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1082.Without noticing.(背透/R20)
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9 :緑間真太郎
2018/06/17(日) 20:44

 眩しく暖かい日差しのあった日中と異なり、夜分には随分と涼しい風が吹いていて肌寒い。真っ黒な空に浮かぶ星は涼やかな空気の為か、何とはなしに寂しそうに見えた。
 この場所の閉鎖を知ったのは、恋人からの報せを受けての事だ。話を聞いた時には随分と驚いたのだよ。この場所がなくなるだなんて考えた事もなかった。
 長い間、この場所には世話になっている様に思う。頻繁に訪れる訳ではなかったが、素晴らしい縁を、大切な思い出をもらった。
 今では声を掛けることが叶わない相手もいるが、言葉を交わした奴らの事はきっと忘れないだろう。
 暖かな思いを交わした者。情けを掛けてもらった者。様々な相手と知り合い、とても貴重な時間を過ごす事が出来た事。
 この場所を提供してくれていた方へ大きな感謝を。そして知り合った全ての相手に感謝を。この様な場所からではあるが、伝えてさせてもらうのだよ。

 さて、もうこの場所も最後の時が近付いているという事に加え、恋人には既にこの日記が知られてしまっていた様なので、こちらでも名前で呼ばせてもらおうか。
 高尾。高尾和成。
 名を呼んだのだからこちらを向くのだよ。返事は一度でいい。
 お前と出会った場所がもうすぐになくなってしまうだろう。この日記ももうすぐなくなってしまうという事だ。
 日々の忙しなさにかまけて成し得なかった事を、少しずつ熟していければと思う。後悔の残る最後にはしたくないからな。
 高尾。いつだってお前の前に出ると、込み上げる言葉の波に呑まれて様々が消え去ってしまうが、本当に伝えたい事はいつも伝えられる言葉よりずっと多いのだよ。
 今だって、そうだ。

 お前に会えない時間が嫌いな訳ではない。それなのに近頃これ程に胸が騒ぐのは、満たされないと苦しいのは、お前に心から触れられていると思う機会がないからなのだろう。待ての出来ない、賢い犬よりも愚かな心だ。不平不満がある訳ではない、ただ恋しい。お前に会いたい。触れたい。声を聞きたい。些細なことや、下らないことをお前の言葉で耳にして、オレの言葉でお前の頭を満たしたい。そうして傍にいて、互いで満ちた体を寄せ合いひとつになれればどれ程幸せだろうか。時間のないことを嘆いていても仕方のない事だが、渇望する心は制することなど到底出来そうにない。愛してる。愛している、とは、本当に我儘で、自分勝手なものだな。高尾、今すぐお前を抱き締めたい。この見るに堪えない感情は、お前の言葉に、身体に、心に触れる事で浄化されるのだろうから。酷く悩ましいこの様な時間を、お前に知らせたくもあり、知らせたくないとも感じる。会う度に愛しい、いつものお前。嘆き悲しむ時間をお前と過ごせる貴重な時間にあてがうくらいなら、一人で抱き潰してしまう方がいい。だから会えた時にはきっと、



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