ご利用前に必ずINFOをご一読ください。
※色見本  ◇WHITE ◇WHITE2 ◆BLACK
スレ一覧
381.「切り傷」
 ┗10

10 :夏/油/傑(呪/術/廻/戦)
2025/03/09(日) 21:14

 彼らには、とうに愛想を尽かしている。今さら彼らに差し出せる愛着はなく、与えてやれる恩愛なんてものもない。私がどれほど朗らかな微笑みを浮かべて、柔らかに言葉を重ねて、親切に振る舞おうと、彼らは持ち前の無神経さでこちらの領域を踏み荒らし、踏みにじり、踏み潰してくるだろう。
 ──彼らが嫌いなんだ。憎らしく、気色悪く、堪えがたい。彼らの紐解かれた思考に耳を傾けること。彼らのひとみに映る景色をともに眺めること。彼らの色鮮やかな生に、指さきを寄せること。その行為が私の神経を蝕み、尖らせ、次第と腐敗させてゆく。
 彼らが、許せない。許せないし、許さない、許したくもない。君にも、わかるかい。私はただ、私のすべてをもって、彼らのすべてを否定したいということを。

 好きな言葉を訊ねられて、君はなにを答える? 改めて問われると、すぐには思い浮かばないかな。己が生きる上で基軸にしている言葉と言い換えてもいい。
 ──好きな言葉という定義に対して、私には明確な回答がある。「真実」と、「本統」だ。基軸、指標、あるいは信仰。このふたつの言葉には、私なりの、これらの思い入れや意味合いがある。
 私の世界に存在するのは、有象無象の事実じゃあなくて、唯一無二の真実がいい。その世界の在り様は、だれかの正統ではなく、私だけの本統であってほしい。そして、私の選ぶ行為は、君たちの世界にとって確信犯的で構わない。
 すまない。寝際に語るにしては不相応な、気難しい話だったね。ちょうど月明かりも遮られたことだ、一緒に眠ろう。


[削除][編集]



[戻る][設定][Admin]
WHOCARES.JP