遅い季節とアルケス
今日は開拓の旅を少し休んで、自室でひとりゆっくり過ごしてる。色んなことを考えてもなにひとつ答えなんて出ない。ただあいつのことが好きなことと、あいつのために俺ができるのはなんだろうってぐるぐると。俺と違って自立した考え方だし、きっと深く干渉せずに過ごすのがいいのかなとか。でもそれはあまりに今更で、俺たちは深く関わり過ぎたのかも。

一緒にホットケーキを焼いた時、俺のほうがいつも適当だから不格好でさ。なのに美味しそうって褒めてくれる。優しいところが好きだ。雪山にいる動物を見に行ったら、ふわふわしていて可愛いだとかでずっと釘付けになってる姿が愛おしかった。すぐ持ち帰ろうとしてたけど、俺がいるだろ？って思ってた。
隣を歩いた時、そっと手を繋いでくれた手の体温。寝る前は熱いくらいにそれが高くなって、でも離したくないなと思ったから、代わりに身体を寄せて眠った。俺はなかなか寝付けなかったけど、ずっと幸せだった。
この間泣きながらチルの意味がわからない〜ってグズって見たらあいつは笑ってくれて、それが実は内心すごく嬉しかったよ。もっと笑わせたい。俺といて楽しいって思われてたいな。
俺がゲームにばっかりうつつを抜かしてたら、かなり寂しがらせちゃったのは申し訳なかったけど、そこまで好きでいてくれてるんだなって改めて実感した。もっと大切にしなきゃって。でも上手くいってはないのはほんとごめん。

いつ振り向いても、どこを向いたってこの一年あいつとも思い出しかなくてさ。もし失ったらと考えただけで地に足がつかなくなるような心地がする。
好きだ、愛してる。お前のこと、本当に大好きだよ。例え一方的になったとしても変わらない。こんなに想っていても俺たちは別々の場所で生まれて育ってきたから、今はほんの少しの邂逅だっただけで、また離れるのかもしれない。いやそうなりたくないけど、めちゃくちゃ嫌だけどな。
あいつのこと幸せにするのも、不幸にするのも俺がいいし、他の誰かに1ミリだって取られたくない。もし俺と別れたらもう二度と誰とも付き合わないでほしい。…あー俺重過ぎる男かも、わかってた。重いのってどうしたらやめられる？無理だよな、はい。諦めろ。会いたい。

あいつにまたわがままをたくさん聞いてもらって、愛おしくて堪らないって態度でそれを叶えて貰いたいけど、最近はそういうの困らせてるんだろうなって感じる。
愛してくれてるのはわかってるよ。こんな俺とずっと一緒にいてくれて、付き合ってくれるし。いつも感謝してる、ものすごく大切で失いたくない。

でもわからなくなるんだ。走ってるうちはいいのに、ふと立ち止まると迷い込んだような心地になるというか。きっとこれは俺だけなんだろうな。仕方ないとわかっていても、どこか足りなくて。
妥協でも日常でも、執着や諦めでもなくてさ。これが恋とか愛とかいう、不確かでもどこか弾むようなものだって思いたい。

最近ひとりで観た映画のせいかな。戻れない過去が眩しくて、変わっていくことに焦ってる。それをたぶん、理解されないことにも。いつだってお前の言葉が欲しい。満たされはしても、ずっと満足しないんだ。

静謐のはざま
幾つもの星を、多くの人を、とめどない感情を見てきた。縋るような祈り、どこか諦めた願い。俺にひとつひとつを掬い上げることはできないけど、せめて見届けられたらって。
でも、どれだけの声を聞いても、…聞くほどに、日の当たる部屋の中で過ごす静けさだけは失いたくないと感じる。なあ、約束を交わそう。これは契約じゃないよ。

お前はいつも俺より早くに眠るんだ。夜中、眠そうな姿を眺めながら話しかけると小さく唸る。何度か続けて、震えた空気に溶かした後で俺もまぶたの裏に夢を見る。
いつもはうるさいくらいなのに、絞り出される少し高い声が思わず笑ってしまうほど愛おしい。起きたお前はそんなことはひとつも覚えてないと、首を傾げてぼんやり微笑む。

夜の続きの朝と昼、次の夜のはざま。誰の声がしなくとも、伝わる体温があたたかいから。寂しくなんてない。形にするならきっと、まるくて、少しだけ歪だ。この時間の続きが途切れることがないよう、手を握ってて。



夜は眠れるかい？
Flumpool

最近あいつの鳴き声が俺の名前になってる。意味もなく穹さん穹さんって呼んでくるけど、返事をしても鳴き止まなかったり、そのまま俺の名前オンリーの替え歌してきたりもする。知能レベル下がってるよな。
俺もサンポ〜ってとりあえず呼ぶことあるけど。あいつよりはマシだよ。まあ正直そんなとこも可愛い、俺の次に。