを少し飲んだ。うっすら汗をかいている感じはしたが暑くはない。おそらくまた熱もない。部屋の空調がよくきいて少し寒いくらいだった。肌掛けを肩まで引き寄せる。何か食べたほうが良い気がしたが、腹も減っていなければとりあえず動けそうになく、また横になった。あれほど眠っていたのに恐ろしく眠くて、次に目を覚ましたのはもう夕方だった。

夕方前に先生から連絡が来ていた。
>ゆっくりできているか
>そういう日もある
>たくさん眠れていい子だ
そんなに力いっぱい甘やかさないでくれ。情けない、不甲斐ない気持ちでぐずついて、優しくされると泣いてしまいそうだった。別に病気でもないのに一日時間を無駄にしてベッドに丸まって、それで良いはずねぇのにな。考えると心細くなる。こうなった原因を、ホントは知ってるが見ないふりをしてる。
>病名が必要ならつけるが
>処方も出そう
>あなたに必要なものは
>休養と、甘い果物と、温かいスープと
>そして私だろう
万遍なく視診をし、丹念に触診し、的確に問診をして、そして間違いなく正確な診断を下して処方箋を書き綴る。受け取りに行けそうにない、と返事を送れば笑ったかもしれない。最近は宅配サービスもあるらしいぞ、と返事が来る。戯れる元気は出てきたと伝わっているらしかった。


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