12 /25 帰宅
拠点が変わっても、俺達の生活には殆ど変化がなかった。
そりゃあモチロン、言葉が通じにくいとか食材が違うとか色々あるけど、
ふたりで起きて、食事して、ゲームして、それぞれ仕事したり練習行ったりして、
帰って来てまたふたりで抱き合って眠る。
ただ、それだけのいつもの日常が重ねられていくだけ。
これからアイツが本格的に試合に出るようになったりしたら、
またきっと少しは変化もあるんだろうけれど。
それでも、いつもと変わらぬ日常はふたりで続いていくだけ。
ずっと、ね。
まあ、そんなワケで拠点が国外に移ったワケだけど。
発つ当日、また一揉めした。
「エコノミーじゃ行かないからね」「言うと思って、ちゃんと用意しました」
と、ドヤ顔で航空券を見せたアイツは出発当日も早朝から日課のロードワークに行き、
置いてきぼりでぐっすりの及川さんは目覚めたら家出発予定時刻の30分前。
「何で起こしてくれないの!?」
「俺だって走りに行ってたんです!っつか、準備なんて30分ありゃ十分だろ!」
「お前と違って俺は色々あんの!」「女子かよ!!」「イケメンは大変なの!!」
と喧々囂々の喧嘩を繰り広げながら慌てて支度をし、家の中をチェックし、
家の受け渡しのお願いをしたマッキーと国見ちゃんとの感動の別れもそこそこに
(いや、むしろそんな感動は何処にもなかった。慌て過ぎて。事務連絡しか出来なかった。)
寝癖の直らない頭の間で空港へ。
そこのカウンターでも一揉めしてから(あのバカが預けた荷物に旅券入れちゃった。ほんっとバカ!)
無事に飛行機へ乗り込み13時間弱のフライト。
そわそわするアイツと、朝から疲労困憊の俺で何だかもう結局全然実感湧かなくて、
食事したり爆睡したり小学生みたいにウロウロしてるアイツを注意したりしている内に、
あっと言う間に、感傷とかに浸る間もなくホントにあっという間に目的地へ到着。
異国の筈なのに「あれ、俺地元に帰って来たのかな」ってくらいの実感のなさ。
何これ、拍子抜けもいいとこだ。
まあ、そんなこんなで始まった新天地でのふたり暮らし。
顔を出させてもらった会社は、今まで勤めていた会社の関連企業だからか、
気負いもせず歓迎してもらえて嬉しかった。
…が、早速アレに遭遇。
そりゃあコッチのチーム所属だしね、会うとは思ってたけど早速かよクソ。
嬉しそうな顔してんじゃねーよ。
俺はお前にトス上げに来たワケでも、お前のマネージメントやりに来たワケでもないからな。
あーもー、会社の出だしは最悪だ。生活はいい滑り出しだったのに。
結局、何処にいようと代わり映えのしない日常。
誕生日に王様が「今日から来月末まで、一日一回、好きって言ってください。」とか言う
無茶ぶり無理難題を突然言い出した。
チョーシ乗んな、バーーーカッ!!!
逆らえない俺も俺だけどね!!