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146.ネヘレニアの涙ひとつぶ(背)
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30 :
黒子テツヤ
2013/09/19(木) 20:36
押し寄せる波に足首を取られて、転んでしまいそうになる。
柔らかな水圧がゆるりゆるりとボクを潰して、零した涙さえも海とひとつになっていく。
こんなにも優しい温度なのに、じくじくと心臓を突き刺す刃は氷のようで。
頬を伝う雫がなによりもあつくて、火傷しそうになる皮膚をゆびさきで拭う。
(こわいの?)――こわくないよ。
(一緒に行こうよ。)――この手を引いてくれるなら。
(ついておいで。)――だめなんです、ボクはすぐに迷子になるから。
ゆらゆら揺れる尾鰭に誘われて、ざぶり、なみのなかへと身を投げる。
見上げた水面はきらきらと、ひかりを反射して輝いている。
(嗚呼なんて、まぶしくて、いとおしいせかい。)
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