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448.そのひともじを
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道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/05/03(土) 03:01
鋒を埋める。
ンー…畳むべきか迷う所だな。まあ少々の艶事に関して注意書きはしてある、不得手ならばこの時点で引き返す事を勧めた上でこのまま綴るとしよう。
人としてのかたちを保って日々を過ごしていても、俺の──俺達の、かな?その本質は刀だ。権力者の威勢を示す為のシンボルとなったとしても、武器としての矜持はどの刀とて大なり小なり持ち合わせているものだろう。 では武器とは何か。突き詰めてしまえば人を傷付け殺める為のもの、という事になるだろうねぇ。だからとは言わないが、敵を斬り捨てる瞬間。本体が肉に食い込むその一瞬。それにひどく高揚する。 恐らくこれは本能のようなものだ。そもそも俺は暴力は好まない質でね、誰かしらを痛め付けて悦ぶ趣味もない。…本当だとも。だからこそ、あの方に対しても溺愛と言って差し支えない振る舞いをしている筈だ。既に跡目を譲った隠居の身とは言え、軽々に扱って良い方ではないのも大きな理由ではあるがね。そんなものは後付けに過ぎない。俺は俺の愛しい花をいっとう大事にしたい、それだけさ。 そう、ほんの僅かもあの方を傷付けたくはない。大事に大事に囲って、どろどろに甘やかして。そう思うのは本音だが……もし、あの方に傷を付けるのならば。それは俺でなければ、とも思う。
例えば、口付けの痕。あれは傷に含まれるか否か。鬱血痕だ、外傷による内出血と大差ないと言えば情緒には欠けるがまあ、そうだな。これは山程残している。 では、噛み痕は?これは傷に近付く。痛みを与えているのも分かってはいるがね、困った事に嫌がられないのさ。歯牙があの滑らかな皮膚に食い込む瞬間、肉を断つのと同じ高揚に見舞われる。あの方が残った歯形を見て嬉しそうな顔すらしてくれるものだから、すっかり止め時が分からなくなってしまった。 それから肉を割って鋒を埋める、ならばもう一つ。今のところ物理的な傷は付けていない筈だが、これが一番〝本体が肉に食い込む〟に近いものだろうな。勿論、昂りはする。何よりもね。あの方の男士としての矜持を曲げる行為だ、興奮しない理由がないな?甘やかな声が俺を誘うその時、肉を貫く瞬間。ああ俺は刀なのだなと思い知る。この為に肉の身体を得たのだとすら。 結局のところ、大事にしたいと嘯くその口で俺は己をあの方に刻む事を強請っている。そう、それを赦すあの方を見るのが俺の楽しみでね。ハッハァ!こういう所が茹で上がっている、と言われる所以だろうな。
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