# 切原赤也という男を分析する

柳さんが交換日記内で自己分析レポートを認めていたと耳にしたので、切原にも「お前も自己分析すればいいんじゃないか？」と声を掛けたんだが…案の定「俺には無理！頭煮詰まってくっから！フットーする！！」とかふざけたことをほざいていたので、仕方がないから俺が手伝ってやることにする。ハァ…面倒だが仕方無い。
柳さんのように上手く出来る気がしませんが、やれるだけやってみます。柳さんには…その、先に謝罪しておきますが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
↑どれも俺のデータにあるものだが、改めて他者から提示されると俺以外からもそう見えているのだと分かって面白い。

まず切原は、考えることが下手だ。（後ろから「早速貶してんじゃねーぞ日吉！」と聞こえてきたが俺は知らない）
柳さんと話している時の切原は、脊髄反射で物を申しているように思う。ただ、その返事は単調であったり機械的ではなく、切原自身、その時に感じたり思ったりしたことをそのまま述べている。だから故にその時々の感性や体調、感情によって反応が変わっているんだろう。例えば柳さんからの「可愛い可愛い」との投げかけを受けて、普段なら強気に「そりゃどーも」だとか「へへ、嬉しいっス！」と言い返せる筈なのに、昨夜は恥ずかしそうに「…………」と黙りこくっていた。この反応から、切原は感情によって反応が左右されるということが分かる。
↑赤也のこういうところが可愛い。

あと、切原は人誑しだ。これは柳さんにも指摘されていた部分でもある。これは不思議と俺には当て嵌らないので、切原が持つ特有の部分のように思う。
元々切原自体、先輩相手には人懐っこい。同学年の俺相手には辛辣だし口も悪いが、先輩相手には…確かに厚顔無恥な部分はあれど、甘えるのは上手だし、好意を口にするのは得意なように見える。それが柳さん相手には如実に現れていて、出逢った当初から随分とアピールをしていたと聞いた。（本人は全くもって自覚無しだったのも合わせて本当に酷いと思う）
俺から見るに、当初から切原は随分と柳さんを慕っていたし、最初こそ甘えるのは遠慮していたが、一度甘えてしまえば強請る言葉を口にするのも容易くなっていたように見えた。あの時、流行病で倒れて気が滅入っていて、一番に頼れる相手と頭に浮かんだのが柳さんだったと聞いた。その頃より前から、きっと切原の中で柳さんは特別な存在に昇格していたんだろう。羨ましい限りだ。
切原は無意識に、時に意識的に態とらしく自分の愛らしい部分を武器にして、柳さんに迫っている。柳さんもそんな切原に手を焼いていることだろう。まぁ…柳さんのことだから上手くやり過ごしているんじゃないか。心配はいらないだろう。

…と、こう切原について分析し、振り返ってみると…、……俺とは正反対だな。…、いや、自分と比較する為に他者分析を行った訳じゃないんだが。
切原に「オマエも跡部さんに素直になっちまったらいいんじゃね？」とニヤニヤしながら言われたが、俺の知ったことじゃない。無視を決め込んだ。

日吉、お前も素直になったっていいんだぜ？この強情が切原に触発されるとも思わねーけどな。お前がここで意地を張るなら、この俺が素直にさせてやるよ。

……。まさかコレに跡部さんから返信があるとは思わず、数日間何を言おうかどうか迷ってしまい大変悔しい思いをしています。
ハァ…口にしたからには絶対に有言実行する人ですからね、アンタは…困った王様ですよ。
この俺を変えられるのであれば、やれるものならどうぞ。期待しないでおきますから。