月島と寝ないと俺は眠りが浅くなるらしい。

普段は布団に入ってひっついて、少し話をしてるうちに眠くなって寝落ちばかりしているのに、月島が出張やら旅行で居ない日は変な時間に目が覚めたり寝つきが悪くなる。

月島のスウェットとかデンキネズミを手繰り寄せて寝ても一緒で……これは何とかしねぇと。睡眠不足じゃ練習も身が入らねぇし、出先にいる月島にも心配をかけちまう。求む、恋人が居ない布団での安眠法。

深夜に帰って来た月島に電話繋いで貰って、少し声を聞きながら眠る。旅先で疲れている月島の寝息を聞きながらウトウトするのは悪くねぇ。眠そうな時と朝の月島は凄く可愛いけど、本人は寝ぼけるのを何とかしたいらしい。俺はそのままで良いんだけどな。

そして今、文字を眺めてたら眠くなって来た。もしかして、活字を眺めていれば眠れる……？学生ン時も、そういや教科書読んでると眠くなってきたもんな。バレー関連だと目が冴えそうだから、他のやつ。何を読んだら良いか……月島に聞いてみるか。

今日はお互い早く家に帰ってこれるから、二日分ひっついて補充する。あ、土産楽しみにしてるぞ。早く一緒に食いてぇ。記念日だし酒でも飲みたい所だけど……うぬん、今日は、控えておく。毎度思うけどまだそんなに月日が経ってないんだと驚く。月島との前から一緒感は何処から来るモンなんだろうな。でも毎日感謝してるんだぞ。お前と一緒の日々は当たり前のようでそうじゃねぇって思ってるから。毎日大切に、お前と一緒に居たいと思う。

何か良い気分だし、月島の腕ん中は安心するし、きっと今晩は熟睡できる。

一泊の遠征がこんなに長く感じるようになったのは、月島と暮らし始めてからな気がする。

今まで何度もあった遠征。睡眠時間もあんまり取れねぇし、移動も長い。それでも体力には自信があるから特に何とも思ってなかった。でも、月島と暮らし始めて家族以外ではじめて「おかえり」を言ってもらえるようになったら、それが1日無いだけでもいずい。一人で暮らしていた時、返事はなくても「ただいま」と口癖のように言っていたけど、今はそれに返ってくる声がある。一番好きな、大切な奴の声。それを聞きたくて、俺は早く帰りたいと毎日思うようになったし、忙しいアイツを「おかえり」って迎えてやりたいと思うようにもなった。

あと、留守番している月島はなんだか可愛い。俺が居ないと駄々をこねるのも、疲れた俺を甘やかしたいと言うのも、俺のスウェット抱き締めて寝るのも、全部可愛い。離れている時間で唯一の楽しみだ。楽しみだとか言うとムスッとしそうだけど可愛い月島が好きだからしょうがないだろ。

今日は俺が早く帰ったから月島を迎える日だ。何気ない挨拶みてぇな一言が、どうしようもなく愛しく思えたりするのは、きっとその言葉を交わすのが月島だから。

早く帰ってこねぇかな。テレビで見て食いたくなったフルーツ大福も買ってきたし、時間があったから洗濯もした。デンキネズミを抱えながら月島の事を考えて、うっかり寝てしまいそうになったから日記を書いている。

そういや今週末は俺が留守番だった。スウェット洗濯カゴに入れるなよって言っておかねぇと。

今日は僕が留守番の日。影山は遠征中。移動が辛そうだったケド大丈夫かな…ちょっと心配してる。今朝も早かったし、影山が思い切りバレー出来ていれば良いけど。

普段は騒がしいリビングも今日は静か。影山が居ない日に限って早々に帰宅出来た僕は、本でも読もうかと思ったけどやっぱり止めた。静けさが、影山の存在が無い事を際立たせる。

早々にシャワーを浴びて早目に寝てしまおう。そう思ってたケド、影山の日記を読み返したり、黄色いデンキネズミの縫いぐるみを抱えて影山の事をぼんやり考えたり、そうこうしていると結局こんな時間…。
今はもうベッドの中。今日は影山の代わりに、影山が置いて行った愛用のスウェットを手繰り寄せて眠る。……眠れるかな。でも、ちゃんと寝ろって言われたから寝なくちゃ。


かなり疲れて帰って来るだろうから、思い切り甘やかしてやろう。……カレーでも作って待って居ようか。

今日は、纏まりのない想いを綴ろうと思う。日常の記録も良いケド、偶にはだらだらと想いを記録するのも良いよね。



影山と居ると妙な気分になる。
傍に居るのに、毎日言葉を交わしているのに、もっともっとという欲がどんどん湧き出てきて…。影山が好きだ、と考え始めると止まらなくなって、僕の頭の中が混乱しそうになる。好きだという感情、全て僕のモノにしてしまいたい独占欲、彼が自分の恋人であるという優越感と自慢、反して僕の中にだけ閉じ込めてしまいたい我儘、影山に対する憧れの眼差しへの嫉妬、隣に居るのに、触れ合っているのに、足りないと感じてしまう不足感。……こうして取り留めもない想いを文章にしようとしても、やっぱり頭の中がぐちゃぐちゃになってうまく纏まらない。僕、こんなにバカだったかな。自覚する程に普段は冷静な僕でも、影山の事になるとバカになるらしい。……何処かの誰かのバカが移ったのかな。なんて、単語を連呼していると怒られそうだけど。


影山と付き合うようになってから、随分と感情が表に出るようになった気がする。特に、嫉妬…とか。コンビニに行った時、街を歩いている時、女の子から影山に向けられる眼差しに気付いた時の僕の顔は、酷いモノなんだろうな、と思う。可能な限り顔には出さないようにしてるケド、きっと完全には抑え切れてはいない。そうすると、また僕の中で色んな感情が生まれる。……僕は影山の隣に居て良いのか、でも僕じゃなきゃ嫌。影山を誰の目にも触れない場所で閉じ込めたい、でも自由にバレーの道を極めて欲しい。…なんて面倒臭いヤツなんだ、て自己嫌悪に陥る時もある。


でも、影山はきっと明るく笑い飛ばしてくれるんだろう。笑って、僕の事を好きって言ってくれる。僕の不安も、ドロドロした嫌な感情も、丸ごと含めて。そんな笑顔と真っ直ぐな力強い言葉に僕は救われてるし、そこが影山の好きなところ。
僕の感情を乱してくるクセに、全てを吹き飛ばしてストレートでシンプルな答えに導いてくれる。まるで影山のバレーみたいだ。そうやって、沈んで引っ張り上げられてを繰り返す度、僕はどんどん影山の深みに嵌っていく。

昔は相性最悪。でも今は、紙一重で相性最高。
色々と考え込んでしまって頭がごちゃごちゃになるケド、最後に行き着く結論はいつも同じ。


影山が好きだ。

何度目かの春は、初めての春。

季節の変わり目は匂いで分かる。もう、其処此処で春の匂いがする。初めて会ったアイツの事は忘れもしない。あの日も同じような匂いがした。

二人で暮らすようになってから、月島の優しい一面を知って、可愛いところも見付けて。寒さが和らぐよりも早く、俺はどんどん、月島を好きになった。今もずっと、毎日好きの更新をしている。昨日よりも今日の自分を成長させるんだ、と立派な人が言うように、俺も昨日よりも今日の方が月島のこと大切に想ってる。

また先に寝ちまって、変な時間に目が覚めた。最近、月島の夢も見る。夢の中の事まで心配してくれるコイツの寝顔を見ながら今こうして日記を書いている。まだ二度寝出来るから抱きしめて寝る。

そういや、昨日話をしていたDVD鑑賞楽しみだ。何呑みながら観るかな。まぁ、月島となら何でも良い。あーだこーだ言いながら、笑って、呑んで、やっぱり好きだってきっとなる予感。また時間の共有が出来る。

昨日より今日、季節が巡っても。変わらず隣で、好きを更新する。進化するのはバレーだけじゃねぇぞ、覚えておけ。

世間は今日から新年度だ。新しい年号も発表されるらしいし、なんだか不思議な気分。


この間、影山と夜桜デートをした。ホントは週末の休みにゆっくり、昼間から酒盛りでもしてお花見したかったんだケド、この週末は僕が出突っ張りだったから桜が散る前にと平日の夜に待ち合わせをして出掛けた。
普段は季節の花なんてあまり関心が無いし、職場絡みの花見とか、付き合いでの一席なんて面倒なだけだと思うケド、影山に行きたいって言われると僕のフットワークも軽くなってしまう。


いよいよ春が始まろうとしてる。大人になって影山と一緒に過ごすようになったのは冬の真っ只中だから、初めて次の季節を一緒に迎えるコトになる。

それと同時に、高校に入学して影山と出逢った春を思い出す。あの頃からは予想も出来なかった春が今、目の前にあって、僕の隣には影山が居る。…やっぱり不思議な気分だ。
この春は、どんな春になるだろう。



昔と同じ、でも違うカタチで、これから影山と新しい季節を過ごしていく。その度に昔の事を思い出したりして、ちょっとセンチメンタルな気分になったり、笑ったり、改めてムカつくって思うコトもあるかも知れない。それでも、過去の偶然やちょっとした出来事が今の僕達に繋がっているなら、思い出を広げて楽しむのも一興かもね。

…………そんなコトを考えると、お互い大人になったからこそ今の僕達があるってのはよく分かってるんだけど、自分も歳を取ったんだなと痛感する。

あーやだやだ。

昨日の影山と同じ様な時間に目が覚めた。隣の寝息が愛おしい。

最近…いや、前からどうしても俺はおやすみが言えない。

おやすみ、と言って今日こそ寝ようと思っても、もう少し話がしたいと考えてしまって、区切りをつけるその一言がどうしても言えない。よく月島の腕の中で寝落ちてしまう。

今日は夜桜を見に出掛けて、花見しながら色々話をしていて。初めて月島と花見をする事とか桜祭りの雰囲気にテンションが上がって勢い良く酒を飲んだせいか、家に帰るなり寝てしまった。

そしてこんな朝早くに目が覚めて。玄関で寝た俺を引きずったんだろうな…またおやすみが言えなかった、と後悔。おやすみどころか変な所で突然寝落ちる自分に腹が立ってきて。あークソ、俺の馬鹿やろうと思いながら反省も込めて記録しておく。

バレーの事以外で日記を書くのは強制された中学のひとこと日記以来で、こうして恋人のことを考えながら日記を書くのは初めてだ。強請って用意してもらった洒落た表紙の日記帳は俺の宝物のひとつ。その中にこんな反省文書くのもって思ったけれど。俺が月島のこと好きで、おやすみも言えなくて、でも寝落ちて、それで反省して、でもまた寝落ちる馬鹿な俺をいつもおはようって寝ぼけながら優しく抱きしめてくれるコイツが愛しくて仕方ねぇって気持ちはずうっと変わらない事をかたちとして残したかったから。書く。

花見楽しかった。花見しながら次に行きたい所を考えるのも楽しかった。月島と行きたい場所、共有したいこと、揃いでほしいもの、たくさんある。ひとりでも良かった俺が、月島とじゃねぇと嫌になっている。ライトに照らされた桜を見ながら当たり前に来年は何処に花見に行こうか、コイツと、って一年後の事を考えている。その感覚もまた、初めてで幸せな感覚。

隣で寝てる月島の寝顔を見ながら、明日こそおやすみって言うぞ、と心に誓いながら。また寝落ちることもあるから悪い、と先に言い訳しながら。今日はここまでにする。

名残惜しくても、また明日。おやすみ、月島。今日も大好きだ。

最近は、朝起きて仕事に行って。帰って来たら影山に構って一緒に眠る。休みの日が被れば、何処かへ出掛けたり家でゆっくりしたり。僕の自由な時間は影山に費やしている事が多いから、ここのところ日記を書く時間すらも惜しい。…なんて話をしたら、日記はお互い手が空いた時で良いって言ってくれた。今は日記以外にもアレコレ手を出しているから、それぞれの場所で色んな形で影山と楽しめているのは嬉しい。

今日は影山が先に寝てしまったから、またこっそり。僕が日記を書くタイミングは影山が先に寝ちゃった後が多いな。一緒に寝る時間も大事だケド…影山の寝顔を見ながら日記を書くのは嫌いじゃない。これも一つの楽しみだったりする。


先日、数ヶ月目の記念日とやらを迎えた。他の人達に比べれば僕達が付き合うようになってから未だ日数は浅いのかも知れない。でも僕達なりに良い時間を過ごして来たと思うし、これからもきっとそう。僕達は、僕達のペースで進んでいくんだろうな。


この場所も、そんな僕達の時間を、カタチとして残していける場所であって欲しい。

月島も俺も、わりと仕事が忙しい。遅くまでミーティングだったり、俺は練習が長引いたり、仕事のあれそれでバタバタしたり。それでも家に帰ると早く帰った方が玄関に来て、おかえりって言う。迎えに行く時も、迎えてもらう時も、おんなじ事を思う。思ったまんま、早く会いたかった、って口にすると月島も同じことを言ってくれて、すげぇほっこりする。ちょっとしたことだけど、俺の中では幸せの一つだ。

今日は月島を待ちながらぼんやりテレビを見ていた。健康にいい料理の特集を見ていたら昨日一緒に作った晩飯とか唐揚げの話を思い出す。興味がなかった料理も月島と並んでやると楽しい。今日は冷凍のたらこパスタで済ませてしまったな、と少し反省した。俺の為にソショクじゃダメだって料理してくれてる月島を思うと、自分だけで食う時ももっと気をつけねぇとなって思う。職場の飯や月島に甘えるだけじゃなく、普段の飯も見直すか……とか。やっぱりアイツに影響される事は多い。

月島の飯、美味いしな。特にカレーはどこで食ったモンより1番美味い。

さっき帰ってきた月島はシャワーを浴びている。寒いって行ってたしアイツが好きな飲み物でも用意して待ってるか。