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448.そのひともじを
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道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/05/10(土) 23:08
光陰矢の如し、
おや、此処も認め始めて一月になるか。早いものだ、あの方と過ごしていると時間の流れは主観に大きく依存するものだと実感する。互いに戻ってからの時間は一瞬で過ぎ去り、離れている間は夜までが遠いと内番の終わりを待ち侘びる事すらあるのだから単純で笑ってしまうな。時間は誰にも等しく流れていると言うのに。 丁度一月前、あの方から貰った手紙を契機として日記を綴り始めた訳だが──まだこれを見せてはいないものでね。今月は俺から手紙を届けた。返書と呼ぶには随分と拙いものさ、あの方が綴る言葉の美しさには到底及ばない。それでも、ほんの僅かあの方の眦と唇が綻ぶのなら。パーフェクトだ、俺の目的は達成されたと言って良い。 「……うちの子がこんなにも可愛い」 ……それは良かった。利口な番犬の顔をしている甲斐もあると言うものだ。
期間にしてそう長く共に過ごした訳ではないが、互いの任務と睡眠以外ほぼ全ての余暇を費やしている関係上、それなりの時間を二振りで重ねているとは思う。…にも関わらずまだ足りないと強欲で居られるのは幸福な事だろう。それが俺の一方的な感情ではないというのも含めて。 例えば眠る間際、或いは任務の合間に互いの時間が上手く噛み合っただけの少しの間が終わるその時。しょんぼりと眉を垂らすあの方が好きだ。犬猫の耳が生えていればぺたんと垂れているのだろうと容易に予想出来るその顔で、また明日、また後でと紡ぐそのいじらしさについ表情が緩む。 そう言えば恋仲になる前、あの方の部屋を初めて訪れた日。眠る間際口にされたのも「また明日」だったのを覚えている。明日を願う事を許されたのだな、と感覚的に理解して、何故だか酷く安堵した。今にして思えば其処で安心するのはそういう事なのだろうと理解も出来るがね、あの時はまだ分かっていなかったのさ。後にそれが、翌日も俺を留める為に告げた言葉だったと知った時はこの可愛いひとを如何してくれようと思ったが……あの方は今も毎日同じ言葉をくれる。 ほんの少し先の約束ほど嬉しいものはない、来月も同じように過ごせる事を祈るとしよう。
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