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448.そのひともじを
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道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/30(水) 22:57
雄弁は銀、沈黙は金。
口数の多い質ではある訳だが、沈黙を嫌っているかと問われればそうでもない。時にそれは……特にビジネスの場に於いてはひどく有効な手段となる。黙っているだけで此方の要求が通るような事も儘あるのだから、使わない手はないな。 さて。恋仲にするならば沈黙が苦にならない相手を、というのはよく聞く話だ。成程、理に適っている。人の子の一生は短いようでいて長いものさ、その間ずっと喋り続けるという訳にもいかない。黙していても、共に過ごす空間に居心地の好さを感じられる相手を探すのが最善の選択だ。……と言いながら、俺とあの方の間に沈黙が居座る事はそう多くはないがね。俺にだけは言葉が溢れて止まらないと言ってくれるあの方同様に、俺もあの方へ言葉の雨を降らせている。それでも足りないと綴り始めた結果がこの場所だ、黙っている暇は然程ないのさ。
言わぬが花、とも言うがねえ。俺のあの方は解語の花だ。言葉を解し、会話を楽しめると分かっていてそれを愉しまないのも勿体無いだろう。互いによく似ているがゆえに心情を予測するのは容易いが、だからとそれに胡座を掻くのも違う。 言わなくとも分かる事は幾つもあるが、言わなくとも分かるから何も告げなくていい、なんて事は一つもない。 これは俺があの方と過ごすようになった当初から掲げている心掛けのようなものだ。少しの齟齬も生みたくないのでね、リスク回避とも言う。僅かな不安や疑念ですらあの方の心に芽生えさせたくはない。俺の腕の中を絶対的な安全圏として過ごして頂きたい。黙するのはそれが完成してからでも良いか、とそう思っている。それに、分かっていても聞きたい言葉も多いものだ。……愛しい声で紡がれる睦言であるとか? 今の所は、俺の腕で眠る姿を見ている時に黙るぐらいで丁度良い。その時ばかりは俺も、可愛いを呑み込むことにしている。
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