猫になりたかった日今朝は濁った水溜りを頭から被ったような気分だったんだ。水を含んだ服はどうにも重たいし、風も強いものだから寒くて笑えない。その上、喉に張り付いた言葉は上手く出てきやしなかった。だから、俺にはこういう場所が必要でさ。
俺のことを好きで堪らないせいで、俺が落ち込むと俺よりも落ち込むあいつのために。少しでも、笑っていてもらうために。どうしようもなくなった時、空っぽなのに誰もほどけないような、相反した星の中に向き合うところ。
傷付けてもいいなんて、そんなことはないんだよ。人の心って消耗品なんだ。平気だなんて笑っても、全然平気じゃない。ぜんぶを愛してほしいなら、俺の思うように抱き締められてくれるよな。
尖った角をやすりにかけて、丸く柔らかくしていく。水の流れがぐちゃぐちゃの土砂からいずれ綺麗な砂を生むとして、そこまで変わったものは同じものなのかな?あるいは俺が水そのものだとして、優しく流される内に少しずつ削られていくあいつは本当にそれを望んでいるのか?
でも、どうなったって離れられない。ずっと俺のそばにいて。どこにもいかないで。俺だけに笑いかけてよ。こんなこと俺が頼まなくとも、お前からそうしてくれるだろ。
わたしの線香
羽生まゐごと花譜