分かれ道上の言う事に一々目くじら立てて居たら切りが無い。世界は最初から歪んでいる。其れに気付いたのは憲兵に入る少し前の事だったか。目の前で仲間を死なせ、漠然と俺も同じように死んで行くのだと思った。嘗ては、其れでも良いと思った。だが、俺が道を違えたのは、たった一日の出来事。歪んだ世界は、生まれながらにして当然の様に聳える俺の世界だった。人には莫迦らしい事を実現させようと莫迦な事を躊躇いなく為し、そして為し得る事が出来る人間と。頭の何処かで駆り立てられながらも俺に到底出来る筈が無いと何の落胆も無く、目の前に当然と続く線路の上を辿る人間が居る。俺は後者だろう、あの男を見ているとそんな気分にさせられる。一つ諦め、更に一つを諦め、気付いたら俺の道はこんなにも捻曲がって居た。諦めたが別の物を俺は手に入れ、そして今も其れを大事に大事に護っている。
お前が目指すモンが途方も無い夢物語だと鼻で嗤いながら真っ直ぐ突き進むお前を、俺は何処かで羨み、時に妬み、そして優越を感じて居た。きっと俺は一番近くに大事なものを背負い過ぎた。世界と比べたら如何に小さいものかとある人間は謂うかもしれんが、俺にとっては大事な世界だ。此の世界の為なら俺は悪魔にでもなれるだろう。何が違うだろうか、お前と。