日記一覧
┗11.泡沫の烏と青葉(145-154/223)

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154 :及川徹
2019/03/01 20:44

2017/11/27 20:48

11 / 27 帰省の話2

土曜の朝。
俺の部屋に布団二組敷いてアイツと寝るのは、鍵が掛けられる部屋じゃないとダメだと実感。
寝る時はちゃんとそれぞれの布団で寝た筈が、朝気付けば一緒に寝てた。
いつものクセ、習慣、習性、無意識。慣れって怖い。
そんなトコに突然早朝に、俺が来てると知ってた猛がいきなり乱入。
ふすまを勢い良く開けた音で飛び起きた。
心臓が口から出るかと思うくらいビックリした、多分寿命縮んだ。
部屋に鍵が欲しい。高校の時も思ったけど、切実に思った。

で、朝早くから猛に引っ張り出されて三人でロードワークに出た。
猛は今、青城でバレー部に入ってる。
そのせいか走る道は青城でのロードワークの道順そのもので、
隣で走るアイツが何だかしみじみ楽しそうにしてんのが笑えた。
っていうかお前達、おにぎりめいっぱい食べた直後に良くそんなに走れるね。
及川さんはひとり、脇腹痛いわ息上がるわでヘバってたよ。
ヘバった俺を見て笑ってたアイツはあとでシメた。
その後は昼までバレー。
猛の「とおる、サーブ」にデジャヴ感じて笑った。
あと、アイツが猛に「及川さんがどんだけ怖くてスゲー人なのか」を訥々と語ってて、
その猛のきょとーんとした様子が可愛くて、理解してもらえないアイツの拗ねた顔が可愛くて
また笑った。
そんなの未だに思ってるの、多分お前だけだよ、バーカ。


午後はアイツの家に移動する前に、岩ちゃんのトコへ突撃。
俺と岩ちゃんがベタベタする(主に俺が一方的にだけど)事をアイツは面白くなさそうで、
また唇尖らせて複雑そうな顔してたのが可愛かった。
でもこればっかりは仕方ない、岩ちゃんと俺の縁は切っても切れない。
家族みたいなもんだからね。
でも「影山にワガママばっか言うんじゃねえぞ」とか「影山悲しませんなよ」とか、
言われたのはアイツの事ばっかだった。
岩ちゃん、俺の心配もしてよ!!

あーでも、やっぱり少しだけ淋しい。
向こうに行ったら今までみたいに気軽に会えないし、気軽にアイツの試合観にも来れないし、
そう頻繁に電話も出来ないだろう。
ずっと一緒だった俺の一部みたいなものだったから、離れるのが少しだけ淋しい。



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153 :及川徹
2019/03/01 20:43

2017/11/27 20:48

11 / 27 帰省の話1

24日金曜の夜から、アイツとふたりで初めて一緒に帰省した。
俺自身、久し振りの実家。
出来れば祝日だった23日から帰ろうなんて言ってたんだけど、
社畜の俺が金曜に休みなんて取れる筈がなかった。
なんで、金曜の夜から週末を実家方面で。
海外に行く前の、最後の帰省。

金曜夜の仕事後に駅で待ち合わせて、一緒に新幹線に乗った。
前日の休日に結構ドギツいセックスをしたから丸一日身体がダルくて、
(いつものマウントの取り合い意地の張り合いだった。相変わらず俺達は甘くない。)
新幹線乗ってすぐに俺はアイツの肩に凭れて熟睡。
アイツは隣で平気で駅弁食べてた、ムカつく。


まずは俺の家へ宿泊。
事前に連絡をしておいたら、アイツがお気に入りな俺のお母ちゃんは
実の息子が帰るって言うのにアイツの好物のポークカレー作って待ってた。
何か癪に障るし解せない。またしばらく会えなくなる息子に対してこの仕打ちか。

多分、お母ちゃんは何となく気付いてるんだと思う。
俺がアイツを連れて来た理由、アイツと一緒に海外に行く理由。
アイツがお風呂に入ってる間話をした生活の、日常の話や海外へ行く為の話。
「迷惑掛けないのよ」とか「あんまりワガママ言わないのよ」とかは言われたけど、
否定も拒絶もせずに聞いてくれた事にスゴく感謝してる。
直接的な話こそしなかったけれど、多分気付いてる上で何も言わず見守ってくれる、
お母ちゃんって存在は強いんだなって思わされた。
俺は、この家に産まれられて良かったって思った。
ありがと、お母ちゃん。

とりあえず、アイツが呼ぶ「徹さん」は何かキモチ悪い。
愛を囁く時、俺を抱く時に呼ばれる「徹」の声が
日常の中にあるって言う違和感が背中をぞくぞくさせた。



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152 :及川徹
2019/03/01 20:42

2017/11/22 12:45

11 / 22 昼休み

アイツが、俺の寝顔の写真を撮り貯めている。
何とかどうにかアレは消せないものか。
恋人のスマホに自分の寝顔が、なんて微笑ましいと普通なら思えるだろうが、
ついもしスマホを落としたりしたらどうするつもりなんだろう。
一緒に写ってる(アイツの腕の中で俺が寝てる)ものもあるのに。

昨日の朝、アイツが甘えるみたいにしてきたのが可愛かった。
しばらくゆっくりシてないからお互い溜まってるみたいで、
アイツはその欲を露わに、朝から隠しもせずに見せつけて来る。
及川さんが欲しいです、と痕を付けたり噛み痕を付けたりしてくる。
それが何となく、ただのキスマークじゃなくて、
獲物を捕食する前のマーキングみたいに見えて、興奮する。
アイツのものになりに行く前の準備、みたいな。
俺だって、仕事行かなくていいなら朝から晩まで一日中食われてたい。


相変わらずアノヒトは、俺に甘い言葉を投げては誘惑してくる。
「俺の方が幸せにしてあげられるのに。」
「俺のトコに来れば、何不自由なく暮らせるのに。」
「お前を好きなの、昔からずっと変わってないよ。」
でも俺は、甘い水より苦い水でもアイツを選ぶ。
何処までもバカで真っ直ぐな、アイツの隣がいい。
例えばあの口が言う「好き」が嘘でも、バレーの為でも。


今週末、実家に行く。
多分俺、緊張してるんだな。何か怖い。
総てを曝け出す気にはなれないけれど、それでも覚悟は要る。
アイツと共に海外に行くと、言わなきゃいけないんだ。
家族に、周りの人に、岩ちゃんに。
あー…岩ちゃんに気軽に会えなくなる距離か。
何か、小さい頃からずっと一緒にいたから、それが一番怖いかも。
どんだけ岩ちゃん好きだよ、俺。



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151 :及川徹
2019/03/01 20:42

2017/11/16 12:45

11 / 16 昼休み

週の頭に、ついに引っ越しをした。会社のある駅を挟んで一駅先。
この新居で一ヶ月程度生活をしたあと、俺達は海外へ行く。
まだ慣れない新居での生活は戸惑うばかりだし慌ただしいけれど、
アイツとふたりでなら何とでもなると思っている。
不安がないワケじゃない。
でも、手を引くのがアイツならそれでいい。
結局は、離れられるワケがなかったんだ、最初から。

行く気がなかったのはホントで、でも離れる事が嫌だったのもホントで、
どっち付かずで決めきれなかった俺は、簡単にアイツの腕に絡め取られて
一緒に行く事を決めてしまった。
俺の事を幸せにしろ、退屈させたら即帰る、なんて言いながら、
例えもし不幸になったとしても自分が決めた事だし、
退屈だからってホントに帰るとは思ってない。
一緒に行くと決めたなら、俺もちゃんと腹を括るよ。
アイツが最高の選手で居続けられるように。
俺といて良かったと思って貰えるように。

(これも真偽は分からないけれど)海外行きの事でウチの会社に来た時、
今月出向してきているアノヒトに遭遇したらしい。
どうやら色々言われて気にしているらしい。
宣戦布告されようが何だろうが、俺はアイツに付いて行くって決めたんだから、
何も怯える事はない筈なのにね。
時々どっかでアイツは弱い。弱いって言うか、何かたまに自信家じゃなくなる。
いっつも、トスに対してみたいに俺の事に対しても自信家でいればいいのに。
常時それだと、へし折りたくなるけど。多分。

そんなアノヒトは、俺に対してはいつもと変わらないスタンスらしい。
「結局あの年下彼氏君に付いてくんだって?」と、あのいつもの笑顔で話し掛けて来た。
今朝だって、真新しい歯型と赤い痕が付いた俺の首筋を見て
「俺ならお前に瑕ひとつ付けないで優しくしてあげるのに。」と笑っていた。
「もし気が変わって戻って来るなら、俺のトコにおいでヨ。いつでも優しく迎えてあげる。」
なんて甘言を口にして、アノヒトはまるで悪魔の誘惑みたいな人だと思う。
そんな誘惑にノる程、暇してないし隙もないけどね。
俺はいつでも、あの愛しいクソガキの事で手一杯だし、いっぱいいっぱいだ。

昨日呼ばれた上層部の会議での事、まだアイツに話せてない。
俺の周りはホントに恵まれた環境だと思う。
まだ向こうでも俺は働けるんだと知ったら、
今朝やたら甘えただったアイツは独占欲を見せるだろうか。
それとも純粋に、喜んでくれるんだろうか。
どっちにしても可愛いとしか思わないんだろうな、俺は。
自分の事を主張するように、毎日赤い痕を増やしていくアイツが愛おしくて仕方ない。



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150 :及川徹
2019/03/01 20:41

2017/11/10 12:51

11 / 10 昼休み

先週、顔を合わせればアイツの一人暮らしの話とか海外行きの話とかで、
少しだけ家の中の雰囲気が悪かった。
まあ、原因は俺のせいだったんだけど。
それでもアイツは折れもせず諦めもせず、結果、俺が根負けした。
結局、元の鞘。いや、元にも収まらない結果か。
一人暮らしは場所を移しての二人暮らしになり、海外にも行く事になった。
なかなか決心が付けられなくて遠回りをして遠回りをして、
周りを固めれば離れる事を決められると思っていた俺の思惑は、
あっさりアイツの強い言葉に負けたワケだ。
一生好きかもしれない相手にあんなに強く求められて、
断れる程の意志の強さを持てる方法があるなら知りたいくらいだ。
俺は結局、アイツの言葉に弱い。

そうこうして連休が過ぎて日曜に俺が根負けして、気が抜けたらしい。
月曜、起きたら壮絶に喉が痛かった。
そこからズルズルと風邪をひいた。
連休明けの忙しい日に何してんだって自己嫌悪。
自分の身の回りの事と、仕事の事は別なんだから、体調崩すなんて有り得ない。
そう腹を立てた俺を、アイツは俺の代わりに許してくれた。
そうやって全部許して受け入れて、それでも俺が好きだって言う。可愛いって言う。
アイツは多分、どっか可笑しいんだと思う。
もっと可笑しいのは、俺の方なんだろうけど。

これから、やらなきゃいけない事が山積みだ。
体調崩してる場合じゃない。早く治さなきゃ。



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149 :及川徹
2019/02/21 21:18

2017/11/02 02:22

11 / 02 就寝前

今夜は、アイツが遠征で家にいない。

昨日からアノヒトがまた、年末のイベント関連でウチの会社に出向してきている。
火曜は俺の部署が忙しすぎてロクに話せなくて、
でも何か見透かしたみたいな顔で出会い頭に「喧嘩別れでもした?」って笑顔で訊かれた。
喧嘩もどきはしたけど、別れてはいない。
から、笑顔で否定したらアノヒトの指が唇に触れて、納得した。
金曜の夜、唇を噛むなとアイツがブチギレたから、わざと噛んだ場所が切れて腫れていた。
それの跡が、まだ唇に残っていたんだろう。
確かに、喧嘩して叩かれて切れたように見えなくもない、なんて妙に納得した。
頬を叩かれたのはホントだけど、その腫れは土日でどうにか引いたし。

今日は普通に顔を合わせた。
項の切り傷がまだ残っていて、それを見られて「何してンの、君達」って笑われた。
どんなプレイしたのって訊かれても、未だかさぶたもどうにかくっ付いたその傷跡の通り見たままで、
具体例出したら即岩ちゃんに告げ口されそうだからそこは言わなかった。
大丈夫なの?って片目細めて訊かれた顔は、ちょっと普通に心配してるようだった。

でも、誰にも言いたくない。
あの日の夜の事は、俺とアイツだけの秘密。


離れたくない。一緒にいてください。
そんな風に毎晩口にしているアイツは、随分とあの日から疲れているように見える。
それでも言い続ける言葉は、義務感で言っていない?本心から言ってる?
それから、俺がこの部屋からいなくなる事に気付いているようにも見える。
アイツが国内にいる内は、引っ越しは無理かもしれない。
どれくらい離れれば、俺じゃなくてもいいんだって気付くだろうか。
一ヶ月一人暮らしをしても、逢える距離にいたらきっと今と変わらない。
一ヶ月国内でひとりで暮らして、一ヶ月向こうでひとりで過ごしたらどうだろうか。
まだホームシックみたいに、俺の事を気にするだろうか。
それとも、新天地でのバタバタで俺の事なんて忘れるだろうか。
二ヶ月なら?三ヶ月なら?
自ら言い出した「一ヶ月のブランク」で、アイツは俺以外の選択肢がある事に気付くだろうか。
そのまま、俺を忘れてしまったりするのかな。
それならそれでいいのかもしれない、俺はそれを望んでいるのかもしれない。
でも、離れたくないとも思う。
矛盾してる。
どうしたらいいんだろうか、俺は。


「俺を選んでください。」
「迷わず俺を選んで欲しいです。アンタが、必要です。」
切実な瞳に、頷いてしまいそうになる。



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148 :及川徹
2019/02/21 21:17

2017/10/31 13:40

10 / 31 昼休み

アイツが国内にいるあと一ヶ月、一人暮らしをするようになりそうだ。
今まで高校を出たらそのままウチに転がり込んで来たから、
した事のない一人暮らしをしたいのだと言う。
俺と釣り合う為に。

それを聞いて俺は、その間に引っ越しをしてしまおうかと画策している。
知らない内にこっそり引っ越して、アイツが海外に行くのを見送ったら、
今いる場所からあっさり消えてしまいたいと考える。
いつもと変わらず生活しているように見せて、そっと消える。
まるで、及川徹なんて最初からいなかったように。

アイツは、未だに俺に海外に一緒に行って欲しいと思っているらしい。
俺は、それでも多分行かない。一緒にはいけない。
仕事も辞めて、地元にでも一旦帰ろうと思っている。
それか、誰も俺の事を知らない土地へ行くか。
仕事を辞めるか否か、そんな迷いに頭を悩ませているけれど、
やっぱりアイツが可愛らしくて愛しくて、最後の一歩が踏み出せずにいる。
可愛らしくて愛しくて堪らない子。
ソイツの幸せの為に俺は、この手を離す決心を早くしなきゃいけないのに。
絡めた指は、最後の最後まで離せそうにない。

この前の金曜の事、アイツは後悔しているらしいけれど。
俺は、好きな奴になら壊されても何をされてもいいと思っているんだ。
それよりも、少しでも離れる方が今はツラい。
ここで離れたらもう二度と、逢う事もなくなるのかもしれないのに。
笑顔の裏で何もかも処分して、アイツの背中を見送ったら、もう二度と。


離れたい、離したくない、好き。好きだよ。



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147 :及川徹
2019/02/21 21:17

2017/10/28 06:17

10 / 28 明け方

俺達は、ホントにどうしようもない。

互いに、傷付け合いたいワケじゃない。
それでも、傷付けながらしか進めない。
互いに互いの幸せを探してるだけな筈なのに、いつも道を間違える。
生き方が不器用なお前と、お前に不器用な俺。

でも、好きなんだよ。幸せになって欲しいだけ。
ホントに俺達は、どうしようもないふたりだね。




朝、仕事に行かせたくないとぐずったお前も、
夜、お互いボロボロになりながら愛してると告げたお前も、
お前の泣き顔も、総てが愛おしい。

歪んでいる自覚はある、歪ませてしまった自覚もある。
でも、それならそれでいいと思った。
俺のせいで歪んでしまったアイツが、
俺が願うからじゃなくアイツの意思で俺を殺したいって言うなら
それはそれでいいかと思ってしまった。
痛みとか目眩とか苦しいとかの意識の一番奥の冷静な頭で、
それはそれで幸せだろうと思ってしまった。
結局は、出来なかったけれど。
お前の泣き顔の、何よりも可愛いこと、いとおしいこと。

言ってしまった「好き」は多分、もう戻れないって証拠なんだろう。
明確な別れを、唐突に自覚した夜だった。
多分もう、終わるんだろう。こんな歪んだ愛情の関係は。



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146 :及川徹
2019/02/21 21:16

2017/10/27 19:26

10 / 27 会社帰りのカフェ

やってしまった。
最近、こうやって言い合いになる事が増えた。
お互い焦っているのが分かる。
ホントは笑って見送ってやりたいのに、本心がそうはいかせてくれない。
アイツの幸せを願いたいのに、結局不幸にしそうになってるのは誰でもない俺だ。
俺が腹を括れないせいで、アイツを不幸にするのは嫌だ。

「俺も巻き込む覚悟がお前にあるとは思えない。
 お前は結局、そう言いながら俺の言うことを聞いちゃうんだろ。バカみたいに。」
文字だと余計に冷たく見えるけれど、文字で良かったのかもしれない。
直接投げる言葉だったらきっと、俺の本心が透けて見えてしまうから。
俺の言う事なんて聞かずに、強引にでも手を引いてくれたらいい、なんて。
女々しい、バカみたいだ、バカは俺の方だ。


「俺の事、不幸にしてでも自分が思う幸せが欲しいっていうなら」
打ち込んで消そうとして送ってしまったメッセージのこの先、
俺は何て打とうとしたんだろう。
「俺の手を引いてよ」?
違う、きっと「俺の事を殺してよ」だ。
俺は、俺と一緒にいる事で不幸になるお前なんて見たくない。
それなら、いっそ。


これから帰って俺は、ちゃんといつもの通りに笑えるだろうか。
いや、笑う。ちゃんと笑う。



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145 :及川徹
2019/02/21 21:15

2017/10/24 03:19

10 / 24 就寝直前

先週も散々一緒にいて、いつものようにくだらない話をいっぱいして、
でも少しだけ突っ込んだ話をした。

俺にとってはアイツの幸せが大切で、その為にアイツを手離す覚悟をしている。
俺といると言う事は、それだけでリスクを背負う事になるから。
アイツのバレーが好きで、アイツの事が好きで。
だから、どっちも大切で、どっちも譲れない俺の大切なもの。

「俺のこと、大事ですか?本当に恋人としてですか。選手として、だけじゃないですか」
「俺はアンタじゃねぇとダメです」
「俺、絶対ェアンタの事手放しませんから。」
それ以外にも、たくさんたくさんの言葉を貰った。
胸が痛くて、ツラくて、苦しくて、溺れそうなほどの言葉と想いを貰った。

アイツは、俺がこの先どの選択肢を選ぶか、もう気付いている。
でも俺ももう選択肢はずっと前から心に決めていて、
お互いに譲れないものがあって、それが違うだけの事。
アイツは、俺とバレーが。
俺は、アイツの選手として安定した幸せが。
どっちも譲れない、大切な願い。

「及川さん今しあわせじゃないんですか?」
幸せだよ、俺にとって今がきっと人生で一番幸せな時間だ。
でも、お前はこれから先、もっと輝かしい人生が待ってる筈なんだよ。
その為に、俺というリスクは背負わせておきたくない。
少しでも、お前からバレーを奪う可能性を減らしておきたい。
その要因が俺自身だと言うなら、俺はお前から手を離す。
そうやって、ずっと心に決めていた。
一緒に住むと決めた時から、お前の事を好きだと自覚した時から。
ずっと好きでいさせてくれって言っていたけれど、それすらホントは嫌なんだよ。
ちゃんと、俺以外と、普通の人生で幸せになって欲しいから。
別れたら、俺の事なんて綺麗さっぱり忘れてくれたらいいと願う。
憎んで恨んで、大嫌いになってくれた方がいい。
一生好きだと思える相手にずっと想われているなんて、きっと地獄だ。

「アンタの口で、好きだって言われてぇ。好きだって、言え。…言えよ。」
言いたいよ、いつでも。お前の事が好きだって言いたい。
言えるのはあと一ヶ月と少しあと、一度きり。

ホントは、離れたくない。



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