ジークフリートさんが帰ってきてから二人で荷造りしたんだけど、足りないものは現地で買い足せば良いか、って思ったら本当に簡素なものになっちまった。水着と着替えと、あと一応救急セットと、って詰めてたらスーツケースひとつで終わっちまった。買ってきた水着とかシャツとか見せたりしてわいわいしてたら夜も深けてきた。荷造りも終わって二人で一緒に寝て、次の日に備えようってことでキスして寝た。
遠くの方の空が真っ暗で、嵐が来るらしい。慌てて起きて支度して、ジークフリートさんも起こして、火元の確認とか窓に鍵かけたか、って確認してる間に準備した荷物を持ってもらって、財布と家の鍵を入れた鞄……ジークフリートさん鞄持ってないの?旅先で良いのあったら買ってプレゼントしよっと。鍵を閉めて、それから急いで定期便の出ている港へ。
人でごった返してて、みんな嵐が来る前に出発しようって考えで俺たちと一緒だな、なんて笑いながら発着場のロビーで順番待ちをしている間、フェードラッヘから出稼ぎに行く人、旅行に行く人、地元に戻る人、様々な理由でここにいるんだな、って思ったんだ。
街の中だけじゃ見ることの出来ない景色だよな、って改めて感じたんだけど、顔見知りの人達にヴェインちゃんなんて話し掛けられちまって、ジークフリートさんが隣に居るからちょっと照れちまった。親しみを込めて呼んでくれてるって分かるから、なんか擽ったい気持ちになるけどちゃん、かぁ。ランちゃんもこんな気持ちなのかな。呼ぶのやめないけど。
俺達の番が来て、チケットを渡して船内で過ごすための船室の鍵を受け取ってからアウギュステ行きの定期便に乗り込む。これから俺とジークフリートさんは、仕事も依頼も何の関係もない、本当にただの観光旅行としてアウギュステに行く。
ただのジークフリートさんと、ヴェインとして。
楽しみ過ぎて足元が疎かになって、乗り込む時にタラップに足引っ掛けてちょっと転んだのは秘密な。
今日は付き合って5ヶ月の記念日。明日から二人でアウギュステに行くから、今夜は二人で荷造りしたりして過ごすつもりなんだけど、今から楽しみすぎてソワソワしてる。
早くジークフリートさん帰って来ないかな、待ち遠しいぜ!
寝顔を見つめながら改めて思うけど、綺麗な顔してるよな、って。ジークフリートさんはいつも兜を被って顔が見えないけれど、長い髪も相俟って綺麗すぎてドキドキする。
今は目を伏せて静かな寝息を立ててるけど、目を閉じてても格好いいのなんなんだろうなぁ。ずっと見てても飽きないってこういう事を言うのかも。……起きたらキスがしたい、って強請ろう。
朝起きて、ジークフリートさんが出掛ける時間まで抱かれてた。頭の中が蕩けたみたいにもうなんにも考えられなくて、このまま出掛けなければいいのに、ってずっと思ってた。
昨日はなんとなく寝付けなくて、深夜二時まで起きてて、眠れる音楽とか聞いててもなんかうるさくて結局眠れなかった。ジークフリートさんの寝息を聞いて、ようやく落ち着いてそれから眠れたけど、朝早いからもう眠たい。今日もジークフリートさんが帰ってきたら一緒に過ごしたいから、帰ったら少し仮眠でもするかな。