スレ一覧
┗
448.そのひともじを
┗15
15 :
道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/26(土) 23:04
約束と折り返し。
約束がある。細かなものを挙げれば幾つも。 それは先の約束であったり、何かあれば必ず話す、互いに相手の目が届かない場所には遊びに出ない……というような関係性を維持する為のものであったり、色々と。その中でたったひとつ、俺があの方に約束してくれと強請ったのがこれだ。
喧嘩をしていても拗れても、必ず俺に抱えられて一緒に眠ること。
幸いな事にあの方へ手を伸ばしてから今日までの間、俺達に擦れ違いや喧嘩の類が起きた事は一度もなく。いや、何事かあったとて喧嘩になるかどうかは疑わしいがね。俺もあの方も激昂して声を荒げるタイプではない、寧ろ…そうだな。胸の内にある怒りを堪えて可能な限りに言葉を選び、落ち着いた風を取り繕って対話を試みようとする性質のような。 言葉数の多い二振りだ、拗れる手前のうちに言葉を尽くそうとするのは想像に難くない。何をどうして拗れるかは今のところ浮かんでも来ないが、何が起こるかなど分からないからな。起死回生の布石は打っておきたい。大袈裟だと思うかい?とんでもない、俺にとっては死活問題だとも。 耐えられないだろうからねぇ。互いに言葉を尽くして、それでも絡む糸を解けなかったら?その時、どちらかが相手を思って言葉を吐き出すのを一度諦めてしまったら。普段言葉を惜しまないからこそ致命的に長引くだろう。そう予想出来てしまった。だからこそ今のうちにと強請ったのさ。どんな拗れ方をしようとも腕の中に抱えた温度と心音で、その寝顔で。俺は意地を張るのが馬鹿らしくなって、拗れているのに嫌気が差す。それでいい。
それにしてもまあ、長くもないが短くもないこの日々を穏やかに過ごせているのは僥倖だな。 ──昨日で折り返しを過ぎた。なに、俺が最初に想定していた期間の話さ。 手を伸ばすタイミングを見計らっている最中、思わぬチャンスが転がって来たのを良い事にノープランで飛び込んだ。後先など考える余裕もなく、だ。俺らしくもないと今は思うが、渦中に在るうちは得てして我が身を顧みる事など出来ないものだろう? 長期戦の構えで目標期間を定めていた。俺は容易くあの方に落ちたが、彼方が俺に落ちてくれるには時間が必要だと思っていたのでね。実際は御覧の通りだ、早々に俺の手を掴んでくれたあの方は日々俺の膝の上で可愛いを更新してくれている。忘れていたが、我等が祖は私情で本丸に顕現するタイプの思い切りのいい方だった。 「焦らさんで良かったと今更ながら思うよ、こんな幸せな毎日を過ごせるなら一日でも早い方が良い」 その台詞だけで何でも出来そうですよ、俺は。
|
[
削除][
編集]
[
戻る][
設定][
Admin]