ご利用前に必ずINFOをご一読ください。
※色見本  ◇WHITE ◇WHITE2 ◆BLACK
スレ一覧
448.そのひともじを
 ┗13

13 :道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/23(水) 15:12



念の賭け方。

俺の可愛いひとは腕の中でまだ眠っている。
二度寝を繰り返しているのだろう、昨日一昨日は雨に誘われて随分眠そうにしていた。普段かなり遅くまで俺に構っているから、非番の日によく眠る姿を見ると安堵する。……と言うと、また僕が道誉と過ごしたいからやっている、と言われてしまうかな。分かっていますとも、だから止めも咎めもしない。例えそれが明け方近い時間であってもだ。
これでも言葉は選んでいるんです。例えば今までの俺であれば、先のそれを「普段かなり遅くまで俺に付き合わせているから」と告げた気がする。言葉の響き程には卑屈な意図はなく、ただ俺が話したいと思って寝かし付けるタイミングを見失うからな、と言う程度のものではあるが……あなたはきっとそれを嫌う。

そう思うのは、同じだけの感情を向けられている確信があるからだ。一方に偏るでもなく天秤に掛けてフラットになる、もしくは自分の方が少しばかり重くなるだけの想いを返してくれる。それならと俺は此方の皿へもう少し感情を乗せてみる。するとあの方はまた笑って、じゃあ僕ももう少し乗せてみようかとその胸を開く。まるで鏡映しのように。
だから俺のあの方は一方的に感情を捧げているような言葉を好まない。それが続けば先に待つのは破綻だと、俺達はよくよく思い知っている。色々なものを見てきたのは俺もあの方も同じ、と言う訳だ。

ずっと諦念を抱えて来た。俺達は神のようでいて本質は刀であり、付喪神と名がつくばかりの妖物でしかない。よって無償の愛なども持ち合わせてはいない。それは神仏の範疇だろう?まあ、稀に人でもそれを持ち合わせた奇特なものが居るがねえ…。愛したならば愛されたい。その点、諦めは心を守るのに丁度良いのさ。過度の期待は禁物、リターンの配当は少ないものと考え、投資は程々に。見誤れば痛い目に遭う、これはビジネスに於いても同じだな。
いつ離れても、いつ離す事になっても受け止められるだけの諦めは常に持つようにしていた。……それがどうも上手くいっていないと気付いた時の俺の衝撃と言ったら!諦め方を忘れるなど、考えた事もなかったのでね。愕然としたものだ。
同じだけを与えられる事にすっかり浸かってしまった現状を恐ろしいなとは考えるが、特に後悔はしていない。諦めを忘れた以上、万が一の何かが起これば俺は傷付くのだろう。恐らく、今までに無い程。
とは言え高いリターンにはそれに見合うリスクが付き物だ。ギャンブルに身を窶す者の気持ちが分かった気がするな?安寧だけを手にしていては欲しいものは得られない。それに、俺のあの方は同じく自分の心を賭けて俺に手を伸ばしてくれている。なら良いかと思う部分があるのも確かだ。死なば諸共、と言ったところかな。
賭けた先にあるのが金一万両の名刀なら、俺の心ひとつ安いものだ。そうだろう。



[削除][編集]



[戻る][設定][Admin]
WHOCARES.JP