日記一覧
春暁の微睡み
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32 :手塚国光
2016/11/22(火) 16:43:55

小箱を開けば独自の世界観が訪れ、奏に心を奪われる。
精巧に創られた宝石箱は、彼奴の瞳を輝かせるに容易であった。

発祥の地はスイスと聞き及ぶ。
更に一世紀の後、ドイツで新たな姿を与えられた。
嘗て貴族や王侯の嗜みとして用いられた其れは、現代に於いて庶民にも親しまれる安価な物へと発展。
隣にて微笑む彼奴に、俺の表情も和らいだ。

*

閨の語らいは一夜の夢と知りつつ求めに応じた訳は、一つに癒しを欲したからだろう。
或いは俺自身、日常生活に変化を望んだ所為か。
眠る前に彼奴の囁く声を受け入れ、そして朝を迎えた。

遠出を望む相手に従い、訪れた先は坂上のオルゴール館。
ハンドベルに似た柔和な音色から、澄んだ響きの鐘音、ストリートオルガンまで、多彩な機材が揃い踏み。
俺達は東洋の皇帝を冠する一台が甚く気に入り、暫くの間その音色に耳を傾けていた。

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