強く在りたいと思ってた。
研いだ牙の鋭さを忘れないように。土足で心を踏み荒らされる位なら、噛み殺してやる事を選べる位の。決して満たされない事を理解しながら、そんなオレ自身の心の領域を守っていられるだけの、肯定感、の様な物。
最初から誰かに手を伸ばさずに済む様に。一人で自由に何処にだって行ける事を……孤独だと思わない強さ。
そうして、いつでも真っ直ぐに笑って、自分の足で立って生きていたかった。
そんな風に生きてみたかった。
だけど、本当は、聞こえない振りをしただけなんだ。
寂しいって、自分の声から、逃げただけだ。
帰ってきても、誰もいない部屋。暗くて、寒くて、何もない。おかえりって誰かの声一つもない、その場所が、オレは、嫌いだった。
慣れる事は簡単なのに、忘れる事が難しいのはどうしてだ?欲しいって泣けば手に入るモンだとして、じゃあ、それは一体誰に言えばいいんだ。
一度手放せば、等価値の物は手に入らねぇ。替えが利かない物を失くした時、人はこんなにも弱くなる。オレは獣にはなれなかった。結局は、ただの人間でしかなかった。
多分、最初から支払わなきゃならねー代償は決まってる。満ちては欠けて、それでも、生きていかなきゃいけねーこと。
零した砂を掻き集めて、落としたネジを泣きながら探して、噛み合う歯車が欠けてる事を必死で誤魔化して、押し殺して、笑って。
その笑顔の下で傷口が膿んで、本当はただ醜くなるばっかりだった。
そうやって、無理矢理に明るい道を選び取ってた時よりも……みっともなく泣きながら、欲しいって、形振り構わず言える今の方が……ずっと、ずっと、きっと……太陽に手を伸ばせば、届く位置にいる。
最後に一人で見た月の淡さを忘れられない。海に降る雪も。乾いた風の味も。
それでも、今、オレが大事にしなきゃならねーモンは、名前のないたった一つだ。
最近は、そう思ってる。
「ただいま。」