日記一覧
24時間先輩
 ┗13

13 :宍戸亮
2016/10/01(土) 09:48:59

#学園祭

——それから何事もなく終わる、わけがなかった。

「鳳くんがいたから声かけようと思って。」
「鳳くん、ちょっといいかな?」
「鳳くん、手伝って欲しい事があるの。」
「鳳くん」、「鳳くん」…

江口の接近はそれからも続いた。
それも決まって、俺と長太郎が話している時だ。

あれは数日前のことだ。
俺が長太郎と朝イチの特訓を終えた直後、江口は声を掛けてきた。恐ろしいタイミングの良さだ。まるでその時を狙っていたかのように。
長太郎がタオルを取ってくるまでの、俺と江口が2人きりになった時、思い切って会話を切り出した。

「長太郎に用があったのか?」

遠回しに探りを入れるなんざ激ダサだと自分でも思う。
直接聞きたいこと山の如し。
だが長太郎が絡むなら話は別だ。
俺が下手に動けば、長太郎を傷つける事になる。

「あ、いえ、ちょっと姿を見かけたから……」

うん??姿を見かけたら思わず突撃するぐらいの???
…いや、考え過ぎだな。最近岳人に鳳馬鹿と認定されて久しい。
いくら愛おしく思っていても俺と長太郎は他人同士。人間所詮トイレでは1人。
俺ももう少し冷静になるべきなのかもしれねえ。

「氷帝のテニス部って怖いイメージがあったから、実行委員に任命されて正直心細くって。…でも、鳳くんが優しくしてくれるから。」



「よく鳳くんに相談に乗ってもらったりしてるんです。だって鳳くん、穏やかで話しやすいし。」

ああ、そうだな。

「知ってます先輩?鳳くんって女子にも人気なんですよ。」

知ってる。

「そりゃそうですよね。あんなに優しくてカッコイイんだから。」



「だから、何で私なんかと話してくれるんだろうって…」

いやお前が来るから応えてるだけだからな???

「…あの、宍戸先輩と鳳くんって、本当に仲がいいですよね。」

……、
アァン!?!?!?
ついに俺の頭は爆発した。

何か?仲が良くて、てめーに不都合があんのか!?!?
あったりめーだろうが。時速200キロ超えのテニスボールを素手で掴んだことのねぇようなドシロートと比べんじゃねぇぜ。キャリアが違うんだよ、キャリアが。
決まって俺と長太郎がいる所に現れるのは俺たち(?)を引きはがそうとしてるに違いねえ。
偶然を装ってはいるが大したタマだ。
んなこと言っても一ミリも離れねえからな。
何故かって!?お前みてーなケダモノから長太郎を守る為だよ!!ヤロー!!!!

「…はは、そうか?まあ、ダブルス組んでるからな。」

表面上は努めて冷静に振舞いながらもまさに俺の心は一触即発。
このメス猫!!!と叫ばなかったことが唯一の救いと言っていい。
その本心を知っている者は誰もいないだろう。

>「宍戸さん、お待たせしました!」
>「あれ?どうしたんですか。顔色が悪いですよ。宍戸さん。…宍戸さん?」

<続>

[削除][編集]



[戻る][設定][Admin]
WHOCARES.JP